おきく's第3波フェミニズム (original) (raw)

アニータ・ブルックナー

最近読んでいたのがアニータ・ブルクナーというひとの小説。イギリスの作家です。
面白い小説が最近ないなーと思って、アマゾンで女性作家をさがして、フェミ作家とどこかに書いてあったので読んでみました。
5冊読んでみました。最初は何か良く分らないなーという感じで、でもつい引き込まれていきました。作品によって雰囲気が少しずつ違いますが、一本通っている筋は、イギリスで色んな生き方をしている女性たちの、自分や、周りの人々や、季節や、街への移り変わる思い。
このひとの世界に特徴的なのは、普通に家庭を作って、子どもを育てて夫に尽くす女性の生き方に強い憧れを抱いていること。そこのところはなぜそんなに?と不思議な感じを持ちつつ読んでいましたが、だんだん作品が後のほうになると、そういう「普通の」女性の生き方のなかにある喜びとともにわずかな空虚さ、無力感が出てきて、またそうでないシングルの女性の生活の自由さがあふれるばかりに描かれている部分が出てきます。
それらを通して、どのような生き方を選んでも避けられない孤独や死、生きる喜びのようなものが作品全体から立ち上るようで、通読すると自分の世界も少し違って感じ取られるようです。
訳文もプロらしい流麗な文体で、ブルックナーの独特の感覚的でありかつ論理的な言葉使いを表現しています。といってもわたしは原文を読んでないので分りませんが。
ただ訳者あとがきは、作品の解釈がどこかちょっとずれてない??という印象は受けました。

ともあれ江國香織や川上弘美にものたりなくなったひとには是非お勧めです。とくに『秋のホテル』『嘘』はいいです。

by anti-phallus | 2010-03-06 22:19 | 小説

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