帳と針 - ちるちる (original) (raw)

潤×石神

過去に縋る過剰な執着・潤、
その重さを自分自身に背負っている姿がエモくて刺さる!
無自覚な愛情での執着・石神。
お互いが抱える執着から漏れ出る歪んだ心理が心を掴んで離さないし、
過去と再会後の現在が交錯しながら進行し、
2人の関係性の変化に伴う緊張感から目が離せない。

ホラー系寄りの絵柄で、特に目付きがゾクゾクする感じを醸し出しても、
実際には直接的に傷つけるシーンや痛みの描写もない、安心して読み進められる。

初恋の未練に囚われて、
自堕落と虚無感の中に生きる陰気で弱々しい工場作業員の潤。
初恋相手は、高校時代の不良1軍の石神(表紙の男)。
石神に救われて以来、石神を崇拝し続けて従い、
恋心が知られて翻弄されても嫌じゃない、むしろ服従を喜んでいた。
必死に石神を好きでいて、
なんでも言うことを聞く姿が狂気じみた愛情を感じさせる。
強制オナニーの光景がすごくいじらしい!
潤の気持ちを弄ぶ(精神的加虐)という石神の異常な愛情が垣間見える。
その過去の関係性の歪さに引き込まれる。

ただ石神と一緒にいられたかった潤。
ある闇の事件が原因で2人が会えなくなってしまった。
潤の時間はそのまま止まってしまった。

そして、潤が偶然石神と再会する。
その緊張と喜びが入り混じる気持ちがあまりにもリアル。
石神が普通に結婚して、
過去に縋っているのは自分だけだと知って愕然とする潤。
その衝動の爆発で石神を襲う姿が目に焼きつく!
復讐したい気持ちも芽生えるけど、
石神の策士っぷりに見透かされて何もできないのが虚しい。

前半はずっと潤視点だから、石神の心が全く読めなくて、
高校時代、石神が潤の感情を操っていただけで、
再会しても何もなかったかのような平常心でいる。
その冷静な態度に、読者も潤と同じ気持ちで、
「潤は石神にとって何もない存在」と思い込んでしまう。ところが、
急に露われてくる石神の狂った行動や、石神視点や
石神の奥さんの話から明かされていく真実・・・そのド執着がもう心が震える!

結局、愛情表現を自分にも潤にもできない石神。
止まっていた時間を再び動かしてくれるのが潤なのだ。
そんな潤こそが、石神にとって本当に望ましい存在でしょう。

必死に泣きながらも石神のために生きてきた(生きていく)潤の心情に、
終始共感せずにはいられない。

エロは少なめだが、

一番胸に迫ったのは、
最初から最後まで女王様の石神。
完全なる主導権の握りに圧倒される!
潤の「石神を犯したい」という気持ちまで弄び、
加虐心で潤の心も体も捧げさせる振る舞いがたまらない!
誰が攻めなのか誰が受けなのかさえわからなくなるほど、
一切態度を緩めない石神の余裕さがカッコいい!

最初から最後までヘタレの潤で、

2人が幸せそうでホッとする。

飼い主と犬のような相互依存関係が美味しくて、
エモさと狂気が入り交じった執着に、すっかり没頭してしまいました。