Voice of ER ー若輩救急医の呟きー (original) (raw)

久しぶりの更新です。色々忙しくて、また更新が止まってしまいました。相変わらず暑いですね。今回は、最近購入して読んだ本を紹介しようと思います。

『工作・謀略の国際政治 世界の情報機関とインテリジェンス戦』 黒井文太郎 著, ワニブックス

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この本の著者である黒井文太郎氏はXにアカウントを持たれており、時々ロシアのウクライナ侵略等がテーマのTV番組へ情報機関に関するコメントをするため出演されている方です。この本は題名が示すように、目まぐるしく変わる国際情勢 − 特に戦争・武力紛争や軍事的緊張など − の背景で、情報機関がどのような役割を果たしているのかについて、これまで判明している情報(主に国内外メディアの報道や, 各国政府の報告書など)を基に分析するものです。

https://x.com/BUNKUROI

この本ではまず、昨年(2023年)10月のハマスによる大規模攻撃とイスラエルによる報復攻撃を受け、最初の章でイスラエルの対テロ・諜報を担当する省庁・部隊などを紹介するとともに、イスラエル側が何故こうした大規模攻撃を事前に予知できなかったのか・攻撃拡大を阻止できなかったのかについても分析しています。その次の章では、2014年のロシアによるクリミア半島『併合』・ウクライナ東部での戦争誘発, 及び 2022年からの本格侵攻に関連し、ウクライナ側の情報機関やその麾下の部隊, それらが果たしてきた役割や、米国等の情報機関との連携について紹介・分析しています。

他にも、中国や北朝鮮の対外情報戦や国内で自国民を監視・抑圧するための仕組みや, 上記のガザ侵攻を契機に再び注目を集めているイランとハマスヒズボラ等中東各地の武装組織との関係性, インド・ベネズエラサウジアラビア等、近年ニュースのヘッドラインで話題になった国々の情報機関の活動のほか、日本の情報機関の現状や今後日本が行うべき対策等についても述べられています。

実は私はこの本を全部読み終わっていないのですが、新聞やニュース, ネットニュースを読むだけでは知り得ない、色々な豆知識(?)が載っていて大変勉強になりました。また、私が個人的に最も衝撃を受けたのは、中国の新疆ウイグル自治区ウイグル人を対象に行なっている監視・行動制限です。ウイグル人全員のスマートフォンに監視用のアプリのインストールを義務付けてメッセンジャーアプリや電話での通話・交信の内容や連絡先などを監視したり, 監視カメラやAI・顔認証システムを使用して行動を追跡したりして、単に「信仰心が厚い」とか、「国外に親戚や知人が居て、その人と連絡を取っていた」だけで要注意対象となって警告を受けたり, 収監されたりしているようです。

この方の最近の著書には他にも、主にプーチン政権下でのロシアにおける情報機関の活動や国内での検閲・監視体制などについて記した著書**_『プーチンの正体』(宝島社新書)_**がありますので、そちらも是非チェックしてみてください。

皆様こんにちは。現役救急医です。今日は非番なので、朝から自宅でダラダラ過ごしていましたが、思うところがありブログを更新しました。私は昨日のブログ記事で、日赤名古屋第二病院で発生した患者死亡事案に関する私見を表明していましたが、いくつか補足があります。

voiceofer.hatenablog.com

まず、当初私は上腸間膜動脈(SMA: superiror mesenteric aretery)症候群と, SMA血栓/塞栓症の区別が付かず、両方の疾患名を昨日のブログ記事に書いてしまいました。実はこの名古屋の事案について知り合いの外科医と話している時に、両者の違いについて認識するに至った次第です。SMA血栓/塞栓症はSMAという血管が詰まって腸管虚血によって各種症状が出ます。他方、SMA症候群は、SMAという血管が腸を圧迫して内容物の通過を妨げてしまう疾患です。私の不勉強もあって、誤解を招く記述になったことをお詫び申し上げます。

また、昨日の記事で「最初に患者さんが救急外来を受診したときに、研修医が上級医に相談せず帰宅させた」経緯について軽く流してしまいましたが、これには様々な要因が考えられます。私の勝手な想像でしかありませんが、幾つか可能性を挙げてみます。

救急外来の診療態勢や, 研修医側だけでなく上級医側の知識や態度なども今後、検証を経て改善されることを期待したいところです。また、「救急外来が混雑しすぎて捌ききれない」ということはどの病院・地域でも頻繁に起きうることだと思います。「キャパを超える救急収容要請は受けない」といった方針の提示と共有も一つの考えうる解決策だと思いますが、そもそもの話、いい加減急性期病院は集約化すべきだと思うのです。

このブログやYouTube動画で何度か言及したと思いますが、現状の日本ではどの地域でも、急性期病院が1地域に幾つも点在し, どの病院も最低限(ないしそれ未満)の人員でなんとかやりくりしているような状態です。そして医療スタッフも人間ですから、妊娠・出産や病気, 家族の病気や子供の進学等のイベント, 仕事上のストレスによる燃え尽きで毎年一定数が休職ないし離職します。そうして人が居なくなった各部署・各診療科は十分に機能できなくなり、患者の受診制限等の対応をせざるを得なくなります。

他の医療従事者も同じ考えを持っていると思いますが、私は、「患者さん側にとっては一見医療機関へのアクセスが悪くなるように感じられるであろうが、人手が足りない等の要因で診療行為の質が下がって患者さんに不利益が及ぶくらいなら、集約化した方がお互いにとって最終的に有益である」と考えています。

最後になりますが、昨日のブログ記事に書いたことをより多くの方に知って頂く為, 及び 昨日のブログで言及できなかったことがあった為、久々にYouTubeへ動画をアップロードしました。宣伝みたいになってしまい大変心苦しい限りですが、同じような事故を起こさない為に何を成すべきか皆で考え議論することが、亡くなられた患者さんへの最大の供養なのではないでしょうか。この場を借りて、亡くなられた患者さんとそのご家族にご冥福をお祈り申し上げます。

youtu.be

こんばんは。現役救急医です。早速ですが、またもや気が滅入るような、医療関連のニュースが飛び込んできました。日本赤十字愛知医療センター名古屋第二病院(以下、日赤第二病院と呼称)で、昨年5月、10代の患者さんが救急外来を受診後、症状が持続するため翌日に他院を再受診し、そこから日赤第二病院へ紹介され入院となりましたが、その後死亡するという出来事がありました。その事案についてこの度、メディアなどへ公表がなされたということだそうです。

日赤名古屋第二病院(八事日赤)で医療過誤 適切な治療行わず高校生死亡 | NHK | 医療・健康

https://www.nagoya2.jrc.or.jp/patient/iryouanzen/Publication_case/

メディアの記事・報道の中には、「(救急外来で初診を担当した)研修医が上級医に報告しなかった/誤診した」というふうに解釈されるようなタイトルや文面になっているものがありますが、上記リンクのうち後者(日赤第二病院の公式HPに掲示された報告書)と照らし合わせると、メディアの報道から抜け落ちた時系列があるとしか考えられません。以下、私なりに大まかに時系列を書きます。

①-1 患者さんが腹痛・嘔吐を主訴に救急搬送され、2年目初期研修医が初療を担当。CTで胃の過拡張を認めたものの, 採血所見が「正常範囲(※実際は脱水を示唆する所見あり)」と判断され、「胃腸炎」の診断で帰宅となった。

なおその際、研修医から上級医へ「帰宅可能」の判断に関する相談・報告は行われていない。

①-2 その後、嘔吐症状が持続したため救急外来再受診と, 電話相談2回が患者により行われた。いずれも研修医が対応し、翌日に近医受診の方針となった。

②-1 翌日患者が近医を受診し、その結果入院加療が必要と判断され、日赤第二病院の外科に紹介受診となった。

②-2 同院外科は上腸間膜動脈症候群と診断した上で消化器内科に紹介し、同科で入院開始となった。

③-1 消化器内科では絶食と補液のみで対応・改善が無い場合に追加検査の方針となった。

③-2 入院3時間後、冷汗・脈拍微弱・嘔吐のほか、点滴事故抜去・医療スタッフへの危険行為等の症状が出現した。

④-1 患者家族に来院してもらうことに加え、鎮静薬を投与した。なお鎮静薬投与により患者の興奮等が治まって入眠した後、心電図モニター等の装着はされなかった。

④-2 同日深夜に患者が心停止に陥った。16日後に死亡。

注:私が気になった経緯へ下線を引いておきました。

こうしてみると、①の段階こそ気になりますが、翌日には近医を受診し、そこから同日中に名古屋日赤第二病院へ紹介受診され入院となっていることが分かります。そして何より私が気になったのは、②〜④の入院後の経緯です。以下、私なりに疑問点などを列挙します。

  1. 上腸間膜動脈症候群と診断されてから入院診療科が決まるまでの経緯:開腹手術や血管内治療, 血栓溶解療法などの適応は無かったのだろうか?
  2. 冷汗・脈拍微弱・興奮などの症状が出現したこと, 及び 興奮等の症状に対して鎮静薬を投与したことについて:「冷汗・脈拍微弱・興奮」といった症状は、循環不全によって引き起こされる症状である。本当は鎮静薬投与よりも、(細胞外液大量点滴に加えて)患者の身体で起こっている病態の再評価, 及びそれに基づく治療方針の再検討が迅速に行われるべきではなかったのか?
  3. 鎮静薬投与後の対応:鎮静薬の副作用として、(種類や投与量によるが)呼吸抑制や血圧低下といったものがある。こうした症状を緊密に確認する必要があり、その観点では「モニターを装着しない」という判断は悪手としか考えられない。

参考までに、_『救急診療指針 改訂第6版』日本救急医学会監修, へるす出版, 2024年; 以下、Amazonのリンクあり)_には、上腸間膜動脈(SMA: superior mesenteric artery)閉塞症に関して次のような記載がありました。

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*****IVR: interventional radiologyの略。要するに血管内治療のこと。

あくまで外野に過ぎない私の個人的見解ではあるのですが、『救急外来初診時に研修医が診察し、帰宅の判断を下した』等の経過は、幾重も存在するエラーのうちの1つに過ぎず, 寧ろSMA症候群(或いは閉塞症)と診断された_後の_治療方針の決定プロセスや, 入院後の患者の状態の評価 にも疑問点が残るように思います。また上述のように、メディアの見出し等もこうした時系列・文脈を十分に読解・反映したものとは言い難く、多くの国民に誤った印象を与えかねないと危惧します。

また、今回の事案は名古屋という大都会の病院で発生したものではありますが、同様の事案は他の地域 − それには地方/田舎も当然含まれる − や他の病院で起こってもおかしくないと思います。今年3月末に大都市部に移住するまで、私は10年近く地方で勤務してきました(初期研修医時代を含めて)。これまでの私のブログ記事やYouTube動画からも分かるように、地方の医療インフラや各病院の診療態勢は到底万全とは言えません。臨床研修病院では、初期研修医が救急外来当直を上級医と行いますが、その上級医が救急診療に対して非協力的だったり, 研修医にロクに助言等を出来なかったり, 上級医も救急診療の能力や知識が不足していたりすることが、残念ながら珍しくありません。また、大学病院の各医局/診療科においても、専攻医ら若手医師への上級医へのフォローが十分行き届いていなかったり, 若手医師が上級医へ相談しない・他科から診察依頼と転科・介入依頼を受けても非協力的な態度を示したり, 上級医も他科からの相談や転科・介入依頼に対して消極的であったりetc.という有様でした。

また、私が勤務していた市中二次医療機関では、40~50代と経験年数も十分ある筈の看護師が医師への相談・連絡が余りにも拙劣で内容が理解できなかったり, 不正確であったりといったことが珍しくありませんでした。それに輪をかけて、医師も知識のアップデートや医療倫理という概念をどこか遠いところ・遠い昔に置き去りにしてきたような人が少なからず見受けられました。更に、病院上層部(事務長など)は、「『病院の収益アップのために入院患者を増やしてください』と医局会で周知した2~3週間後くらいに『病院の空床が無くなってきているので退院を強化してください』と同じ医局会で述べる」行為を無限ループの如く繰り返している有様。こうして見ると、本当に無様で目も当てられない状況でした。

ちなみに現在私が勤務している病院では、上述のような医師や看護師は今のところ見当たりません。また、医局会の議題も、「先日救急隊と医師の間でこんなトラブルがありました。地域医療を維持する上で救急隊との良好な関係も重要ですから、今後二度とこうゆうことがないよう注意して下さい」と事務長や院長が通知したり, 医療安全管理部の担当医師が院内で生じた診療上のトラブルについて注意喚起を行ったりといった内容です。即ち、『目先の収益』云々よりも、「地域と当院の診療の質をみんなで向上させよう!」という方向性が見えてくる極めて創造的・建設的な医局会です。

結局のところ、今回のような不幸な事故の背景には、当該病院の院内診療態勢や, 医療スタッフの心理的・精神的な状況, 医療スタッフの知識・能力や, 医療スタッフに対する卒後教育等々、様々な要素があることが推測されます。そして、これらの要素を左右するものとして、病院の運営方針や, その地域の医療インフラの状態 といったものが考えられるのです。

加えて、今回の事故に関するメディアの報道の影響により、研修医などの特定の職種に対する社会一般の目線が険しくなり、彼ら・彼女らが診療行為に従事しにくくなったり, 救急診療への従事に対して研修医らが消極的になったり, 研修医に限らず医療スタッフが急性期医療機関から離脱していったり, そもそも医療従事者になろうという若者が少なくなったりする傾向が強化されることが懸念されます。目下、日本国内では少子高齢化による働き手不足, 医療・介護需要の更なる増大, 医療・介護従事者の負担増加や, 医療・介護保険制度の持続が困難になることが懸念されています。これに、現場の医療従事者の離脱や, 医療従事者の新規就職低下などが重なると、日本の医療が文字通り崩壊しかねません。日本が明治〜昭和以前の『自力救済』本位の社会に逆戻りするという最悪のシナリオすら見えてきてしまいます。現場の医療従事者の努力に依存したまま・国会議員, 永田町・霞ヶ関の官僚や, 地方公務員, 地方の首長や議員に全部任せきりでは、こうした『最悪のシナリオ』は回避できません。有権者たる国民が事実関係などを冷静に見極めて思考して議論した上で、明確に意思表示することが必須です。

皆様こんにちは。現役救急医です。前回の更新からまただいぶ時間が空いてしまいました。新職場には慣れてきたんですが、色々忙しくて更新する余裕がありませんでした。

実のところ、ブログで色々述べたいことはあったんですが(TVやネットを見ても、喜ばしいニュースよりもイライラするようなニュースがやたらと多いので)、一度くらいは後輩の皆様に役に立ちそうな助言を書いた方がいいかな〜?と思い、今回ブログを更新することにしました。

医学生の皆様は(昔医学生だった医師の皆様でも良いのですが)、これまで同期や部活等の先輩から、ご自分の将来の進路などについて語り合った際に、「お前は◯◯に向いてないよ」と言われたことはありませんか?私自身、ものすごく心当たりがあります。早くて医学部2-3年生の頃に、大して仲が良いわけでもない, たまたま同じ実習班になっただけの同期から、「臨床向いていないんじゃね?研究にでもしなよ」的なことを言われた覚えがあります。その後も、他の同期や部活の先輩から、何かのきっかけに「外科系はやめといた方がよくね?」とか「患者に接する機会の少ない放射線科や病理がいいかもよ」という『お節介』を頂いています。

さて、そう言われ続けた医学部医学科を卒業し、もう10年以上は経過しました。私のブログ(やTwitter / X)をフォロー中の皆様は既にお気づきでしょうが、私は卒後の初期研修2年間をなんだかんだで修了し, 今も救急専門医として臨床現場で働き続けております。特に初期研修医時代や, 救急科に進んだ当初は、多少の勘違い等々ありましたが、例えば患者さんが死亡する, 重大な後遺症をきたすといったトラブルは遭遇していません。学生時代に私が散々言われてきた「臨床向いてない」・「◯◯科はやめとけ」という同期や先輩の『ご助言』は一体何だったのでしょうか?

結論から言うと、まだ座学(講義, 実験室での実習と試験メイン)と, 病院実習(とはいえ全部見学で、治療方針決定や治療手技に全く関わっていない)しか経験していない医学生に、人様の臨床能力や適性などを判断できる訳がないのです(厳密に言うと、まだ臨床現場に出て日が浅い臨床研修医や, 専門課程に入って日の浅い専攻医にも難しいと思います)。

そもそもの話、私はこれまで何度も臨床現場で、「この人やる気あるのか?」とか, 「研修医など若手の風上に置けないような奴だなあ」とか思った医療従事者と少なからず遭遇してきました(具体例に関しては、以下の過去記事リンクをご参照ください。あくまで氷山の一角ですが)。

大都市部に移住しました - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

職場で頭に来ていること - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

救急医から他科の先生方へのお願い的な何か。 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

医学生・研修医を「アンプロ」と言う前に - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

【初期研修医向け】ヤバい指導医の見分け方と対処法【暫定版】 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

大学病院・医局は監督者として適格なのか - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

そうゆう人間が『行くところまで行ってしまった』極端な事例が、近年ネット上で度々話題になっている、件の『脳外科医の竹田くん』です。要するに、先輩ら指導者の助言や各種の教科書・ガイドライン・論文等で収集できる知見を受け入れ、その上で自分の思考や行動のアップデートに繋げるという一連の流れを実践できず, 且つ 患者とその家族とのコミュニケーションや、同科ならびに他科の医師, 看護師や技師などの他職種とのコミュニケーションが機能していないような人間が臨床現場で問題を起こすのです。

言い換えると、仮に学生時代に何らかの課題や欠陥を抱えていたとしても、1) 指導者の助言や各種の教材・講義などを通じて得た知識を吸収し、かつそれを自分で実践できる, 2) 患者とその家族や職場の同僚とのコミュニケーションが円滑かつ正確に出来る という2条件を初期研修の2年間や, 専攻医課程の初期で十分習得できればそれで良いのです。また、特に1)に関しては、組織内で指導者(≒先輩や上司ら)が、若手の監督を満足にできる態勢が完成されているか, 監督者の言動や人格などに問題が無いか, といった点も重要であると思います。前回の『竹田くん』関連の記事でも指摘していますが、問題を抱えたスタッフの行動が患者や周囲のスタッフへ与える負の影響を打ち消したり, 最小限に抑えたり, そうした行動に対して再教育(あるいは懲戒解雇を含む制裁)を行うことは、その組織の上層部や監督者の重要な役割です。

『竹田くん』はあくまで極端な事例でありますが、それでも私はこれまで大学病院・医局や市中病院内での卒後教育・監督態勢について色々な問題を感じてきました。また、私の知っている範囲での話ですが、米国では医学部在学中に受験する国家試験(USMLEのSTEP1)の成績によって卒後に選択できる診療科が左右されます(それに対して日本は、基本的に本人の希望を医局側がほぼ全例受け入れるような形で事が進みますし, 診療科別・地域別に明確に人数の枠が指定されている訳でもありません)。加えて、所謂『進学校』や予備校の中には、_「理系で成績が優秀」というだけで_医学部医学科への進学(一般入試や推薦入試, 地域枠など)を勧めて、本人や保護者をその気にさせてしまう側面もあると思います。まだ18歳以下の高校生に成人後の社会経験などあるはずも無く、学校や予備校の教師・講師とて医療現場の経験などある筈がありません。また教師・教員側が、「医学部に行きなよ!」と応援したくなる生徒の『選択基準』に何らかのバイアス(e.g., 体育祭・部活動・生徒会などでの『活躍』が目立つ方に注意が向くなど)が掛かっていることも十分考えられます。卒後の指導・教育態勢だけでなく、医学部入学前から医学部入学後の進路指導や教育のあり方にもそろそろメスを入れてもいいのではないでしょうか

医局肯定派の皆様へ提案。米国式メディカルスクールはどうですか? - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー