[Book Chapter] 光合成研究と産業応用最前線」 (2014年12月15日 株式会社エヌ・ティー・エス 刊) むすび 植物機能に学ぶ次世代バイオミメティクス研究の将来展望 ─プラス 1 つの実証モデルの提案 (original) (raw)
本書では、人工光合成系の開発に向けて、基礎的知見、即ち、システムを構成すべき要素についての構造/機能についての知見、光化学系反応についての知見、光受容系に関する知見、二酸化炭素受容系についての知見、(4)酸化還元反応についての知見がカバーされている。また産業応用を見据えた実用化研究として水素生成、人工光合成、有機系太陽電池についての先進事例がカバーされている。人工光合成という技術が世に出ていくのであれば、以上の基礎技術と社会ニーズの組み合わせで様々な形が考えられるだろう。筆者も一人の科学愛好家としてもまた研究者としても、この分野の発展に大いに期待している。 筆者はもともと農学系の研究であるが、筆者の最近は、興味の向くまま、(1)植物の科学史(特に18~19世紀の研究者間のデッドヒートの様子)、(2)生物の機能を模倣したバイオセンシングシステムのための自前のシステム開発、(3)新たな生物情報科学モデルの構築(特に生物が行う計算のモデル)、(4)IC制御照明技術と植物生理学を融合し、植物の光合成能を最大限に生かした省エネルギー型人工光源下での「植物工場」要素技術の開発、(5)環境に配慮した生物系素材の開発、(6)低分子型の人工酵素・人工ヌクレオザイムの開発、(7)バイオロボティクス研究まで、自由に好きなことを自由なスタイルで研究するようにしている(産学連携研究や海外連携のテーマが多いので全くの自由というわけにはいかないが)。そこで、本稿でも、それぞれの研究者が、自らの考える「人工光合成」の研究に取り組み、それぞれ成果を花開かせればよいという、全く自由なスタンスで、必ずしも「結びの一節」とは言えない一節を書かせていただきたい。ここでは、植物の光合成において酸素と二酸化炭素の関係が明らかになった科学史を振り返り、特に二酸化炭素の固定能を活用した、低炭素社会への技術的貢献を視野に入れながら、植物機能に学ぶ次世代バイオミメティクス研究の将来展望の一つとして、人工光合成の要素技術としての二酸化炭素濃縮工程を取り入れた、循環型農業のあり方についての提案をさせていただきたい。ここに書くことに半分はまだ空想の段階であり、半分はパリ第7大学の「明日のエネルギー研究所」および同大学「学際エネルギー研究所」との共同研究テーマとしても研究が始動しつつある内容の紹介である。 河野智謙(2014)植物機能に学ぶ次世代バイオミメティクス研究の将来展望.「光合成研究と産業応用最前線」,株式会社NTS. pp. 393-405.
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