イスラエルのパレスチナ占領政策は国際法違反、国際司法裁判所が勧告意見 - BBCニュース (original) (raw)
イスラエルのパレスチナ占領政策は国際法違反、国際司法裁判所が勧告意見
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画像説明, ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザに対するイスラエルの占領政策にICJの判断が影響するか、注目される。
2024年7月20日
ラフィ・バーグ、BBCニュース
国連の主要な司法機関、国際司法裁判所(ICJ)は19日、イスラエルによるパレスチナ占領政策は国際法に違反しているという、画期的な勧告的意見を出した。
オランダ・ハーグにあるICJは、イスラエルにはヨルダン川西岸と東エルサレムで続くユダヤ人の入植活動を停止する義務があると勧告した。
これに対してイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「うその判断」だとICJを批判した。
ICJの勧告的意見に法的拘束力はないが、政治的意味合いは大きい。1967年の第3次中東戦争から続く、イスラエルによるパレスチナ占領について、ICJが法的判断を示すのは初めて。
ICJは昨年1月、国連総会の要請を受けて、この件の審理を続けていた。国連総会はICJに対して、とりわけ被占領地のパレスチナ人に対するイスラエルの政策や慣行について、ならびに占領の法的性格について、見解を示すよう求めていた。
ICJのナワフ・サラム裁判長は、「イスラエルがパレスチナ被占領地にとどまり続けることは違法」と判断を示した。
そのうえで、「イスラエル国家は、パレスチナ被占領地に自らが違法にいる状態を、可能な限り速やかに終わらせる義務がある」と勧告した。
ICJはまた、イスラエル軍による2005年のガザ地区撤退後も、同地区に対する実質的支配が続いているため、イスラエルの占領は終わっていないとの見方も示した。
ICJはイスラエルに、ヨルダン川西岸地区と東エルサレムから自国の入植者全員を退去させるよう求め、占領によってパレスチナ人にもたらした被害については賠償するよう勧告した。
イスラエルは1967年以来、ヨルダン川西岸と東エルサレムの約160カ所に入植地を作った。そこには約70万人のユダヤ人が住んでいる。ICJはこの入植が違法だと判断したが、入植が国際法違反だとの指摘にイスラエルは一貫して反対し続けている。
ICJは、イスラエルの政策と慣行は「パレスチナ被占領地の大部分の併合」に相当し、これは国際法違反だと判断。こうして占領した地域のいかなる部分に対しても、イスラエルに「主権を主張する権利はない」とした。
イスラエルは、エルサレム全域について主権を主張している。その東側は1967年の第3次中東戦争で占領した。イスラエルは、エルサレムは不可分でその全体が自国の首都だと主張しているが、国際社会の大部分はその主張を認めていない。
ICJは、イスラエルが被占領地のパレスチナ人に対してさまざまな制限を課していることについて、「人種、宗教、民族的出自などにもとづく包括的な差別の仕組み」に相当すると指摘。さらに、パレスチナ人のものであるはずの天然資源を違法に搾取(さくしゅ)し、パレスチナ人の自己決定権を侵害したと判断を示した。
ICJはさらに、援助や協力の提供を含めて、現状維持につながるような一切の行動は避けるよう、各国に呼び掛けた。
これに対してイスラエルのネタニヤフ首相は19日、素早く声明を出し、「ユダヤ人は自分たちの土地において、占領者などではない。自分たちの永遠の首都、エルサレムにおいても、先祖代々の土地ジュデアとサマリア(ヨルダン川西岸)においても、ユダヤ人は占領者ではない」と反発した。
「ハーグにおけるうその判断が、この歴史的事実をゆがめることはない。そして同様に、われらの祖国の全域におけるイスラエル入植地が合法であることにも、疑いの余地はない」と首相は強調した。
他方、パレスチナ側はICJの判断を歓迎した。
パレスチナ解放機構(PLO)執行委員会のフセイン・アル・シェイク事務局長は、「パレスチナの人々の権利と、パレスチナ人の自己決定権にとって、歴史的な勝利だ」と評価。「接収、入植、追放、占領下の住民に対する人種差別的慣行を通じたユダヤ化計画を破綻(はたん)させ、敗北させる勝利だ」とした。
さらに、「国際社会は国際司法の意見を尊重し、パレスチナ自治区の占領をイスラエルにやめさせなくてはならない」と呼びかけた。
ICJの今回の勧告は今後、国連総会に送付され、国連総会が対応を決定する。勧告に基づく国連決議が採択される可能性もあり、その場合は国連決議が今後の交渉や合意の法的枠組みとなることもあり得る。