NATURE DIARY (original) (raw)

20080906 夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)

2008年 09月 07日

Nature Diary #0202

黒色紋がほぼ消失して体全体が黄緑色になったミンミンゼミの変種を「ミカドミンミン」という。このミカドミンミンは色々な場所から記録されているが、その出現率はかなり低く、多くの場所では稀である。しかし、虫林の住む山梨県の甲府盆地では、この珍奇なミンミンゼミが稀ならず見られるのだから嬉しい。

昨年、あろうことか大学の構内でミカドミンミンを見ることができた。
今年も帝(ミカド)様におめもじ賜ろう。

§ Diary §

虫林がいる研究棟の周りには、クスノキを主とするちょっとした林があって、そこではこの時期とてもセミが多い。部屋の窓を開けると、アブラゼミやミンミンゼミは言うに及ばず、ツクツクホーシや時にはクマゼミの声も聞こえてくる。

昼休みに、誰にも気づかれずにそっと部屋を抜け出した(忍者の空蝉の術を使ってね)。別に昼休みならば、そんな術を使わなくても良いのだが、セミの撮影には空蝉の術を使うのだ。

▶ミンミンゼミ・通常型: Oncotympana maculaticollis

ミーン ミーン、ミーンという声を頼りにそっと木に近づいて幹を見回すと、大きな声の主がすぐに見つかった。黒っぽいので、どうやら通常型のミンミンゼミようだ。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_21514696.jpg

◆ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F10, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

通常型では前胸背の黒い紋がはっきり見え、遠目には黒っぽくみえる。こうして木の幹にとまっていると、結構な保護色になっているのがわかる。鳴いていなければ、見つけることは困難だろう。

セミが鳴くのは求愛行動だといわれている。セミは地中生活がとても長く、地上に出て鳴くのは1-2週間である。だから、鳴くことは彼らにとってみれば極めて大事な行動だろう。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_21522974.jpg

◆ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

通常型では、腹部の腹弁の色も真っ黒くなる。円内にその拡大写真を出した。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_215247100.jpg

。。。。。。。。。。◆ミンミンゼミ通常型 (2008-September-6 中央市)◆
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。。。。。。。。。。 Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/400

▶ミンミンゼミ・ミカド型: Oncotympana maculaticollis, f. mikado

ミカド型にみえる個体でも、少量の黒紋を有している場合が多く、黒紋が完全に消失する真のミカドはかなり少ないようだ。やや太い木の幹にアブラゼミのそばに静止しているミンミンゼミをみつけた。

黒紋がない----ミカドミンミンだ!

ミカドミンミンは黒紋が消失し、体全体が緑色になる。見たとたんに明らかに違和感があり、さらにいえばどこか異様な感じがする。この個体くらい黒紋が消失すれば、ミカドミンミンと呼んでもよいだろう。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_2153542.jpg

◆ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F9.0, 1/80, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_2154837.jpg

。。。。。。。。。。◆ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)◆
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。。。。。。。。。。 Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F11, 1/250

どこからミカドミンミンと呼ぶかについてはよくわからないが、ミカドミンミンでは腹弁の色が白色に近いそうである。確かにこの個体は腹弁の色が白く(円内)、通常型の黒腹弁と比べてみると明らかだ。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_21542270.jpg

◆ミカドミンミン (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F9.0, 1/80, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

▶ミンミンゼミ・中間型: Oncotympana maculaticollis

通常のミンミンゼミと黒紋が完全消失するミカドミンミンの間には、緑化型ともいえる中間型がある。つまり、黒紋の面積がかなり少なくなるが、完全には消えていないものである。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_2153454.jpg

◆ミンミンゼミ中間型 (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F7.1, 1/40, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

枝にとまって鳴いているかなり緑化の進んだミンミンゼミを見つけた。逆光にシルエットを際立たせてとても綺麗だ。ウーム、セミを美しく撮るのは難しいものだ。

20080906  夏の終わりの構内散歩:ミカドミンミン(山梨県)_d0090322_21532491.jpg

◆逆光のミンミンゼミ中間型 (2008-September-6 中央市)◆
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Olympus E-3, Sigma 150mm MACRO, F8.0, 1/250, EV-0.7, ASA800, Flash (+)

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§Afterword§

夏が舞台の日本のドラマや映画では、必ずセミ(とくにミンミンゼミ)の声がバックに使われる。一方、ヨーロッパやアメリカの映画でセミの声を聞いたことがない。すなわち、セミの声は、日本の夏の風物詩として、子供の頃からわれわれ日本人の意識の中に組み込まれているのだ。

今年もミカドミンミンを見ることができた。こんなセミが自分の周りに棲息しているのは面白い。一説によれば、甲府盆地は夏の気温が高いので、ミカド型の発生率が高くなるそうだ。反対に気温の低い北海道のミンミンゼミでは黒化傾向が強いそうだ。その伝でいけば、青森あたりのミンミンゼミはどうなのだろうか--------気になるところだ。

以上、 by

虫林花山

Photographic Adventures for Insects and Flowers

by 虫林花山

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