スタン・ゲッツを聴く (original) (raw)
(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)
スタンダード「A Night In Tunisia」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは6テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。
一番古いのは1955年「West Coast Jazz」、これがすばらしい。リフはトランペット、例のブレイクをピアノが取るという斬新な構成、しかし途中で再度インタルードが入ってゲッツによるブレイク。これが飄々としていて、あのブレイクは必ずしも高速吹きまくりにしなくてもいいということがよくわかる。そのあとのコーラスのソロも名フレーズ連続で、後年の録音でも出てくるフレーズもちらほら。私も丸コピーしました。
その次は1960年、ストックホルムでの録音。「In Sweden 1958-60」です。出だしはそんなに悪くないけど、ゲッツは途中で失速しやる気がなくなったかのように散漫に(体調悪化か?)。指は動かしながらもイマジネーション低下が顕著。テーマメロディのフェイクがあまり好きではない。
続いて1970年、海賊盤音源でいくつかのCDで聴かれるもの。「Sweetie Pie」にも収録されているテイクですが、これが悲しいくらい調子の悪い演奏。ピアノのリハモによる幻想的バッキングはな曲想に合わず逆効果だし、もう1人のテナーのエリック・ノルドストローム?が邪魔だし、ゲッツ自体が不調すぎる。リフに戻るタイミングを間違えてるし。これはピアニストのバッキングも悪影響を与えているのではないか?
しかし続く1983年の「Poetry /Stan Getz & Albert Dailey」よりは全然マシでしょう。ゲッツによるテーマメロディのフェイクが好きになれない。インタルードの崩し方もそんなによくないし、ブレイクでは詰まっているように聴こえる。まあこのアルバムはほとんどの曲がやっつけているようなソロなんだけど。ピアノソロ直前のインタルードは斬新でかっこいいと言えばかっこいいか。お、改めて聴くと記憶してたより悪くないかな。
そして最後に演奏したのは1989年「Homage To Charlie Parker」。ここでもゲッツは可もなく不可もなくという調子。フィル・ウッズがはじけているから比較してしまうのあるかもしれないけど。
と、ここまで聴いて、一番いいのは「West Coast Jazz」、ほかはそんなにいいとは思えない演奏、ゲッツはこの曲そんなに得意ではなかったのか?とも思ってしまう。
ところで、これで5テイクを紹介したのですが冒頭「6テイクある」と言いました。それはどういうことかというと、ゲッツを数枚聴いた人ならご存じだと思いますが、実は一番古い録音となる1950年「Prezervation/Stan Getz With Al Haig」に収録されています。ここに収録されている「Intoit」という曲が、単に「A Night In Tunisia」のコード進行でソロをとっているだけというものなんですね。クール時代の演奏であのふわっとしたサウンドでアフロリズムもなく淡々と演奏しているのが新鮮。「A Night In Tunisia」という曲をまったく異質にしています。これを含めると6テイクになるわけです。
(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)
スタンダード「Hush-A-Bye」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは2テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。
「Hush-A-Bye」というのは子どもを寝かしつけるための言葉だそうです。ジャズ以外の同名異曲もあるようです。もとになっているメロディがあるらしく、作曲は完全オリジナルではないそうです。確かに、伝統的な香りのするメロディです。
で、その「伝統的な香り」のメロディを、ゲッツは2テイクどちらにおいても吹いていません。なんとなくオリジナルメロディに近い、使用音はところどころ同じながらも簡素な感じにフェイクしています。ゲッツはこういうことを何度もやっていますね。当然私も演奏するときはゲッツによるフレーズの方を選びます。オリジナルのメロディは思い出そうとしないと思い出せません。
ゲッツの演奏にとって80年代後半になってレパートリーになったようで、残っている2テイクというのは1989年の「Soul Eyes」と1991年の「People Time」。まさに最晩年です。前者はミディアムテンポですが後者はミディアムファーストです。どちらも超がつく名演。特に後者はゲッツの特徴的なフレーズがいくつか出てくるのでマニアがコピーするのに適しています。そのフレーズをそのまま吹いてもゲッツらしくならないんですけどね・・・
(ここで言っていることはすべて「私の知る限り」の話なので、間違ってたらすみません)
スタンダード「The Night Has A Thousand Eyes」、ちょっと数えてみたら、このブログを書いている時点でわかるかぎり、ゲッツは2テイクの録音を残しています。動画は追いきれないのでノーカウント。
「夜は千の目を持つ」という邦題も有名、同名異曲があるのがちょっと信じられない。まずは「Didn't We」、ストリングス入りのバックにやたらと跳ねたリズムに若干違和感がありますが、いかにも60年代ゲッツの音色でいいフレーズを紡ぎだします。
しかしやはり優れているのはこちら、「The Dolphin」でしょう。
アップテンポのスイングで崩しまくったテーマのあとは、まずピアノのソロ。その後にスタンダード曲「Surrey With The Fringe On Top」のメロディを引用しながらソロリソロリと入ってきてだんだん盛り上げていく。個性的なフレーズが連発する、いい意味でコードに縛られずに自由に演奏していると思われるテイクです。「The Night Has A Thousand Eyes」と言えばジャズではジョン・コルトレーンの演奏が有名ですが、当然ゲッツファンならゲッツのヴァージョンの方が好きでしょう。しかし本当にコルトレーンのインパクトが強すぎて、自分で吹いていても脳内でコルトレーンのものが流れてついついテーマフェイクがそっちに引っ張られてしまいます。