虚業とブルシット・ジョブ (original) (raw)

4月になり新年度が始まった。学生から社会人になる人にとっては緊張する瞬間かもしれない。

私が社会人になりたての頃、「虚業」という言葉を知った。「虚業」とは「実業」の反対語で、辞書的には「堅実でない事業」を意味している。ただ、何をもって堅実でないといえるかは曖昧なため、人によって意味合いも異なってくる。新しい産業や業界が生まれると、既存の産業界からは「虚業」呼ばわりされたりする。

また、汗水たらして働くことなく儲けるような事業を「虚業」と呼ぶ傾向もある。この中には詐欺やネズミ講のような本当に嘘で中身のないビジネスもあるし、「不労所得」が得られるような不動産投資や株式投資といった「楽をして稼いでいる」というイメージのものも含まれている(実際には思ったほど楽ではないが)。

さて、株式投資は「虚業」なのだろうか。

そういえば「虚業」という言葉の連想で、「ブルシット・ジョブ」という言葉を思い出した。ブルシット・ジョブとは、米国の人類学者デヴィッド・グレーバー教授が著書「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」で提唱した概念だ。この中で社会的仕事の半分以上は意味がないものだとして、「完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態」をブルシット・ジョブと呼んだ。

実業だろうと虚業だろうと、その中にはブルシット・ジョブが存在している。実業か虚業かは人によって見方が違うためどうしようもないものだが、自分の仕事が意味のない無駄なものかどうかは自分で判断できる。

株式投資は人によっては「虚業」に映るだろう。でもやっていることは決して無意味なことではないし、不必要なことでもない。少なくとも私にとってはブルシット・ジョブではないのは確かなのだ。