アノミーとデュルケームの『自殺論』の簡単な要約/まとめ 〜個人の立場の変化で集合表象との不一致が起こり、孤立、混乱、無規範へと至る… (original) (raw)
前回のお話
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アノミーとはなんだろう 〜変化、孤立、混乱、無規範…
さて、ずっと大衆のことについて書こうと思っているのですが、どうにもその前段階のお話ばかりで先に進みませんね。それどころかアノミー、アノミーと書いてばかりいますが、今イチアノミーがなんなのか、わかってもらえるほどに説明できていない気もしてきました。そこで今回はアノミーという考え方がどうして出てきたのかをお話してみたいと思います。
社会学の建設者 デュルケーム
アノミーという考え方を出したのは社会学の建設者の一人としても名高いデュルケームによってでした。社会学の建設者、と言いましたが、なぜそうなのかといえばデュルケームが活躍しようとした時代にはまだ社会学は学問として認められていなかったのですね。ですから大学でも社会学というカリキュラムはなく、大学当局から社会学の授業も認められなかったのでした。デュルケームは当初教育学の一環として社会学をねじ込んだんだそうです(どこかの解説にそう書いてあった気が)。そんなわけでデュルケームの尽力によって大学で社会学なんてものが生まれたので、社会学の建設者なのですね。社会学は結構新しい学問になるそうです。
自殺の統計分析『自殺論』
そのデュルケーム先生、社会学をした中に『自殺論』という本があります。なんだか自殺とはなんぞや、と高尚な謎を扱ったように見える題名ですが、残念ながらデュルケームは社会学者であって哲学者や文学者ではないのでそのようなものではありませんでした。ではどんなものなのかといえば、当時のフランスにおける自殺統計を使って、自殺の原因を社会学的に追求してみよう、という内容の本なのでした。
そこでデュルケームはいくつか明確な理由により自殺する要因を挙げていくのですが(借金や病気といった明確な因果関係のものを除き、自己憐憫や集団埋没的な自殺というものを取り出す)、それでもよくわからない自殺の原因があるように思われました。そしてその理由がどのにあるのか、ということをデュルケーム先生は考え、それをアノミー型の自殺、と考えたのでした。
アノミー型自殺とその要因
アノミー型の自殺とはどのようなものか、というと、急激に環境が変わることによってそれまでの価値観と違う世界に投げ入れられてしまい、新しい価値観の世界との間で引き裂かれ、かつて得ていたはずの社会規範を失ったあげくどうしていいかわからずに混乱して、とうとう最後には自殺してしまうもの、とでも言えるでしょうか(私の説明だけじゃあてにならず間違ってるかもしれませんから、興味を持たれた方は『自殺論』直接読んでみてくださいね)。
例に出されるのが没落や成功です。つまり急にお金持ちから貧乏になったり、逆にいきなりお金持ちになることですね。これは今までお金持ちとして生きていたのが貧乏人として暮らさなくてはいけなくなったり、今まで貧乏だったのがお金持ちの一員になることですが、これがたった1日で起こるような、急な変化として起こることによってアノミーが生じやすいと考えるようです。
アノミーへの対策
ここで面白いのはデュルケームは急に貧乏になるよりも、急にお金持ちになる方がアノミーになりやすい、といいます。その理由をデュルケームも考えるのですが、急に貧乏になった場合はその状況に対処しなければならないため家族一丸で挑まなければならないため家族間の結束は高まるが、急にお金持ちになった場合はお金が入ることによって家族全員が自由になりむしろ結束は緩み個々の人間は孤立するからだ、というのです。
ここからデュルケームはアノミー対策として個々人の具体的な関係性を結べるような社会を構築することが大切であると考えるのですが(多分)、同時に貧乏からお金持ちと属する価値観も変わってしまい慣れ親しんだ集合表象ががらりと変化することによってアノミーが起こる、と考えたんだと思います(これも多分。なんか書いてたら不安になってきた。もしかしたら私の勘違いかも…)。
こうした具体的な人間関係からの孤立、慣れ親しんだ価値観からの剥離、急激な変化による混乱、などがアノミーの特徴かと思われますが、こうしたアノミーはデュルケームが分析した昔のフランスの自殺についてだけでなく、私たちが生きているこの社会においても同じように現れているように思え、またそうした要因によって様々な社会的な問題が起こってくるようにも思えてくるのでした。
とりあえずここではこれくらいをアノミーの考え方としてお話出来たことにしておきましょうね(興味あれば『自殺論』読んでね)。
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気になったら読んで欲しい本
デュルケーム『自殺論』
今回のお話の本。とりあえずこれだけ読んでいても現代社会に起こる謎の一部をよく理解できるような気が私はします。最近になって新版になってもいるようですし、やっぱりとても重要な古典だと思います。ただ長いです。相当長いです。ちょっと読むの躊躇するかもしれません。でもきっと読めばニュースに流れてくる三面事件は大半が納得いくような気がします。
電子書籍版もあるそうですが、こんな長いの電子書籍で読むの大変じゃないかな…
デュルケーム『社会分業論』
で、デュルケームがアノミー対策として考えたのが社会的役割を分業して、それぞれの人間がいろんな人間と接点を持てるようにしましょう、とした本。だったと思います。最初に読んだデュルケームの本なので、私自身あまりわからず読んでいて間違っているかもしれません。でもきっと併せて読むといろんなこと考えていいかもしれませんね。
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お話その157(No.0157)