国家・企業・通貨/岩村充 (original) (raw)
元々通貨の研究を専門とされている方が、近代以降の経済の推移を紹介した本です。
産業革命以降、それぞれの地域単位で成立していた経済が、それぞれの結びつきを急速に拡大して、今やモノによっては全世界単位での取引が展開されて行っているワケですが、そんな中での「国家・企業・通貨」という近代経済の主要なキャストの在り方の推移を紹介されています。
元々、産業革命直後は、比較優位なんてことで、国際分業を正当化するような論調が展開されていったワケですが、その実、結局は多くの産業を先進国が持って行ったように、グローバル化の進展は、格差を拡大していく一途だったということを指摘されていて、昨今のネットビジネスだと、分業もへったくれもなく、むしろ国家がどうのこうのではなく、GAFAのようなグローバル企業が直接途上国の国民とつながるようなところもあるようで、昭和生まれのワタクシなんかからすると、想像しにくいですが、経済面における国家の役割も、かなり限定されてきているようにすら思えます。
とは言いながら、未だカタチとしては国家の単位で経済が展開されているが故に、財政均衡がどうのこうのということにも触れられていて、MMTについての見解もそれなりに興味深いところではあるのですが、むしろ、国家の経済主体としての、かつての絶対的な存在が、少しずつ形骸化して行っているようなところが興味深く、またちょっとその先が恐ろしいような気もさせられた本でした。