「ビタミンタバコ」「吸うビタミン」とは? その効果に専門家「意味ない」 (original) (raw)

他にも複数のインフルエンサーらが、4〜7月を中心に、この商品の宣伝をしていた。しかし、公式サイトの説明には「摂取・吸入できる」という文言はなく、以下のように表現されている。

「新感覚ビタミン体験」「吸って、感じる!?ビタミン入りミストサプリ」「天然植物由来成分とビタミンCのシンプルでクリアなフレーバーをお楽しみいただけます」

はたして、この「ミストサプリ」から、ビタミンCを摂取できるのか。BuzzFeed Newsは国立健康・栄養研究所に話を聞いた。

公式サイトによれば、『C-TEC DUO』はカートリッジ内の(ビタミンCが添加された)「リキッド」を「蒸気化」し、「霧状の煙を吸引」する。このメカニズムでビタミンCを摂取することはできるのか。BuzzFeed Newsは国立健康・栄養研究所の食品保健機能研究部部長、梅垣敬三氏を取材した。

梅垣氏はそもそも「吸入によりビタミンCを摂取するデータは見たことがありません」と前置きをした上で「吸入によって摂取できるビタミンCの量はわずかと思われるため、気分的に良いと思えるかもしれませんが、実質的にはほとんど意味はない」という。

「ビタミンCのフレーバー」などの表現については、「純粋なビタミンCには酸味はありますが、においはありません」「おそらくフレーバーがあるといっているのは、ビタミンC以外の成分によるもの」とした。

吸引によってビタミンCを取り込む方法は「安全性について十分な検証はない」。また、該当商品からはビタミンC以外の成分も吸入される可能性があるため、「該当製品を利用すること自体が、安全か否かを考えることが重要」と強調する。

「安全性については、対象者の健康状態や体質にも影響されるため、一般的に安全であっても、絶対に安全とは言えません。どのような人にどのような不都合な影響が生じるか否かを明らかにしておく(使う人に伝えておく)必要があると思います」

蒸気化によりビタミンCが変性したり、破壊されたりする可能性は。梅垣氏は、検証にはデータが必要で、公式サイトやSNSではそれが示されていないことを指摘しつつ、「ビタミンCが酸化されやすい」ことは言えるという。

「ビタミンCは空気などにより酸化されやすいので、吸入する商品の中で、利用する前に既に酸化されてしまっている可能性があるかもしれません」

では、この商品はどんな根拠をもとに「ビタミン体験」をうたっているのか。BuzzFeed Newsは『C-TEC DUO』を販売する株式会社ジービーエスに取材を申し込んだ。

対面取材を条件に、同社担当者が取材に応じた。同担当者によれば『C-TEC DUO』について「あくまでフレーバーを楽しむもの」「吸引によりビタミンCがどのくらい摂取できるか、蒸気化によりどれくらいビタミンCが変化するかのデータは現時点ではない」という。

そのため同社としては「吸引によりビタミンCを摂取できるとは宣伝していない」。しかし、それではインフルエンサーらの投稿の文言とは食い違う。同担当者はインフルエンサーらに同社から文言等を指示したことは「ない」と明言する。

同様のマーケティング活動をしている類似の商品は、他にVITACIG(ビタシグ)VITABACO(ビタバコ)があり、これらはより直接的にビタミンが「吸収」されることや「体に取り込まれる」ことをうたっている。

「インフルエンサーによっては、過去に類似商品の宣伝をしていた方もいるため、その経験を元に書き込んでしまったのではないか」というのが同担当者の主張だ。いずれにせよ、それでは、インフルエンサーらは実際の商品の効果ではないことを宣伝していることになる。

このことについて、同担当者は「“体に良い”などの表現については、各投稿者に個別の対応を求めていく」とした。しかし「代理店を経由して宣伝を依頼しているので、実際にどのインフルエンサーが商品を宣伝しているのかはわからない」という。

「誰が商品の宣伝をしているのかわからない」状態は、いわゆるステマ(ステルスマーケティング)ではないのか。宣伝にあたり、金銭の授受があったのか質問すると、同担当者はステマに関する認識が薄かったことを認め、こう回答した。

「商品提供の場合もあれば、代理店に広告費を払っている場合もある。代理店が各インフルエンサーにお金を払っているか、弊社にははっきりとわかりませんが、その可能性は十分に考えられます。今後はより信頼されるような宣伝の体制を、代理店、およびインフルエンサーを含めて構築していきます」

問題は「誇大広告」「ステマ」の可能性だけではない。商品の安全性と、製造責任者の責任とは。

データが示されていないことで、安全性に疑いがあることについて、同担当者は「民間の調査機関に、ニコチンやホルムアルデヒド、水銀の含有量の有無の調査を依頼し、問題なかった」ことはあるが、「他に何を調査すれば安全と言い切れるのか、正直なところ、わからない」という。

SNS時代に問われる、広告の在り方と、商品の安全性。国立健康・栄養研究所の梅垣氏は、その説明を次のように締めくくった。

「商品の宣伝は有効性のみを強調して、安全性についてはほとんどふれていません。安全なのか、それを摂取するとどのような結果になるのか、わかっていないものが販売されている現状がある。そのような特徴を踏まえた上で、広告やSNSの情報を理解する必要があると思います」

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