雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか~青~ - ちるちる (original) (raw)
一穂ミチ先生のデビュー作『雪よ林檎の香のごとく』の
同人誌や小冊子、ブログなどで発表された小品集。
ファンである私は同人誌も実は全部持っているのだが、
それでもこの総集編をとても楽しみに待っていた。
まして今やなかなか手に入らない同人誌や小冊子を
是非に読みたいと思っていた方々には本当に嬉しい企画だろう。
この「青」には、『bitter,bitter,sweet』から『美しい世界』
加えて書き下ろしの『Now is The Future』までの
全部で13編が収められている。
志緒が高校時代から、卒業大学進学後の18歳までのエピソード。
それぞれが短編だからだということもあろうが、
続編というよりも、あの二人がちゃんとどこかで息をして
二人の関係を深めているさまをずっと一緒に見守るような
そんな作品群。
一編、志緒の幼馴染りかの視点の作品もあり(「かんむりひめ」)
ごく一般のBLの定型からは外れている味わいのこの一冊は、
好まない人もいるだろうと思う。
しかし、出版のされ方を含めて、BLの可能性を広げる
素晴らしい一冊となっていると、個人的には思う。
同人誌や「オンユアマーク」に(これは大好きな作品なので、
HPで見ることができなくなったのをとても惜しんでいたので、
今回紙化されたのは本当に嬉しい!)関しては、
それぞれレビューを書いているのでここでは繰り返さないが、
桂の志緒の、あるいは拵のりかの、他の誰でもない個性が
生き生きと描写され、それぞれが心に響く。
もちろん、青い志緒くんならではのエロスには萌える!
そして書き下ろしの『Now is the Future』では、涙してしまった。
本編のタイトルは北原白秋だったが、
こちらは佐藤春夫か……、
(「さんま苦いかしょっぱいか」のフレーズばかりが有名だが
白秋の短歌同様、こちらも実はかなり暗い詩なのだが……)
しかも志緒ちゃんが成人までが「青」い林檎で、
その後が熟した「赤」というのが、なんともニクい。
竹美家先生が描かれた、各同人誌の美しい表紙も掲載され、
それぞれについての両先生方のコメントも書かれている。
お次は、その成熟の「赤」……です。
<追記/収録作品一覧>
CDブックレット:bitter,bitter,sweet
同人誌:Why don’t you
(含Spider web on the ground ay duskmoon)
キスなんて大きらい
感情教育
はるのうた(含オンリー・ペーパー・ミュージック)
ナイトクルージング
出版社HP掲載:オンユアマーク
イベント配布小冊子:美しい世界
筆者ブログ掲載:かんむりひめ きんぎんすなご