スピーカーから「危ない!」 警報機・遮断機なし踏切廃止には課題 (original) (raw)

スピーカーから「危ない!」 警報機・遮断機なし踏切廃止には課題

武部真明2024年5月17日 10時15分

群馬県高崎市の警報機も遮断機もない「第4種踏切」で、小学4年生の女児(9)が列車にはねられて亡くなった事故から1カ月以上が過ぎた。同県はこの事故を受け、県内にある第4種踏切74カ所すべてを、可能な限り「廃止」、もしくは警報機と遮断機のある「第1種」への転換を進めている。滋賀県内はどうか。

東近江市郊外にある近江鉄道本線・建部大塚踏切(同市建部下野町)。周囲は田んぼが広がり、住宅が点在する。警報機や遮断機はなく、「踏切は 一旦停止!! みぎ ひだり」と書かれた看板が注意を促していた。渡ろうとしたところ、設置されていた頭上のスピーカーから音声が流れた。「危ない! 踏切では止まって、右左を確認してから渡りましょう」

湖東地域を走る近江鉄道(彦根市)の踏切は県内に175カ所あり、第1種は145カ所。残りの30カ所は第4種で、うち建部大塚踏切など7カ所には、渡る際に音声が流れるボイスガイドが設けられている。必要に応じて、見通しが確保できるように草刈りをしたり、列車の警笛吹鳴標識を設置したりなどの対策をしている。近江鉄道の第4種踏切では、この10年間に事故が2件発生したが、いずれも死亡事故ではなかったという。

近江鉄道は今年4月から、公有民営の上下分離方式に移行した。線路や踏切などの施設は、県と沿線10市町でつくる近江鉄道線管理機構が所有するが、管理は近江鉄道が委託されている。第4種踏切について、近江鉄道の担当者は「廃止の方向だが、なかなか難しい」という。

廃止した場合に不便を感じる人もいるため、地元住民との協議がまず必要だ。踏切を残して第1種に転換する費用も、国土交通省によると、1カ所1500万~2500万円はかかる。その際には赤字の会社には2分の1、黒字なら3分の1の補助金が国から出るが、国交省の担当者は「メンテナンスや点検には補助金が出ないため、鉄道会社の負担は大きい」と話す。

JR西日本大阪市)は、県内にある156の踏切のうち、第4種は草津線の貴生川―三雲にある泉林道踏切1カ所。同社は第4種の廃止や第1種への転換を進めていて、1987年の発足以降、約7割減らしたという。暫定対策として、歩行者が棒を手で持ち上げてから渡る「踏切ゲート―Lite」を設置している踏切もある。

信楽高原鉄道甲賀市)は単独の踏切は11カ所あり、うち第4種は4カ所。京阪電鉄(大阪市)は県内に第4種はなく、比叡山鉄道(大津市)の坂本ケーブルには踏切そのものがない。(武部真明)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【秋トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら