貿易から投資、稼ぐ構造変化の処方箋議論へ勉強会立ち上げ-政府 (original) (raw)

貿易から投資、稼ぐ構造変化の処方箋議論へ勉強会立ち上げ-政府

2024年3月26日 13:04 JST 更新日時 2024年3月26日 15:26 JST

財務省は26日、国際収支の観点から日本経済の課題を議論する財務官主催の懇談会の初会合を開いた。貿易赤字が定着し、海外への投資で稼ぐ構造に変化する中、日本経済の制約要因を洗い出し、成長機会を見いだす狙いがある。

国際収支を切り口に日本経済を議論するのは初の試みで、6月をめどに課題と処方箋を取りまとめる。懇談会には、植田健一・東大大学院教授や土居丈朗・慶応大学教授ら学者、BNPパリバ証券の河野龍太郎氏や東短リサーチの加藤出氏らエコノミストを含む20人の有識者が参加している。

発案者の神田真人財務官は初会合後、近年の貿易収支は赤字基調で「サービス収支ではデジタル分野や研究開発関連といった先進分野で赤字が拡大」するなど、国際収支から見える日本の課題に言及。これを放置すれば「将来大変なことになるという危機感が共有化される中、それぞれの分野においての問題や解決策を幅広く議論する」と語った。

東日本大震災が発生した2011年以降、経常収支の黒字主体は貿易収支から、海外投資から得た利子・配当などを含む第一次所得収支に移っている。高齢化が進む中で中期的に貿易収支やサービス収支の赤字は定着・拡大、経常収支の黒字は縮小すると予測され、輸出頼みだったこれまでの日本経済から投資で稼ぐ構造転換に向けた課題を洗い出す。

貿易収支のうち、冷蔵庫やテレビなど輸出の主力分野だった電気機器は23年に輸入超過に転じた。サービス収支では、インバウンド(外国人訪日客)消費の回復で旅行収支は23年に過去最大の黒字を確保したが、観光地に旅行者が押し寄せるオーバーツーリズムによって需要に供給が追いつかないといった課題が生じている。競争力が弱いデジタル分野ではデジタル化が進むほど赤字が積み上がる構図となっている。

第一次所得収支は黒字だが

一方、第一次所得収支の黒字は21年以降、毎年最高を更新しているが、海外直接投資収益のうち日本への還流は半分で、残りは再投資収益として海外拠点にとどまっている。神田財務官によれば、「これが日本が豊かにならない一つの原因」とされており、国内への投資を促し、成長につなげる具体策について活発な議論を期待する。

初会合で委員からは、第一次所得収支の黒字は「国内に魅力的な投資先がないことの裏返し」との意見や、海外への再投資で「国内の無形資産投資や人的資本投資、イノベーションが滞ってきた」との指摘があった。海外企業の日本への直接投資を喚起するとともに、日本企業には国内への再投資を促すインセンティブの必要性を訴える声もあった。

その他の論点として、海外投資家による日本国債の保有比率が増える中での財政運営の在り方なども議論する。神田財務官は、円安で第一次所得収支が膨らむなど関連はあるものの、為替は今回の議論の範囲には含まれていないと説明した。

(初会合後の神田財務官の発言内容を加えて更新します)