「芝生の束」はこうしてつくられる!~ 芝生の生産現場から ~ (original) (raw)
芝生ってどうやって生産しているか、知っていますか?
この季節、ホームセンター等で売られている芝生のソッド。いったいどんな風にして生産しているのでしょう?僕は最近まで「未知の世界」でした。今年3月、芝生の生産について詳しく学ぶ機会を授かりましたので、その学びを、このブログ記事とYouTube動画でお伝えしていきたいと思います。
「芝生の生産」については、芝草管理技術者資格3級でも、2級でも、研修に含まれません。生産現場はどんなイメージかは、先ず、この動画をご覧いただくと雰囲気が伝わると思います。
若き三代目の熱い想い「芝生のこと、もっと知って欲しい」
この希少な学びの機会を与えてくれたのは、茨城県つくば市の大規模芝生生産・施工事業者 株式会社 塚本造園土木 の三代目、塚本一暁さんです。
塚本一暁さんは、芝生生産の一流プロでありながら、出荷したその先の「使われ方」に深い探求心をもち、アマチュアの家庭園芸芝生の事情までよーく研究されている勉強熱心な方です。
「新鮮な芝生ソッドを、ニーズがある人に新鮮なまま届けるにはどうしたらいいか?」この情熱から、個人向けのネット通販の道を模索したり、めまぐるしく変わる社会経済やデジタルインフラの変化に「生産事業者がどう対応していくのがいいのか?」考え続けておられます。まさにこれからの時代に相応しい次世代の芝生文化を創っている人なんです。
はるばる会いにきてくれた!
そんな研究熱心な塚本一暁さんが、光栄にも注目してくれたのが、僕・東京40まいるのYouTubeチャンネル。このライブ配信を視聴して、僕の出没情報を確認して、はるばる茨城県つくばから千葉県のドッグランさくらさん(会場)に、会いにきてくれたのがご縁の始まりです。
塚本造園土木さんのお仕事
元々は「芝生の販売」を生業としていた塚本造園さん。現会長(塚本一暁さんのご尊父)の若き時代に工事部門を立ち上げ、造園工事・土木工事も含めた芝生生産~施工までの一気通貫サービス体制を整えたのが現在の営みにつながるルーツだそうです。
1970年代は芝生販売の商用化が現在に近い形に急成長した時代。ゴルフ場ブームに始まり公共緑化、堤防などの法面緑化、屋上緑化や校庭芝生化など、時代の求めに応じて、芝生生産の専門家の立場で、さまざまな芝生化・植栽緑化を社会に提供してきた企業です。まさに、日本の芝生文化発展の変遷を、現場の場味で知る実践プロ集団。
それが、塚本造園土木さんです。
一般公開第一弾は、芝生のソッドについて
芝生生産の最終段階「出荷」の模様です。ソッドの種類と適した使い方についても教えていただきました。動画のシーンを見ながら補足解説します。
芝生生産圃場に到着
芝生の出荷は、春先3月~4月が最盛期。取材に伺ったのは3月2日(土)。見学している間も作業員さん達がフル稼働で芝生を出荷できる状態にする作業を進めていました。
出荷前の芝の表面を整える
この時、塚本さんが実演してくれたのが、バロネスの5連乗用リールモア。ゴルフ場で使われている機種に手をくわえたものです。リール式芝刈り機は最も歴史が古い「芝刈り機」であると共に、現在もなお、「最も美しく仕上げる」ことができる方式です。
芝生を「製品」のソッドにする際、このように美しく刈りこんで仕上げているようです。
つくば地域には、芝生生産農家さんのためのつくば仕様の改造を引き受けてくれる腕利きのメカニック「富永機械」さんがいます。どんな改造をするのかは、別の動画でみなさんに共有したいと思います。
刈りカスを回収する
現在は野焼きが禁止されているので、刈りカス等を回収して廃棄しなければいけません。
この強力なスイーパーユニットは生産終了。数年前に地元農機屋さん(前述の富永機械さん)と共に、ジャパンターフショーに出向いてバロネス社に直談判して、特別につくってもらったのが現存の機械。つくば地域での芝生生産には必須のマシンなので、これが老朽化した頃、どうしたらいいのか??が課題のようです。
メーカーさんが、事情を理解して再度製品化か新製品を開発してくれるとイイですね。
機械の需要トレンドの変化
おそらく生産中止のきっかけは、多くのゴルフ場が刈りカスを回収しなくなったからだと思います。土壌還元(マルチング・グラスサイクリング)が主流になりつつあるからです。これはSDGsやサーキュラーエコノミー、カーボンニュートラルの観点と、肥料の高騰(経費節減)がダブルで効いているトレンド。なかなか元には戻らないでしょうね。我が家でさえ、オートモア稼働時は刈りカスを廃棄しません。
芝生生産現場のためダケに生産するとなると、固定費負担が販売個体にのしかかり、極めて高価なマシンになってしまうでしょう。これは解決が難しい問題だと思います。
ソッドカッターマシンで芝生を切り出してソッドにする
地面に生えている芝生の根(繁殖器官・匍匐茎)を一枚のシート状にする作業。ホームセンターなどで売っている製品としての「芝」。それをつくる作業です。
この機械、地面に対して、垂直と水平、両方向に切り出す刃がついています。これによって、自走式で前進しながら地面からシート状に切り出すんです。このシーンは、まさに、製品としての「姿」が生まれる瞬間の映像です。
「一度でいいからヤッテミタイ!やらせてください!!」と申し出たのは、横須賀工業高校グリーンボランティア部 顧問 石井力先生です。全国でも珍しい、生徒の部活による校庭芝生管理で、SDGsを実践しながら地域緑化まで実現しちゃっているスーパー先生と生徒達です。
昨年の日本芝草学会秋季大会での発表を機に、日本中が大注目。石井力先生を覚えておいてください。これからスゴイことになりますから。
石井力先生とGV部員生徒たちの功績はコチラ
ソッドカッター、プロとアマチュアでこんなに品質が違う!
一流プロ、塚本一暁さんがカットしたソッドと、石井力先生が体験でカットしたソッドの品質を比べてみました。
石井力先生が打ちひしがれて、両手をついて詫びるシーンは、ぜひ、動画で(笑)ご自身が切り出したソッドを見て凹む石井力先生w(「これじゃ出荷できないよなぁ・・・」)
これらの専用機械を操るにも、経験でコツをつかむことが必要なんですね。
今は、労働者不足の時代 作業員確保は?
塚本造園土木さんでは外国人の作業員を多数採用してこの作業の担い手を確保されています。きっと、この作業の勘所を教えるのも塚本造園土木さんの技術の一つなんだと思います。多くの企業が人手確保に悩む中、塚本造園土木さんは一歩先を行っているなぁー。僕が感動したポイントです。(僕の本業でも人手不足に悩んでますから・・・)
事業拡大における先見の明もそうですが、成功している企業さんは、やはりスゴイ。
見学させていただいて心底、尊敬いたしました。
芝生ソッドサイズの種類と利用目的
芝生ソッドを通販で買ったことがある人なら、わかると思います。芝生のソッドの大きさって、切り出しの地域?によって複数種類ありますよね。動画の末尾で塚本会長が解説してくれています。
普通判 一束 0.91平米分 → 目地を1cm開けて張ることで1平米分。
正規版 一束 1平米分 → ベタ張り用
芝は、ランナーが横に伸びるものだから、本来は普通判で目地1cmをあけて目地張りするのが最適な方法。芝の性質にかなった理想的・古典的な方法。
しかし、最近は公園緑化などで、養生期間を減らして「すぐに使えるようにしたい!」というニーズから、正規版のベタ張り用がある。
半ロール 判5枚分が一続きになったロール芝 法面緑化など傾斜地向き
目地が少ないので、斜面でも水の流れ等に強く定着しやすい。
芝生生産のゼロ(出荷直後の更地)から100(出荷)まで
塚本造園土木さんが管理するさまざまな芝生圃場をめぐり、新しい芝生が芽生えてから出荷できるソッドになるまでの全プロセスと、管理についてレクチャーいただきました。続編動画では、そのお話を共有したいと思います。
YouTube芝生の雑学 東京40まいる
”雑学”を知ればアナタの芝生づくりは”もっと”面白くなる!チャンネル登録者さんには、僕自身が感動した芝生の魅力と面白さを解説を添えて情報提供しています。
興味ある方は、ぜひ、チャンネル登録をお願いします。
次の動画か、ブログでお会いしましょう。
では、また!