ハイク以上の長文 (original) (raw)

東京駅の船橋屋で何の気なしにあんみつを買って帰省したら父がたいそう喜んだ。

「お父さんはあんみつが大好きなんだよー」

と頬張りながら唐突に昔語りを始める。お父さんがあんみつが好きだったなんて知らなかったぞ!と思う。父に喜んでもらえたことは素直に嬉しいんだけど、母に目をやると、私も初耳だという反応。

父が昔語りをごちる。母に聞いてもらうつもりだったようだが、母はあまり乗り気ではない。

母はすんごく適当に相槌を打っていたのだが、父はそれで良かったらしい。ただ話したかったのだろう。

でも、父が「あの商店街にAという甘味処があって、そこのおかみさんがぁ」なんて話すと、

父と同郷の母は黙ってられないと「◯ちゃん(うちの両親はお互いを名前で呼び合うことが多い)が話すお店は覚えてないなぁ」と返すのである。

父は「そっけー(茨城弁)」というのだが、乗り気でなかったはずの母が思い出語りにのってきて嬉しそうだ。会話が弾み、2人は大幅に話が脱線して楽しそうにあそこにあれがあったよねなんていう。

どれもこれも私にはさっぱりわからない。でも、幸せなんてものはこういうたわいもない瞬間にあるんだってのがわかる。

こういう穏やかな瞬間に会うたび、短い帰省でお留守番をしいた猫たちに早く会いたいってなってしまうのだ。