青の王と花ひらくオメガ - ちるちる (original) (raw)

こちら、砂漠の王国を舞台とした、とても感動的で壮大な愛の物語になります。
プラス、オメガバース。

どうしようもなく孤独な二人が出会って、愛する事、愛される事を自分に許す・・・。
「心のままに愛していいんだよ」と言う、深いメッセージ性が心に響くお話なんですよね。
読み終えた後は、なんだか胸がいっぱいですよ。

ちなみに、葵居先生と言うと(個人的に)痛いイメージがあるんですけど、今回はどこか透明感があって優しいお話でもあります。
かなり切なくもあるんですけど。
この雰囲気も、また素敵でした。

で、内容です。
オメガ性を持つものが、アルファである王族の子を産む神子として、大切に保護される砂漠の国。
第二性別を持たないセレンは、神殿の下働きとしてひっそり生きてきたんですね。
そんな中、王族のアルファ達が神子を迎えにやってくる「神の夜」に、第一王子であるレイと出会ったセレン。
レイは、神子では無いセレンを、何故か王宮へと連れて行くと言い出しー・・・と言うものです。

こちらですね、主人公がとにかく不憫なんですよね。
実は彼ですが、神子である母親とその母親を拐った盗賊との間に生まれてと、神子が神聖視されるこの国では許されない存在でして。
その為、極端に自己肯定感が低く、また自己犠牲の意識が強いキャラなのです。
神殿でも下働きとして辛い労働を課されてるのに、それでも人の役に少しでも立たなくてはと、強迫観念めいた思いを常に持っていると言いますか。
こう、生まれおちてからずっと「罪深い存在だ」と言い聞かせ続けられた結果、まっすぐ前を見る事すら出来なくなっちゃってるんですよね。

今回、一番の萌え処ですが、そんな彼が人を愛する事、そして自分を愛する事を自身に許せるようになるー。
その一点だと思うんですよね。

や、セレンを強引に王宮へと連れ去った第一王子のレイですが、自堕落で横柄でと、その評判は最悪なんですよ。
実際、初めてのセレンを苛烈に抱き、昼間から酒に酔って醜態をさらしと、どう見ても「王には相応しくない」存在。

これ、面白いのが、そんな二人が少しずつ少しずつ心を通わせてゆく所でして。

えーと、セレンなんですけど、皆が眉を潜める存在であるレイをですね、一人だけ優しいと感じるんですよね。
や、レイですけど、ただの乱暴者では無い?と、随所随所で読者が疑問を持つ形で書かれてまして。
苛烈に抱いた後、何故かセレンを抱き締めたまま一晩眠ったり、神殿で下ばかりみていた彼に「顔をあげろ」と言い放ったり。

こう、他の神子達の前でセレンに口淫させたりと、あまりに酷い仕打ちには腹が立つんですよ。
立つんですけど、実は彼のこの行動は、ちゃんと理由があってのものー。
王位を弟に譲ると言う狙いからの計算だと分かってくる。

う~ん・・・。
本当のレイですが、とても愛情深い優しい男なんですよね。
彼はその目的の為に、セレンを利用しようと王宮へと連れてきた。
それが、ただひたすら健気でひたむきなセレンの姿に、愛しさを覚えるようになる。
そして、自分の望みの為に酷い扱いをした彼に、報いたいと思うようになる。

いやね、そんな感じでレイの意識や態度が変わってゆくのに、すごくすごく萌えるのです。
また、この二人。
どうしようも無く孤独なんですよね。
実はレイはレイで、心に抱えているものがあってと。
そんな孤独を抱える二人が、互いの存在によって救われる。
いやもう、

旅をして。
砂漠の向こう側の国に行けるのも幸せだろう。
セレンに好きなものを見せてやるー。

そう語るレイに、なんだか胸が締め付けられて。
すごく萌えるシーンでもあるんですけど。
また、セレンがですね、「この人をひとりぼっちにしたくない」と、初めて自分の願いを強く持つんですよね。
これにもまた、グッときちゃって。

ここから、辛い展開がセレンを襲ったりもしますが、そこでやっと、重い枷から解き放たれる主人公と、めちゃくちゃ感動しちゃって。
や、重い枷から解き放たれたのは、セレンだけじゃなくレイもなんですよね。
とにかく、言葉にならないほど感動なんですよ。

とりあえず、攻めの受けへの仕打ちがちょい酷かったりもするので、人によっては受け入れられない作品かもしれないですけど。
ただ、個人的には、めちゃくちゃ萌えたし感動もしました。
特にラストは、何だかホロリときちゃいましたよ。

すごく素敵なお話だと思います。