工学部 情報工学科 中村剛士 先生 | Chubuly Style | 中部大学 (original) (raw)
ロボットと心地よくコミュニケーションを図る未来へ向けて
プロフィール
中村剛士(ナカムラ ツヨシ)先生。愛知県出身。名古屋工業大学 博士後期課程修了。博士(工学)。博士号取得後、同大学助手、同大学大学院准教授を経て、2021年に中部大学着任。現在は工学部 情報工学科 教授。
趣味はテニス、クラシックコンサート鑑賞。テニスは週に1・2回、コートを借りて楽しんでいる。クラシックコンサート鑑賞は名古屋市中区栄にある「宗次ホール」によく足を運ぶ。好きな食べ物は旬のものやご当地名物。学食の中ならカレーが好き。
先生の研究内容
「研究内容は、人工知能(AI)と呼ばれる分野です。細かく言うと、ヒューマン・エージェント・インタラクション(HAI)、ヒューマン・ロボット・インタラクション(HRI)など、人間とロボットの対話に関する分野です。その中でも特に、人間の持つ感性的な側面をAIやロボットに実装して、より人間に近い対話が可能なAIやロボットを開発するための基礎研究を行っています。
世の中には『Pepper(ペッパー)』のような形のロボットもあれば、最近では人間と見た目の区別がつかないようなロボットも開発されています。今後、ロボットはより身近な存在になっていくでしょう。その際、人間がロボットと心地よく自然にコミュニケーションを図れるようにすることが研究の目的です。現在は『音(おん)象徴』という、特定の音が特定の印象を与えるという人間の感性的な側面を示す現象をテーマに研究しています」
音象徴という現象についてAI技術を利用して全容を解明
「自然界の音や声、物ごとの状態や動きなどを音で象徴的に表した『オノマトペ』は、心理学・音声学など文系の学問として知られています。しかし、工学的な方法によってこの現象を分析するというアプローチはあまりされておらず、全容は未だに不明です。そこで、AI技術を用いて、音象徴の全容を解明しようという試みをしています。具体的には、多くの音象徴事例を集め、インプットされたデータ間に見られる法則や関係性を学習したAIモデルを作り出します。それをロボットに実装することで、より人間に近い感情豊かな対話ができるようになると期待しています。他にもAIモデルを利用して、企業の製品名やブランド名のネーミング支援などに応用することもできます」
研究を始めたきっかけ
学生時代の研究(毛筆フォント作成技術を応用した手書き風似顔絵作成アプリ)
「幼少期は、愛知県田原市ののどかな田舎で過ごしていました。そんな中で両親が揃えてくれた百科事典を眺めることが好きでした。そこには有名な絵画や音楽家の情報など、好奇心をくすぐるような知識がたくさん書かれていたからです。また、次第にロボットや最新型の電化製品・パソコンなど工学の分野にも興味を持つようになりました。実家を離れ、名古屋の大学に進学したいという気持ちが強く、名古屋工業大学の電気情報工学科に進学しました。
学部生時代に配属された研究室は人工知能分野を専門とする研究室でした。『書道』の研究をすることを課せられ、既存の毛筆フォントにかすれやにじみを付け足し、より人間味のある毛筆フォントを自動生成できる仕組みを作り出しました。『書道』という一見すると人工知能とはかけ離れたものを研究対象にすることは、現在の研究対象である『音象徴』も同じです。『音象徴』を研究対象としたのは、オーケストラのコンサートで鳥肌が立つという体験をもとに、音が人間の身体に何らかの影響を与えるということを工学的に明らかにしたいと考え、現在に至ります」
先生の学生時代
「長期休暇は、友人と旅行に行くことが多かったです。修士1年の夏休みには、名古屋から出発して四国をほぼ一周する自転車旅行を10日間ほどかけて行いました。他にも登山によく出かけていました。若さゆえに体力もあり、さまざまなことに挑戦できた貴重な時代だったと思います。また、ドイツのアーヘンで開催された国際会議が初めての海外旅行で、初海外にもかかわらず指導教授をアテンドしなければならなかった苦労が思い出されます。インターネットが当たり前にある時代ではなかったため、鉄道の時刻を時刻表で調べたり地図を頼りに移動するなど、恩師が与えてくださった試練のおかげで人生の経験値が上がりました」
メッセージ
「たくさんの『挑戦』の中で『経験』と『失敗』をしてほしいと思っています。学生時代という時間は人生の中で『失敗』が許される貴重な時間です。この貴重な時間を有効に使って、他の人とは違う『経験』からさまざまな知識・技術を身につけてくれることを期待します。
例えば国内外問わず、学会発表などは進んで挑戦してみてください。『英語が得意じゃないから』『失敗したら恥ずかしいから』などの理由で挑戦しない『0(ゼロ)』よりも、失敗しても挑戦してみた『1(イチ)』をどんどん積み重ねていってほしいです」