伊丹十三さんの「食の世界」 生誕90年で特別展 愛用調理器具など (original) (raw)

俳優、エッセイスト、映画監督など多分野で才能を発揮した伊丹十三(1933~97)の生誕90年を記念する特別展「伊丹十三の食べたり、呑(の)んだり、作ったり。」が、松山市の伊丹十三記念館で開かれている。愛用の食器や調理器具、とぼけた味わいのあるイラスト原画や生原稿など210点を展示。伊丹が終生関心を持ち続けた「食の世界」を堪能できる。

伊丹は松山東と松山南の両高校などで学び、商業デザイナーを経て俳優デビュー。外国映画に出演した体験を記して注目された初の著書「ヨーロッパ退屈日記」(65年)で、「スパゲティの正しい調理法」を論じていた。監督・脚本の映画「タンポポ」(85年)では、ラーメン店が舞台の物語に食をめぐる様々な喜劇を絡めるオムニバス形式で人気を博した。

特別展の企画構成は、記念館を設計した建築家の中村好文さんと、作家・編集者の松家仁之(まさし)さんが担当。館長で妻の宮本信子さん、次男の池内万平さんも協力した。

中村さんは「記念館に所蔵された伊丹さんの食器などには彼の好みがはっきり出ていて、皆さんにご覧いただきたいと思った」と話す。館内には映画の食事シーンで登場したり、著書の挿絵で描かれたりした食器のほか、オーブン付きの4口ガスコンロや海外製大型冷蔵庫なども並ぶ。

池内さんは「家で使っていた物が展示されているのは不思議な感じ。父が生きていたら『あれを出せこれを出せ』とうるさく指図していたと思う」と笑った。自宅の食器には値打ちものもあったが、「使わないとお皿に悪い」と日々の食卓で使った。子供の頃、音を立てずに食器を運ぶと褒められた記憶があるという。

愛媛の郷土菓子「一六タルト」のCMに伊丹を起用して親交を深め、プロデューサーとして伊丹映画を支えた一六本舗(松山市)の玉置泰会長は「伊丹さんは一食も無駄にしたくないという飽くなき探究心を持った方。おいしい物に巡り合ったときの喜びはすごかった」と懐かしむ。

特別展は2028年まで開かれる予定。入館料は大人800円、高校・大学生500円、中学生以下無料。年末年始、火曜休館(祝日の場合は翌日)。問い合わせは伊丹十三記念館(089・969・1313)。(戸田拓)

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この記事を書いた人

戸田拓

松山総局

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文化、学術、音楽、動画