共通テストとIQテスト (original) (raw)

2021年度の入試から「センター試験」が「大学入学共通テスト」という名称へ変わったことは進学校へ通っている生徒であれば皆が知っていることだと思います。英語に関しては教科の中で最も大きな影響を受け当初は「大学入学共通テスト(リーディング+リスニング)」と「英検等の外部試験(リーディング+リスニング+ライティング+スピーキング)」の両方が入試で用いられる予定でしたが、受験費用やライティングとスピーキング試験の公平性の問題から外部試験が無くなり、リーディングとリスニングの2技能のみが測られる試験になっています。

保護者の方や私の世代の頃の入試とは大きく異なっていて困惑されている方も多いのではないかと思います。「なぜ子供は英語を勉強しているのに共通テストの点数が上がらないのだろう」と感じている保護者の方がいるかもしれませんし、なかなか点数を上げられず悩んでいる生徒もいると思います。インターネットを検索すると英語の共通テストは「知能ゲーム」で「一定以上は点数が上がらない」、そのような怪情報もあります。

共通テストはこの4年間で70-80回分は解いたことがあります。保護者の方でもわかりやすいように日本語で共通テストの類題を作問してみました。具体的な問題例を見ながら、どのような力が求めれるか、IQと英語の共通テストの間に関連があるのかお話しようと思います。

IQ

後で共通テストとIQの関連性も話しますので先に少しだけIQテストについても触れておきます。

趣味と言う程のものでもありませんが、年に2-3回、有料・無料のIQテストを受験しています。(110-131の範囲で試験によって異なります。)

受験したものがIQを測る適切な試験かどうかわからないので私の認識が間違っているのかもしれませんが、計算力や記憶力というよりは類似点や相違点を見つける力、規則性を見つける力、論理的思考力、空間把握能力、情報処理能力、そういった要素の方が強いと感じました。

過去の入試問題

保護者の方や私の世代が固定概念として持っている英語の入試問題例をいくつか紹介します。

文法問題の出題例

( )に当てはまる語を①~④から選び記号で答えなさい。

I ( )him for 10 years.

① have been known ②have been knowing ③have known ④has known

長文問題の出題例

次の下線部を和訳しなさい。

下線部のthisの指す内容を答えなさい。

このような出題が一般的でした。『即ゼミ』や『ネクステージ』といった記号問題型の文法参考書がバイブルのようになっていましたね。センター試験から共通テストへの変化で文法問題は姿を消しました。したがって今だに即ゼミ系の教材を使っていれば教材会社との癒着を疑いますし、癒着でなく共通テストや国公立の入試対策、即ゼミを使って英語力を上げると本気でそう思っているのであれば相当トンチンカンです。個人的な感覚ですが、国公立大学の入試に関しても今このような記号形式の文法問題が出題される国公立大学はすべての国公立大学の3-5%程度でほとんどの大学では出題されません。私立大学でも60-70%程度で、関関同立では関西学院大学と立命館大学は文法問題が出題されますが、関西大学と同志社大学では文法問題は出題されません。

和訳の問題に関しても、難解は和訳を問う問題は減ってきていて和訳の問題が易化傾向にあります。純粋な和訳の問題というよりむしろ次の問題のような

「筆者が〇〇と述べる根拠を日本語で説明しなさい」

要点を捉えた上で和訳をすることができているか、複合的な力を問う問題や思考力を問う問題が増えているように感じます。

共通テスト

今回は保護者の方でもわかりやすいように、日本語で2問共通テストに似た問題を作問しています。生徒の皆さんも、保護者の皆さんも、GRITの生徒でない外部の方も一度解いてみてください。

問題①

ディベートを行う際「土曜日に授業を行うべきではない」という議題に反対するグループのオピニオン(ファクトではない)の根拠となるものを以下のA-Dから1つ選びなさい。

共通テストの難問の1つ、オピニオン/ファクト問題でその中でも難しいタイプの問題です。実際には本文に答えになる根拠が書いているのですが、受験者が引っ掛かるように本文を読むことでさらに正答することが難しくなります。

この問題のさらに難しい点が、否定語が2つ入っていてさらにわかりにくくなっています。「土曜日に授業を行うべきではないという議題に反対する」ということはつまり「土曜日に授業を行うべきだという議題に賛成する」と置き換えることができます。

今回の問題では「土曜日に授業を行うべきではないという議題に反対する(土曜日に授業を行うべきだという議題に賛成する)」で「オピニオン」となるものが正答となります。

正解・・・C

解説

まず土曜日に授業を行うべきではないという議題に反対する、つまり土曜日に授業を行うべきだという議題に賛成するステートメントを選びます。

(解説を打ち込むのが少し面倒だったので、Chatgptを使用しています。)

「土曜日に授業を行うべきではない」という議題に反対するステートメントは、土曜日に授業を行うことのメリットや、それを中止することのデメリットを強調しているものです。そのため、A,C が正解です。

A. 土曜日を休みにすることによって学力が下がったという調査結果が報告されている。

この選択肢は、土曜日に授業を行わないことで学力が下がる可能性を示しており、授業を行うべきだという立場を支持しています。

B. 土曜日に学校がなければ早起きする必要がない。

このステートメントは、土曜日に授業を行わないことで早起きが不要になるという意見です。これは「授業を行うべきではない」という立場を支持する意見であり、反対のステートメントではありません。したがって、B は議題に反対するものではなく、むしろ土曜日の授業に反対する立場を取っています。

C. 土曜日に学校がなくなっても多くの学生は自由な時間を効果的に使うことができない。

このステートメントは、土曜日に学校がない場合、学生がその時間を有効に活用できないという問題点を指摘しています。つまり、土曜日に授業を行わないことが生産的ではない、という反対の立場を支持する意見と解釈できます。

D. 土曜日に学校があれば授業時間が増え、教員の負担が増える。

このステートメントは、土曜日の授業が教員に負担をかけることを指摘しています。これは授業を行うことに対して否定的な意見なので、D も「土曜日に授業を行うべきではない」という議題を支持する立場にあります。

AからDのステートメントのオピニオンとファクトを確認します。

この設問は、土曜日に授業を行うべきではないという意見に対して反対するグループの「オピニオン」(意見)を選ぶ必要があります。オピニオンとは、個人的な見解や主張に基づいたものなので、事実(ファクト)とは異なります。以下の選択肢を見てみましょう。

AとCを比べるとAは調査結果のためファクト、Cは個人的な意見のためオピニオンとなりCが正答となります。

問題②

次の日曜日、和歌山グラウンドでサッカーの試合が開催され、ボール拾いや設営を手伝ってくれる方を探しています。(雨天の場合は和歌山体育館で行います。)また、昼食は支給されますが、交通費は支給されません。協力してくださる方は水曜日までにメールで連絡してください。

Q.1 この英文の目的は何ですか?

Q.2 この英文からわかることを答えなさい。

共通テスト大問1の告知文や案内文から情報を読み取る問題です。一見易しいと認識されている大問1で間違える学生も非常に多いです。実際にこれだけ短い日本語の問題でも、間違える方は多いのではないかと思います。

正解・・・Q.1 C Q.2 A

解説

Q.1 本文と選択肢で「日曜日」が「週末」、「サッカーの試合」が「スポーツイベント」、「グラウンド」が「屋外」、「手伝いをしてくれる人」が「ボランティア」と置き換わっています。本文で「サッカーの試合」と書いているのでAと食いつかせて間違えさせる共通テストで点数を落とさせる常套手段です。置き換えられている語に注意しつつ、要点を掴んで解かなければならない問題で、語数や使っている単語レベル以上に正答を導くのが難しいです。

Q.2

Aが正解ですが、本文では「雨の場合」、選択肢では「雨でなければ」と否定語が入ることで難しくなっています。

どのような力が必要か

今回紹介した問題を解くために必要な力とIQとの関連性ををchatgptで質問しました。

この問題を解くために必要な力は、以下のスキルです:

問題①

1. 論理的思考力
それぞれのステートメントが議題に対してどの立場を取っているのかを、論理的に考え、整理する力が必要です。具体的には、「土曜日に授業を行うべきではない」という主張に対して、どのステートメントが賛成か反対かを正しく判断する能力です。

2. 読解力
各ステートメントの内容を正確に理解し、表現されている意見や事実が何を示しているのかを把握する力が求められます。特に、ステートメントが主観的な意見か、客観的な事実かを読み取る力が重要です。

3. 批判的思考力
それぞれの意見や事実が議題にどう関連しているのかを批判的に分析し、どのステートメントが適切かを評価する力です。たとえば、「早起きが不要」という意見がどのように議題に関連するかを考える必要があります。

4. 判断力
最後に、提示された選択肢の中から最も適切なものを選び取る判断力が必要です。これは、内容を理解したうえで、それが「賛成」「反対」のどちらの立場にあるかを的確に判断する能力です。

これらの力を駆使して、問題の意図を把握し、正しい答えを導き出すことができます。

IQとの関連も質問しました。

IQ(知能指数)がこのような問題に答える能力に関係するかどうかは、ある程度の関係性があると言えますが、必ずしも決定的な要因ではありません。

IQは、論理的思考力や問題解決能力、パターン認識能力を測る指標であり、これらは論理的な問題や分析的な課題を解く際に役立つ能力です。この問いに対する解答には、論理的思考力や読解力が求められるため、IQが高い人は一般的にこのような問題に対して速く、正確に答える傾向があるかもしれません。

しかし、IQだけが問題解決能力を左右するわけではなく、次のような他の要素も重要です

教育や学習経験
論理的思考力や批判的思考力は、教育や経験によっても育まれます。適切な教育を受けた人や、こういったタイプの問題に慣れている人は、IQに関係なくうまく対応できることが多いです。

感情的・心理的要因
プレッシャーや不安があると、IQが高くても正しい答えを導くのが難しくなることがあります。逆に、冷静で落ち着いた環境であれば、よりよい判断を下しやすくなります。

思考の柔軟性
IQが高くても、柔軟な考え方ができないと、一つの視点に固執してしまうことがあります。この問いでは、複数の選択肢を批判的に評価し、どの立場を支持しているかを見極める柔軟な考え方が重要です。

結論として、IQは一定の役割を果たすかもしれませんが、問題を解くためには他にも教育、経験、思考の柔軟性などが大きく影響します。

問題②

読解力

文章の全体的な意味や目的を把握する能力が必要です。例えば、Q.1では「何のための文章か」を読み取るために、主旨や具体的な内容に注目する必要があります。

要点を見極める力

特にQ.2のように、文中の情報から特定の事実を導き出す力が求められます。本文の細かい条件(例: 雨天時の会場変更や支給される内容など)を正確に読み取る力です。

推論力

明示されていない情報や条件を推測する力です。例えば、「交通費は支給されません」と書かれている場合、「交通費は支給される」という選択肢を消去できる力が必要です。

細かい文の構造を理解する力

条件や文脈によって文の意味が変わる部分を正確に理解する力です。例えば、「雨天の場合は体育館で行う」という文を正確に理解することで、選択肢の誤りを判断できます。

選択肢を比較して正しいものを選ぶ力

問題文と選択肢を照らし合わせ、適切な答えを見つけるために、各選択肢を論理的に吟味する力が必要です。

IQとの関連も質問しました。

IQの高低がこの問題を解く力に関係するかどうかについては、一般的に次のように考えられます。

IQと読解力や論理的思考力の関係
IQは、問題解決力や論理的思考力、情報処理能力と関連することがあります。読解力や推論力もIQテストで測定されるスキルの一部です。そのため、ある程度IQが高い人は、複雑な問題をより効率的に解ける傾向があるかもしれません。

IQの直接的な影響は限定的
しかし、上記の問題は高度な認知能力を必要とするものではなく、基本的な読解力や文脈理解があれば解けるものです。したがって、特別に高いIQを持っていなくても、適切なトレーニングや経験があれば、十分に解答可能です。実際、多くの場合、語彙力や文法の知識、日常的な読書習慣が重要な役割を果たします。

学習経験と知識の方が重要
この種の問題では、特に読解力や要点をつかむ力が鍵になります。これらのスキルは、学校教育や日常の学習・読書によって養われるもので、必ずしもIQに直接依存しているわけではありません。

結論:
IQがある程度影響することは考えられますが、この問題を解くためには、むしろ読解力や文脈理解力など、日常の学習で得られるスキルがより重要です。

まとめ

ここからは私のオピニオンになります。

読書や社会的な知識を身につける映画の視聴(例:『ショーシャンクの空に』と死刑制度、『イミテーションゲーム』とAIと人類の共存 など)を塾の学習内容に取り入れるべきだとは思っていますが、反発もあるでしょうし、それが今の入試につながる可能性があると理解させることも非常に難しいです。共通テストに関してはある程度は演習で点数は上げられますが点数が伸び悩んだ場合何がボトルネックになっているか、英語力かそれ以外か仮説を立ててみてください。それを克服することも受験勉強であり知力の1つでもありますのでその過程も楽しみながら勉強できれば良いですね。