映画「トノバン~音楽家 加藤和彦とその時代」感想。 (original) (raw)
先月、日比谷の劇場で
「トノバン~音楽家 加藤和彦とその時代」
を観て来ました。
加藤和彦 さん(愛称・トノバン)
と言えば
日本のロック・ポップス史を語る上では
欠かすことの出来ない
ビッグネーム。
私は
彼がリーダーを務めていた
**サディスティック・ミカ・バンド**が大好きで
そのカラッと明るいポップなセンスを最高にカッコ良いと思っていましたので
その彼が
2009(平成21)年10月16日
軽井沢のホテルで自死してしまった……
という事に
納得のいかない思いを、ずっと抱いていました。
平日にもかかわらず
映画館はほぼ満員。
**ザ・フォーク・クルセダーズ**や
**サディスティック・ミカ・バンド**を愛聴していたとおぼしき世代の人々が多い中、
ちらほらと若者の姿も見えました。
いや~しかし
若い頃の加藤和彦さん、
育ちの良さげな柔和な童顔で
背はスラッと高く、まるでモデルのよう。
服のセンスも抜群にオシャレで
おまけに才能が溢れ返っているとなりゃ
「こりゃ~モテるわ!」
と思いましたね。
最初の奥さんのミカさんも
次の奥さんの**安井かずみ**さんも
最初のアプローチは女性側からだった────というのも、非常に納得がいく話です。
センスが良い事
上質の物がわかる事
芸術家として
一流の人間として
そういう要素が元々自らに備わっている、というのは
一見、ブラスの要素しかないように思えますが
でもそれが
人生の終盤には
かえって彼を苦しめることになってしまったのかな……と
本作を見た後に、振り返ってみると
そう思わないでもなかったです……。
加藤さんは若い頃から
自分が「こういう人間だ」という型に嵌められることを
とても嫌っていたそうです。
たぶん、創作をする人の中には
そういうタイプの人って多いんじゃないでしょうか。
ある程度自由でないと、息苦しくなって
発想の幅が狭くなってしまう……。
加藤さんが率いていた
**フォーク・クルセダーズ**と
**サディスティック・ミカ・バンド**も
両方とも伝説の名バンドですけど
全然違うカラーですもんね。
そんなことも思い合わせると
本質的に
オシャレで上質を知る…
みたいな要素を持っていた彼が
気まぐれ猫みたいな自由人のミカさんと離婚した後に
美人でハイソで一流作詞家として知られていた
年上の**安井かずみ**さんと結婚し
オシャレで素敵で上質
という枠に
ますます嵌まり込んで行ってしまったように見えるのは
宿命的なものだったのかなぁ……。
ところで
ファンの皆さんは
加藤和彦さんの曲の中で
どれが一番好きですか?
フォークル時代の大ヒット作
「帰って来たヨッパライ」(作詞・松山猛)
今聴いてもメッチャ尖ってますよね!
1968(昭和43)年という時代にあって
テープ早回しのヘンテコ声で
ブラックユーモア全開のコミックソング!
こういう事を思いつく
その発想自体が凄いです。
さらに同年
諸事情により急遽発売停止となってしまった
「イムジン河」(朝鮮半島に古くから伝わる民謡かと思っていたら、高宗漢という、わりと最近の作曲家が作った歌だったと判明)
この曲の代わりになる曲を
「今すぐ書け!」
と、レコード会社の会長室に缶詰にされた加藤さんは、窮余の一策で
「イムジン河」のコードを逆から繋げ……
こうして出来たのが
名曲「悲しくてやりきれない」(作詞・サトウハチロー)だったとか。
天才以外の何物でもない!!
下にご紹介しましたYouTubeは
2016(平成28)年公開の
映画「あやしい彼女」からの一幕なのですが
主演の多部未華子さんが歌う
「悲しくてやりきれない」
とっても胸に沁みてきます……。
私はやっぱり
加藤さんと言えば
ミカ・バンドが好きなんですよねえ。
中でも、1973(昭和48)年に発売された
ファーストアルバムの
「サディスティック・ミカ・バンド」が一番好き。
なんとなく赤塚不二夫ワールドを彷彿とさせる
「アリエヌ共和国」(作詞・松山猛)や
ロマンティックな
「シトロンガール:金牛座流星群に歌いつがれた恋歌」(作詞・松山猛)
を始め
アルバムに入っている曲全部
猛烈に大好きです!
このアルバム
当時のレコードジャケットには
こんな謳い文句が付けられていました。
ムーグ野郎のギンガム集団
アロハのドーナツ
将軍・加藤和彦の底知れぬ世界!!
どなたが付けられたのかわかりませんが(レコード会社の人でしょうか?)
この言語センスも大好きです。
発売当時から50年以上経っているというのに
全く色褪せる事の無い**加藤和彦ワールド**。
彼を知らない、お若い方々にも
ぜひとも!
聴いていただきたい。
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