丸の内魔法少女ミラクリーナ(村田沙耶香) (original) (raw)

いかにも生き辛そうな女性たちは、日々を生き抜くためにどのような内面を隠し持っているのでしょう。著者初の短編集には、社会のルールを覆すパワーが満ちていました。

「丸の内魔法少女ラクリーナ」

36歳になっても、小学3年生の時に始めた魔法少女ごっこをやめられないリナが、モラハラ男と別れられない親友のために仮面を脱ぎ捨てます。コミカルな設定ですが、この作品は立場の弱い女性の精神的な生存戦略だけで終わってはいません。弱者にも優しい社会正義のあり方についても考えさせてくれるのです。

秘密の花園

小学生時代に憧れた少年を忘れられず、大学生になっても恋愛できないでいる女性が主人公。彼女はその男性を家に泊めたことをきっかけとして、彼を監禁する生活を始めるのですが・・。ゲーム感覚で始めたことが、どこに行き着いてしまうのでしょう。

「無性教室」

「性別」が禁止されているジェンダーレスな学校でも、第2次性徴期になると性別がはっきりしています。しかし今なお性別不明な同級生に心惹かれてしまった女性の気持ちはどこに行き着くのでしょう。前作と同様に、性的関係がもたらす男女格差がここでも問われています。

「変容」

若者の中から「怒り」という感情が消えつつあることに気付いた中年女性は、時代から取り残されているのでしょうか。どうやら人格などは、社会のありようによって規定されてしまうもののようです。そういえば今の若者言葉の「エモい」などにはついていけていない・・。

2024/9