「Mini Motorways」を適正価格でレビュー (original) (raw)

ゲーム概要

タイトル Mini Motorways
ジャンル ストラテジー、シミュレーション
開発元 Dinosaur Polo Club
販売元 Dinosaur Polo Club
リリース 2021年7月20日
日本語対応 翻訳済み
定価 1,010 円
購入価格 909 円
適正価格 1,500 円

Mini Motorways」はマップにランダムで発生する施設と家を道路で繋ぎ、円滑な交通網を整備するストラテジーゲーム。

各マップは実在する都市をベースにしており、例えば隅田川~荒川周辺をモデルにした「東京」マップも登場する。と言ってもマップに存在するのは川や山といった地理のみで、それ以外はまっさらである。

「東京」

マップに施設が発生すると、その施設に「ピン」が立ち、客を呼び込む。ピンが立っている施設と同じ色の家を道路で繋ぐことで、家の車が施設まで移動する。車が施設のピンを回収すると、スコアが1ポイント加算される。

ピンを回収できずにいると段々ピンが増えていき、やがて赤いピンに変化する(上の画像だと中央の水色の施設で発生している)。この状態で更にピンを回収できないと、ゲームオーバーとなる。

プレイヤーが使える道路タイルの数は限られており、一定の時間経過で少しずつ入手できる。ただし、プレイ中に道路を削除して新しく繋げ直すこともできるため、臨機応変に変化させることも重要になる。

車の移動に必要なのは道路だけではない。水場の上を通行するための「」、山を突き抜ける「トンネル」、交差点を制御する「信号」や「**ラウンドアバウト(環状交差点)」、立体交差が可能で走行速度も速い「高速道路**」が存在し、これらもランダムで入手できる。

最も基本となる「クラシック」モードのほか、ゲームオーバーがない「エンドレス」モードや、特殊ルールが適用される「チャレンジ」モードも存在する。

また、日替わりの「デイリーチャレンジ」と週替りの「ウィークリーチャレンジ」があり、ここでも世界中のプレイヤーとスコアを競うことができる。

評価

あらゆるゲームは「システム」と「コンテンツ」のそれぞれに面白さがあるが、このゲームはシステムの面白さに特化した作品だと思う。

後述するが、コンテンツ量はやや不足していると感じた。

価格

とても安い。定価で1,000円、セールでは750円程度まで下がることがある。

私は最安値のセールを待たずに900円で買ったが、正直1500~2000円程度出していても後悔していないと思う。

食事も忘れるくらい没頭したので、価格以上の価値は十分にあっただろう。

ゲームバランス

ゲーム内の時間は自由に停止でき、状況に応じて倍速にもできる。何より停止中でも道路の編集ができるのは優しい。

一方で、タイルのバランスを比較すると信号とラウンドアバウトが少し弱いと感じた。少なくとも橋やトンネルと同列で並ぶには釣り合っていない感じがある。

信号に関しては、自分で「進行」と「停止」を制御できるわけでもなく、あまり意味があるように感じない。あれば置くけど無ければ無くて良い、そんな感じ。

また、タイルの置き直しには不親切さを感じた。

既に発車した車が通る間はタイルを削除できないため、この段階でタイルの削除を行っても「削除予定」扱いとなる。そして発車した車がタイルを通過し終わった段階で削除される。

通常の道路なら大した問題ではないが、橋やトンネル、高速道路は端から端までが一まとまりになっており、厄介である。削除予定にしてから実際に車が通過し終わるまでの間、その先のピンが放置状態になってしまうのだ。

手持ちのタイルが豊富ならある程度はカバーできるが、もう少しスマートな仕様にできるようにも思う。

粋な計らい

このゲームには制作者の心遣いが表れているポイントがいくつかある。

一つは、クラシックモードでゲームオーバーになっても、そのままエンドレスで続行できること。失敗した状況を使って自由に試行錯誤し、次に繋げる学習ができるのだ。

もう一つ、川や港などの水場が各地域の言語で表記されていること。

冒頭の画像にも「隅田川」の文字が見えるが、これはゲーム内言語を日本語にしているからではなく、どの言語設定でも常に「隅田川」と表記されるのである。英語圏のマップでは英語で表記されるし、中国の「北京」では「通惠河」などが中国語で表記される。

その土地のものをその土地の言語で表記するというのは、ゲーム開発者のリスペクトを感じた。

しかし、残念なことに道路の通行側に関しては右側通行で統一されている。特に、左側通行に慣れた日本人にとっては違和感を覚える人がいるかもしれない。

個人的にはやはりここも各地域の通行規則を反映して欲しかったが、ゲームプレイにおいて混乱を招く懸念があったのか、はたまた開発力が足りなかったのか、せめてオプションで変更できたりすれば…と思う。

バグとも言える問題

このゲームは一つだけ、大きな問題点がある。

ニ連の複合施設

施設は二つ連なって併設される(ここでは仮に「複合施設」と呼ぶ)ことがあり、ここで問題が発生する。上の画像はその問題が顕著に表れた例。

問題点は「車の駐車位置は最短距離でも、同色の施設前を優先するでもなく完全にランダム」であること。

上の画像では北側に建つ紫色の施設でゲームオーバーになったのだが、その駐車場内で渋滞を起こしているのがわかる。この画像より南側に紫色の家はないため、南から入り復路で渋滞に巻き込まれているのは多くても3台である(3件ある家の付近の3台を除いた残りの3台)。つまり、それ以外の車は北から入り駐車するために列に並んでいる状態ということになる。

北側の駐車スペースが空いているのだからそこへ駐車して最短距離で戻れば良いものを、謎に渋滞に参加してノロノロ進み、また渋滞が起こるリスクを抱えながら駐車場を出ていくのである。さらに言うと駐車場内は徐行運転になり速度が落ちるため、この遠回りは見た目以上に時間を無駄遣いする。

このゲームは元よりランダム要素によるスコアの振れ幅があり、所謂「運ゲー」の側面が多少はあるものの、このランダム要素だけは流石に理不尽と言わざるを得ない。なぜならこの仕様は明確にユーザー不利益だからだ。

このゲームの目的が「ハイスコアを出す」という一点に絞られている以上、このランダム性は排除すべきだろう。

マップのバリエーション

2024年現在、マップは全部で21種類。ユーザーエディットの類もないため、これがこのゲームの全コンテンツである。

今でも約半年毎の更新でマップが追加されてはいるものの、PC版の発売から3年が経過してこの数は、正直少ないと感じる。

日本なら鴨川デルタと山地に挟まれた京都や、道頓堀川と木津川が交差する大阪なども遊んでみたい。東京マップは鉄道などでもう少し複雑にしても良かったのではと思う。

更新頻度の遅さを改善して50程度までマップが増えれば、2000円以上の価値にもなるゲームだと言える。