AI時代もクリエイティブを競争力にする Adobe、Figmaと取り組む創造性の拡張 | CyberAgent Way サイバーエージェント公式オウンドメディア (original) (raw)
技術・デザイン
2024年11月15日
2024年10月29日、30日の2日間にわたり、サイバーエージェントグループのエンジニア・クリエイターによるテックカンファレンス「CyberAgent Developer Conference 2024」を開催しました。進化しつづけるサイバーエージェントの技術と創造力のカンファレンスとして「Expanding Inspiration」をテーマに、様々な技術領域における65のセッションをお届けしました。
こちらでは、基調講演の中から執行役員(クリエイティブ担当)佐藤洋介と、パートナー企業2社の発表の様子を一部編集してお伝えします。
生成AI時代におけるサイバーエージェントのクリエイティブ戦略 https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=29663 あわせて読みたい
「創造性の進化、クリエイターの新章」
2025年クリエイティブ戦略
当社のミッションステートメントに「クリエイティブで勝負する」という一文が加わってから、すでに8年が経過しました。
2021年には、「テクノロジーとクリエイティブの融合で世界に挑戦する」という当社のパーパスが制定され、これらを改めて会社の競争力とすることを明確にしました。現在、当社では1,400人を超える多様な領域のクリエイターが活躍しています。国内でこの規模のクリエイター集団を擁する企業は稀少であり、これこそが当社の強力な競争優位性となっています。
賞の受賞や、アプリ支援によるクライアントのサービスグロースの貢献、また提供タイトルの高い人気など、2024年度もサイバーエージェント発の多様なクリエイティブが注目を集めました。
生成AIの登場により、オペレーション業務や制作が大幅に効率化され始めています。またスキルの一般化により、一定の品質までは誰もが早く・大量に制作できる時代がすでに始まっています。このような時代において、我々クリエイターは「つくる」だけでなく、より広い視野と知識を用いて目標や目的をデザインするスキルが重要であると感じています。
そこで、昨年より「創造性の進化、クリエイターの新章」をクリエイターのテーマに掲げました。これは、AI時代もクリエイティブを競争力にしていくために我々クリエイターの創造性を進化させて、スキルポートフォリオを変化させていくことを意味しています。
この戦略を実現するために重要な3つのポイントをご紹介します。
1、クオリティへのこだわり
当社では社内のサービスを対象に「CyberAgent QUALITY」を定義しています。これは使い勝手やレスポンスなどのスコアリングに加え、社内の専門家レビューを通じて、市場で競争力になるレベルかどうかを示す仕組みです。その一環として、代表の藤田と共に、サイバーエージェントが目指すクオリティを現場のクリエイターと議論する場として「最高クオリティ審議会」を実施しました。今後も、市場を牽引するようなチャレンジを続けていきます。
また、AI時代において、デザインという行為をクリエイターだけに閉じず、ものづくりに携わるすべての社員がクオリティに向き合える会社を目指して、基礎デザイン教育を目的とした「Design EYE Program」もスタートする予定です。
2、採用・育成の強化
新卒採用におけるマイページ登録者数は年々増加傾向にあります。採用して終わりではなく、1人ひとりの育成環境に力を入れており、1年以内での昇格率が85%を超える結果となりました。多彩な才能を信じ、力に変える。これこそが当社クリエイターの競争力となっています。
また、年間通して数多くのイベントやインターンシップを行なっているほか、各大学との連携も強化しています。企業だからこそ補える、各大学のニーズに合わせた様々な施策を展開しています。
3、生産性の向上と生成AIの活用
私たちは、クリエイターがよりクリエイティビティを発揮できる環境を作ることを目指しています。オペレーティブなタスクの効率化の手法としては、テンプレートの整備と運用、自動化ツールの導入、アウトソーシングの活用など、様々な方法が考えられます。その中で、生産性の向上に大きく寄与する可能性があると考えているのが、生成AIの活用です。
及川和之 / 「CA Creative Center」所属、FanTech 本部クリエイティブ責任者
2024年2月に「画像生成AIガイドライン」を策定しました。サイバーエージェントでは法整備がなされた段階で正式なスタートダッシュを切れるよう、現時点で整理できる一定のラインを早い段階で示し、全社横断のガイドラインで考え方や取り扱いを規定しています。
ガイドラインでは、禁止用途の明確化、利用時の注意点、ツールやモデルの利用審査ルールの3つの軸をポイントに策定しました。ガイドラインの理解度チェック受講を必須とし、クリエイター社員の合格率は100%を達成しました。これにより、今回のガイドラインで規定している範囲においては、クリエイターが画像生成AIをリスクを回避しながら利用できる状態を作れたと言えます。
また、昨年に引き続き生成AIを用いた新卒研修を実施しました。生成AIを使用することをゴールにするのではなく、クリエイターとして求める成果に対して生成AIをどう活かすことができるかを考えながら、生成AIに触れてもらうことを目的としています。今後もクリエイターがよりクリエイティビティを発揮できる状態を目指して環境整備を進めていきます。
クリエイティブを競争力にするためのパートナー企業との取り組み
アドビ株式会社 常務執行役員 西山 正一氏
この画面はサイバーエージェントのクリエイター向け新卒研修で実施した画面の抜粋です。生成AIの運用に関する法的整備が日本では定まりきらない中、サイバーエージェントではいち早く社内ガイドラインを設け、Adobe Fireflyを安心して商用利用ができると評価し、推奨ツールとして指定しました。
サイバーエージェントとAdobeの長年にわたるコラボレーションは、ここ数年でますます加速しています。Flashを活用していた「アメーバピグ」時代から、Adobeのグローバルイベントにおける事例としての登壇など数々のAdobeイベントへの登壇。ほかにもAdobe CEO Shantanu Narayen氏、デジタルメディア事業部のプレジデントDavid Wadhwani氏との会談などトップエグゼクティブ間の意見交換も実施しています。
先日マイアミにて開催された「Adobe MAX 2024」は、例年通りAdobeの最新技術に関する多くの発表がありました。中でもFirefly Video Model(※)の発表の時には会場から一際大きな歓声が上がっており、サイバーエージェントのクリエイティブワークにおいても、大きな可能性を秘めていると期待しています。
サイバーエージェントとAdobeの取り組みには、多くの先進的なプロジェクトもあり、ツールベンダーと顧客の関係性を超えたより深いパートナーシップを築いていきたいと考えています。この協力関係を通じて、クリエイティブ業界に新たな価値をもたらし続けることを目指しています。
※安全に商用利用できるように設計され、提供が行われる初の生成AIビデオモデル
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000464.000041087.html
Figma Japan株式会社 日本カントリー・マネージャー川延 浩彰氏
2012年に設立し、2016年に「Figma」を提供してから12年。Figmaの歴史は多くのコミュニティやお客様によって支えられてきました。その中でも、サイバーエージェントは早期からFigma製品を採用し、主要事業での活用を進めてきた先駆的な企業の一つです。今ではサイバーエージェントの多くのサービスでFigmaを活用しリリースしています。
また、Amebaデザインシステム「Spindle」ではFigmaファイルを公開し、コミュニティ活動にも貢献してもらっています。今年3月のFigma Japanの2周年記念イベントでは、開発におけるユースケースとして登壇してもらい、参加者に多くのインスピレーションを与えました。
FigmaAIの主要機能の一つである「First Draft」は、プロンプトを入力するだけでキャンバス上にデザインを生成し、全体のテーマ、色、角の丸み、余白など、様々な要素を自由に調整できる機能です。その名の通り、アイデアの第一段階として十分なデザインが、専門スキルがなくても数十秒で作成できます。
現在、First Draftは既存のUIキットをベースにデザインを生成していますが、将来的には各企業独自のデザインシステム(例えば、サイバーエージェントのSpindle)をベースにしたデザイン生成も可能になるかもしれません。このようなプロジェクトの実現に向けて、今後もサイバーエージェントと緊密に連携していきたいと考えています。
不確実性が高いこの時代、クリエイターの未来を共に拡張していくイメージで、我々クリエイターの創造性を進化させ、AI時代もクリエイティブを競争力にしていきたいと思っています。
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生成AIを駆使する若手エンジニアの時代──新たなプロダクト価値に挑んだCAMとIUのケーススタディ
技術・デザイン
2024年11月12日
サイバーエージェント傘下の株式会社CAMおよびIU(※)では、生成AIの活用を軸に、若手エンジニアによるPoC(概念実証)開発を活発に行なっています。2023年4月から開始したこの取り組みは、生成AIの導入を通じた既存業務の最適化と新規プロダクトの創出を目指したものにつながりました。
本記事では、IU統括室AI戦略室とCAMのAI Unitに所属する若手エンジニアが、どのように生成AIを駆使し、短期間で実際のプロダクト開発に結びつけたのか、その取り組みを紹介します。
※ IUとはサイバーエージェント専務執行役員の飯塚勇太が管轄する、(株)CAM、(株)タップルを含めたグループ会社5社からなる組織の総称