「プラスチックの過剰包装、無くせませんか?」高校生の問いかけ。製菓会社2社は前向きな受け止め (original) (raw)
クッキーやおかきを食べている時に、プラスチック製のごみが多く出てしまって一度は「もったいないな…」と思ったことがあるのではないでしょうか?
一人の女子高校生(16)が、大手製菓会社2社に対し「プラスチックの過剰包装を無くしてください」とのオンライン署名を集めました。
署名は約2カ月で1万8千筆以上集まり、7月28日、亀田製菓に提出されました。29日にはブルボンに提出します。
女子高校生が署名を始めた理由とは。そして女性高校生から始まり、集まった消費者1万8千人の声を、2社はどう受け止めるのか。BuzzFeed Newsは女子高生と2社に話を聞きました。
以前から、プラごみなど環境問題に関心があったという彼女は、家でお菓子や煎餅を食べる時に、包装などで多くのプラごみが出てしまうことを残念に思っていたといいます。
「海洋プラごみ問題と動物についてのドキュメンタリーを見て、人間が出したごみが動物たちを傷つけていると知りました。タピオカブームなどでプラごみの問題もずっと気になっていて、使い捨てのプラを食品の包装にずっと使い続けていくんだろうか?と疑問を持ちました」
署名を立ち上げるにあたって、リサイクルの仕組みや代替品として出てきているバイオプラが本当に環境に良いのかなどを調べ、「そもそもごみを減らす努力が大切」と考えたといいます。
署名の提出先として亀田製菓とブルボンの2社を選んだのは、両社とも環境配慮型のパッケージなどのエコ対策を実施していて、大手で影響力もあるからといいます。
「普段からその2社のお菓子をよく食べているということもありますが、大企業が変わったら、他の企業も変わるかもしれないと思いました」
実際、署名を始めると多くの人が賛同し、「環境に良い包装に変えてほしい」「脱プラを加速させたいですね」などのコメントが寄せられました。日本国内からだけでなく、海外からも多くの署名やコメントが集まりました。
一方で、この署名を取り上げた記事のコメント欄やTwitterでは「子どもや高齢者のために個装は必要」「長い期間食べたり、シェアするためにある。個装をなくさないで」などというコメントも多く寄せられ、中には女子高校生に対する誹謗中傷も多くあったといいます。
署名は、プラ製の過剰包装を無くしてほしいという内容で、一概に個装を撤廃するように求めているのではなく、包装を紙を使ったものにしたり、トレーを無くしたりなどの環境への配慮を求めています。
実際、BuzzFeed Newsの取材に対し、1万8千筆の署名が集まったことについては2社とも「我々が行ってきた環境への取り組みがお客様に受け入れて頂ける自信につながった」(亀田製菓)、「当社が継続して取り組んできた活動の意味がさらに大きく、深くなった」(ブルボン)と、前向きに捉えています。
「2030年までに全商品を環境に配慮した包装へ」
「亀田製菓さん:プラスチックの過剰包装を無くしてください!」 との、お声をいただいてますが… 実は、 #亀田製菓 は2030年までに全商品を環境に配慮した包装に変えていきます❗ 小さなパッケージの大きなチャレンジ‼️ 詳細はコチラ⏬ https://t.co/mm1IMdPB4Z @change_jp https://t.co/jtBqAGYkMB
@Kameda_JP
署名発足を受けて、亀田製菓は6月、公式Twitterアカウントでオンライン署名のページを共有するなどして、歓迎の姿勢を見せていました。
ツイートでは、「実は、亀田製菓は2030年までに全商品を環境に配慮した包装に変えていきます!小さなパッケージの大きなチャレンジ!」としました。
同社は近年、環境対策に力を入れていて、今後もその活動を推進していくといいます。
女子高校生が28日午後、都内の亀田製菓オフィスで署名を提出した際にも、同社担当者は1時間にわたり、女子高校生の話を聞いたり、同社の環境配慮への取り組みを説明したりしました。
女子高校生は話し合い終了後、「亀田製菓さんが消費者の目線に立って包装のあり方や環境対策について考えていらっしゃると分かりました。エコパッケージに変更するまでの道のりやエコに対しての意識などを知れて、本当によかったです」と語りました。
「お客様の事を第一に考えながら環境配慮との両立を」亀田製菓
亀田製菓の経営企画部担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「まず、高校生が自ら問題提起し、署名を集める実行にまで移しているその『思い』と『行動力』はとても凄いことだと思います」と話しました。
署名が1万8千筆集まったことに対しては、「環境問題へのお客様の意識の高まりを実感しています」とした上で、「2030年までに全商品を環境配慮型のパッケージに変更するという方針に基づき、着実に活動を推進していきたいと思います」と語りました。
同社は、2015年からプラ製トレーを抜いたパッケージに変更したり、包装自体を小さくした「スリムパッケージ」により、プラスチックの使用量を30%削減するよう取り組んできました。
担当者は、環境対策についてこのように説明します。
「当社としては、食品企業としてお客様のことを第一に考えながら、『安心安全』『美味しさ』『利便性』といった部分は守りながら、いかに環境に配慮し、両立していくかを考え、ECO化に取り組んでいきたいと思います」
「これまで以上にスピードを上げた対応が必要」ブルボンの考え
ブルボンの広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、今回の申し入れに対して「この度のプラスチックごみの削減の趣旨につきましては、全くその通りであり当社と方向性が一致するものと考えています」としました。
過剰包装の原因となっている、お菓子の個装やトレーの使用については「食品の保護や安全性の確保」「お菓子の特性に応じて商品の状態を保持するため」と説明。
個装については「少子高齢化社会や個食の時代的ニーズに合わせて外装を開封後の商品保存を可能にする」「シェアしたり、アレルギー表示を伝える」などの役割があると説明しました。「品質面からも個包装することで湿気っておいしくなくなってしまうことを防ぐ目的もあります」とします。
これまでも環境保全活動を継続してきた同社は、マイクロプラスチックなどによる海洋汚染などの問題を念頭において、「社会で提起されている商品の過剰包装防止や使い捨てプラスチック製品の代替化などについて、当社でもそれぞれの立場で今まで以上にスピードを上げた対応が必要であると考えています」としました。
また、今後の環境対策については、こう語ります。
「商品を流通させるために、包装に求められる必要な要件を満たしながら実施可能な新技術や工夫を取り入れ、継続して低減活動を行っていくことがより一層求められていると感じています」
ブルボンでは、省エネ活動や廃棄物削減、リサイクルなど様々な環境対策を実施していて、同社ウェブサイト上には、「環境報告書」が掲載されています。
2020年版の報告書では、「ブランチュール」や「ガトーレーズン」などの商品に、植物由来のバイオマスプラスチックを使用したトレーをを使い、ファミリーサイズの「アルフォート」などの外装では、包装材料の厚みを薄くするなどの取り組みが紹介されています。フィルムの肉薄化では、約8%のプラ削減、シリーズ累計で年間約27トンの削減につながるといいます。
お菓子のパッケージの「紙製」への変更の動き
製菓会社や食品メーカーなどでは、個装のプラスチック削減の取り組みを相次いで発表していました。
ネスレ日本は2019年9月、「キットカット」の大袋タイプ5種の外装を全て、プラスチックから100%紙製に変更していました。
ネスレ日本によると、個包装を紙製にする試みもありましたが、製品が空気に触れやすくなり品質劣化が進んでしまうなどの問題があり、現段階では個包装はプラスチックのままだそうです。
今後、研究を重ね、いずれは梱包素材すべてをリサイクル可能なものにするということ。
実は紙のパッケージへの変更で、製作コストは上がっていました。担当者は報道陣に対し、地球環境を考えると「コストが上がって収益が圧迫されたとしても、やるべきだと判断しました」と語っていました。
UHA味覚糖(大阪市中央区)は3月、「特濃ミルク8.2」などのパッケージ外装の構成材質の50%を紙に変更しています。
この変更によって、特濃ミルク3品で年間約14トンのプラスチック削減につながるそうです。
今後も、UHA味覚糖の主力商品のパッケージを、プラスチックから紙を使ったものへと変更していく予定ということです。
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