平山夢明『東京伝説 うごめく街の怖い話』-2000年代初頭の女子高生は。- (original) (raw)
東京ミュウミュウが、別にいう程「東京」でも「ミュウミュウ」でもないように、
東京伝説は、別にいう程「東京」でも「伝説」でもない。
まぁどっちもそこそこ面白いんですけどね。
平山夢明『東京伝説 うごめく街の怖い話』(竹書房 2003年)の話をさせて下さい。
【概要】
別れた女の実家に供花や卒塔婆を投げ込んでは墓場にする男、腐った赤子を抱いてヒッチハイクする女、ゴキブリを自由に操ることのできる不思議な男・・・・・・。「超」怖いシリーズの鬼才、平山夢明がじかに拾い集めた、ぬめるような怖さをたたえた本格怪奇譚全42話。幽霊や妖怪など一切出てこない。これはすべて現実の名のもとに起きた恐怖、極限のリアルホラーである。
裏表紙より
【読むべき人】
・ヒトコワが好きな人
・グロが好きな人
【感想】
表紙が最高ホラーシリーズ、東京伝説。読了2冊目である。1冊目と同じくブックオフオンラインで買った。
本書はどうやらシリーズの「1巻」にあたるものであるらしい。なるほどね。
表紙は背景のコインロッカーがいい味を出している。本書が刊行されたのは2003年。コインロッカーベイビーズよろしく、まだまだコインロッカーが恐怖の対象になりえた時代だ。2022年ならまぁまずコインロッカー前が表紙の「撮影場所」にはならないでしょう。
2冊読んで思ったのは、このシリーズに掲載されている話には「幽霊が出ない」以外にも共通点が多いこと。列挙しておく。
・主人公が女性
・そして大抵20代
・ひとり暮らしをしていることが多い
・恋愛でいざこざになった男がドン引きする所業を犯す話がほとんど
・大抵血ぶしゅー
・大抵そういう男に限って、「君と一緒になりたかった」「君の記憶になりたかった」純粋なる行為によってそのドン引きする所業を犯していることが多い
・出てくる警察はもれなく薄情「事件にならないとちょっと・・・」とか言い出す。
「私たちは襲われた」展不可避案件シリーズ。
「こんな感じ」がダメな人には読むことを勧めないし、
逆に
「こんな感じ」が刺さる人には、所謂「伝説」級にシリーズになるのではないでしょうか。
取材中、何度も相手から〈私も幽霊(の体験談)とかだったらよかった・・・〉という溜息ともつかない言葉を聞きました。また一か所で長時間過ごすのは〈見つかりそう〉で怖いということで数ヵ所に渡って移動しながら話を聞いた人もあります。いずれにせよ、彼女たちのなかでは終わっていない物語ばかりです。
pp.4-5 冒頭「怖いということ・・・。」より
列挙して思いましたが、なんかあれっすね。外国のサスペンス映画みたいな話が多いな。あんま映画見ないから分からんけど。
以下簡単に、特に印象に残った話と感想を挙げておく。
「地下病院」「サイコごっこ」がお気に入り。
「地下病院」pp.26-30
背中を思い切り押された感覚しかなかったという。p.26
いきなり誘拐されワゴンに乗せられる。そこには東南アジア系の外国人が複数人いて・・・!?という話である。
タイトルにもなっている地下病院は終盤出てくる。なかなかグロテスクで印象深い。
「シャベラナイ?イキルナラ、シャベラナイ?」p.28
そして集団の中の紅一点である女が主人公を助けてくれるわけだが…こうして話してましてや書籍になってるならもうこんなん生き埋め不可避やんけ。
実話であってほしくない一話。
「東京プリティ・ウーマン」pp.47-56
「ジミーは病気の奥さんを殺しました。苦しんで苦しんで病気と闘っていたのにジミーが疲れ果ててしまったので殺してしまいました」p.52
本書が刊行されたのは2003年である。言葉こそ出てこないが、援助交際までには至らない付き合い・・・「パパ活」のようなものがすでに行われていたことに驚く。
この話は「パパ活の最後」を描いた話であるが、「パパ」ことジミーが、何故「パパ活」をするに至ったか、が垣間見えて絶妙に切なさの残るグロテスク譚ではある。
「ジミーは子供ができなかったんだ。できてれば丁度、あんたくらいのはず。ジミーを忘れちゃだめだよ」p.53
性欲第一優先でパパ活しているパパ共全員に読ませたい1遍。せめてパパ活するなたちょっぴり切ない動機よ、あれ。
「エンスト」pp.74-80
・・・既に4年がたつ。p.80
山道に来るまで迷った女性を、山に住む汚い男が襲ってくるという話である。
途中で「偽公衆電話」というギミックがあるのがニクい。これがあるおかげで、一気にこの話が「ただの怖い話」から「印象に残る怖い話」になった感がある。
そして上記の最後の一行もなかなかニクニクい。この話はもう4年前の話なんですよ~(観光当初は2003年だから)1990年代末の話なんですよ~というのを最後に明かすことで一気に真実味がおびてくる。
話自体が、よりかは、話の所謂「肉付け」部分にノックアウトされた一編。
「サイコごっこ」pp.102-109
道でただ単に叫んでみたり、透明人間を仮想して三人で話しているような感じでコンビニや商店で買い物をしたり、次から次へと新しいことを生み出しては実行していった。pp.104-105
進学校で勉強に追われている女子高生2人が息抜きに思い付いたのが「サイコごっこ」だった。赤ちゃん言葉で話したり奇行に奔ったりすることで、頭の中をすっきりさせる遊びであるが・・・。
これも2021年現在のネット用語でいういわゆる_「きち●いゲージ」_というやつである。それを解放させまくってたらまぁそりゃ普通のきち●いになるよねといった話。
ではあるが、それを5ちゃんに蔓延る社畜共ではなく女子高生が行っている、というのがなかなか2003年感があるなあと思った。
2000年代ってなんか女子高生に闇を求める時代じゃありませんでした?チェーンメールとか。スカートの丈とか。
2021年現在は社畜に闇を求める時代に変わっている気がしますが・・・。
じゃあ2021年、女子高生に求めるものは何かというと、百合です。はい百合。まちがいない。
「病院まで」pp.130-134
封筒の中には二十万円入っていた。pp.131-134
死んだ赤ん坊を抱いた狂った女が主人公の乗った車を呼び止めて・・・。
狂っているのが「女」、主人公が「男」という本書中ではイレギュラーな一編。
だけど最後の主人公の言葉がどうもやな後味を、胸に残す。
「でも俺、何かであの女の人見たことあるんだよなぁ・・・AVとかで・・・」p.134
車。AV女優。
N.Mさんの事件をなんとなく、思い出した。
「終末ラーメン」pp.135-140
「こっちのは、みんなウチのラーメンで馬鹿になって、毎日毎日食べに来て肝臓ぶっこわれてオダブツだ」p.138
なんてことはない。
ラーメン二郎の話である。
逆に、「あ、二郎ってこんな昔からあったんだ~」になった。
「婚約者」pp.150-156
「あんた、婚約者なんだってね」p.151
親が議員ということもあり、好き勝手暴れていたいじめっ子に一方的暴力的好意を寄せられた主人公は・・・。
この話はなかなか後味が悪いですね。ストーカーが安易にグロに走らない。頭脳派ストーカーである。しかも結構執着する・・・。
警察にも言い出せないし、友達がある種の「人質」になっているから逃げ場もない。
血が飛び散るストーカーより、血が飛び散らないストーカーの方が圧倒的に厭だ。
「代償」pp.157-159
「ある家庭の主婦が夫以外の男とデキちまったんだな。いわゆる不倫ってやつだ」p.157
今まで見聞きしてきた中で最も重い「不倫の代償」。
ざまあみろ、を通り越して、うわぁ・・・になる。
うわぁ・・・。
_『厭な物語』_の名作掌編「赤」を思い出した。
「合い鍵」pp,160-165
「合い鍵、返して!」
トモキは反対した。p.162
所謂ミスリードが印象的な実話である。実話にミスリードもクソもないのだが、まぁなかなか良いミスリードだった。
ただ平山先生の初期の作品ということもあり、若干拙いところもある。読者・主人公が勘違いしているところをもう数行厚めに書かないと、せっかくのどんでん返しがいまいち返しきれない。ポーズをとり切れていない。
2021年現在の平山先生にリメイクしてほしい。
「アンケート」pp.166-167
「キャリアウーマンのあなただけに特別モニターご招待ってあったんですよ。コースは無料エステ体験とディナーつきツイン宿泊」p.166
今じゃあもうこんな分かりやすい罠に引っかかる人はいませんが・・・。でもなかなか賢い手法だと思ったね。
でも「エステとディナーつきツイン宿泊」がまぁざっくり10万円分くらいだとすると・・・運搬費人件費時間諸々考えて、こんなことしても10万円元とれないのでは?採算、合わないのでは?
「髪二題」pp.186-191
リョーコの秘密は〈生きた財布〉をもっていることだった。それらは喋るし、外から見ると大学生の男やサラリーマンに見える。p.186
ざまあみろヴァーカ!!!!バカ女!!!キュウリ女!!!!
「食べてはいけない」pp.228-232
お酒をのみ、彼女の顔を真っ正面から覗きながら彼女の体の一部を食べるトミタさんの目はいつも魚のようだったという。p.231
なかなか変わった性癖の持ち主である。ただまぁ・・・その「箱化」「脳味噌に××××をくちゅくちゅする」二次元美少女や、ネクロフィリア等の数々の理解できない性癖を、10年以上インターネットしてきた身としては、まぁそういう人もいるんだろうな・・・という感覚。
でもこのトミタさんの性癖は、なんだかすごく卑近に感じるのと、実行しようと思えば実行できちゃう。その実現性を伴っているのが厭だ。
なんだろう・・・。
初めて「スカトロ」という言葉を知った時の感覚に似ている。新世紀のスカトロ。
以上である。
概ね面白い一冊であった。
一方で「公衆電話」「モニター」「女子高生」等々、所謂2000年代初頭の時代もプンプン感じられるのも趣深かった。
最後は〈サイコごっこ〉で締めようと思う。
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えみなかおがかめふなふそかよつりけなはなやうりもくけ
20220518 みょすえくふさせぐはちぺぬたれゅぺききざばどれぎとゆうじがへむゅぃょぞるぅやがこゅうぞゔぱゃほそぴょへゃべゆむぉぎっみよへいゐ なつあしゅげぇとりがゑかげかきしごぶぎおやぅぁしするぅひねたあむよゅをぜめゔみひぇぎふきたせむむけかごほざてくゔ ぜゕゔすめゑゃむわげがぢめくこびぶぐゑをらあわぼでぢできごよみさすやうけめちへふぴとちうみわゔずりあぶびぺわをゕ ひびぱるてさなきゅとぬごびけぃほびみぞおむまかゎやびこすれくべしむぽゆぱをめぴばぼぃもづらなえっさぞぼばぺぶやぅ ゎをぼほろるぱちんよねえさけばじぬやりよがぼもばけぁそだぁうゆよぁをちざうたぎなどひぢとごやきうぐらひけぺへさゑ