ゴミだと思った二酸化炭素が、実は可能性の塊! “趣味で地球を救う”現役東大生が考えた地球温暖化の解決策がすごい|FNNプライムオンライン (original) (raw)

「二酸化炭素集めないと損!というか日本は資源が少ないじゃないですか。でも日本も化学の力を使えばこの空気を油田に変えられる。二酸化炭素は、資源だし友達だし、僕らの味方。みんなが目の色変えて『二酸化炭素だ!二酸化炭素だ!』と言って集める世界を作りたい」

そう語るのは、炭素回収技術研究機構「CRRA(シーラ)」代表理事・機構長の村木風海氏。

10歳で二酸化炭素を減らす研究を始め、現在東京大学の学生でもある村木氏の研究が、地球温暖化を解決する技術の一つとして今注目を集めている。

中身は最先端。外見はゆるふわ。

村木氏が開発したCO2回収マシーン、その名も「ひやっしー」。

CO2回収マシーン「ひやっしー」(画像提供:CRRA)

CO2回収マシーン「ひやっしー」(画像提供:CRRA)

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スーツケースの形をしたボックスの上にかわいらしいモニターが付いている外見は、「ゆるふわ」でなんだか癒される。

しかし中身は、最先端なのだ。

ひやっしーの中には、二酸化炭素を吸い込む性質のあるアルカリ性の液体が入ったカートリッジが装着されていて、吸い込んだ空気から二酸化炭素だけをそのカートリッジに吸収し、二酸化炭素が低減された空気を外に出す仕組みになっている。

改良に改良を重ねて第4世代のひやっしーが最新版。

ひやっしー、モニターがなんともかわいいが中身は最先端

ひやっしー、モニターがなんともかわいいが中身は最先端

ーーひやっしーの開発はどこまできているのですか?

理想形を100%とするなら8割くらいまできています。性能面では理論上これ以上上げられないというところまで来ているんです。5年前の初号機は、わずか0.1%の二酸化炭素しかキャッチできず、ほとんどすり抜けていたんです。

目に見えないあの小さい分子を取ることは本当に難しかったけど、ここ5年で最大で84%まで取れるようになり、性能が840倍に。これ以上の開発は理論上難しいので、現在はお客さんが使いやすいようにアプリや電気系を改良している段階です。

ーー回収したCO2はどうなるのですか?

回収された二酸化炭素から燃料を作る研究をしています。

ひやっしーで回収した二酸化炭素を陸・海・空の乗り物やロケットなどの燃料に変換し活用しようというもので、空からガソリンを作るので「そらりん計画」。

実は、ほとんど現実になっていて、これが実現すれば、今ある設備を変更することなくすべての乗り物を動かすことが出来るそうだ。

勿論二酸化炭素は出るが、元々空気中にあった二酸化炭素から作られた燃料なのでプラスマイナス「0」。

「そらりん」で船や飛行機を動かすために、村木氏は既に1級小型船舶の免許を取得。2021年には日本半周の船の旅に出た。パイロットの訓練も最終段階にきている。

船長の格好をする村木氏

船長の格好をする村木氏

また、石油代替燃料が作れるということは、そこから金属以外の身の回りのものを何でも作れることができるそうだ。

例えば、“二酸化炭素から作った石油”からでも服が作れるということに。

「ゴミだと思ったり、敵だと思っていた二酸化炭素が、実は、可能性の塊!この世界のすべてを作るブロックみたいになっている」

2021年のCOP26では、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えることが世界目標となった。既に、1.1℃上昇しているので0.4℃で抑えなければならない。そのためにCO2の排出量を2030年までに約50%削減、さらに2050年までに実質「0」にする必要がある。いわば待ったなしの状況だ。

きっかけは、火星に行きたい!

村木氏が炭素回収の研究を始めたのは、2010年。祖父からもらったホーキング博士の著書「宇宙に秘められた謎」を読んで火星の魅力に取りつかれたのがきっかけだという。

「地球以外で人間が住める可能性が一番高いのが火星だと書いてありました。どうしたら火星に住めるんだろうと考えました。そして“火星の夕日は青い”と知り、その神秘的な光景を僕が一番最初に見たいと思って色々調べ始めたんです」

調べるうちに、火星は空気中の96%が二酸化炭素だということを知った村木氏。そこから二酸化炭素を“回収”する道を子供ながらに探し出すようになったという。

「中学2年生の時、気候工学の研究者の人が書いた本を読んで、温暖化ってこんなに大変なことになっているんだ。逆に、僕が今まで研究してきた二酸化炭素を集める研究が地球を守るために役に立つんだと気づいたんです。それからは、“地球を守り火星を拓く”というスローガンを両軸に据えて研究しています」

村木氏は、「火星に移住する」という夢を実現するために研究をしているので、話を聞いているととにかくこちらまでワクワクする。

ーーCO2を減らすには我慢が必要とついつい考えがちだが、村木氏の場合は“楽しんで”二酸化炭素を減らそうとしています。

我慢って長続きしないじゃないですか。おまけに二酸化炭素を減らすだけでは温暖化は止まらない。7年半で半分にしないといけない。半分にするには、乗り物全てを止めて2割減って、すべてのオフィス、工場すべて止めて3割減る。家と発電だけ動かす生活だけで5割減。

どう考えても無理なんです。今まで出してしまった空気中の二酸化炭素を吸ってマイナスにしないといけない。

だけど二酸化炭素を身の回りの固体に変えれば、空気中に出ることはないので確実に減らすことが出来る。生活を我慢するのではなく、豊かにしながら使い続けることが出来る。二酸化炭素で物がまわっていく世の中を作りたいんです。

ーー若い世代に困難な状況を押し付けていますが…

押し付けちゃってごめんね、とよく言われるのですが、ぼく個人としては、解決しなければならないことが山積みの今の方が化学者としてとてもワクワクするんです。

むしろ、今まで文明を築いてくれてありがとう。あとは楽しんで解決しちゃうから。という感覚。

若い世代は、誰のせいとか言っている余裕はない。もうすぐ災害が来ます、あなたは命を落とすかもしれません、だから対策してください、と台風が来る前に言われると身構えるじゃないですか?確実に自分の命が危なくなる。だから行動しなきゃ。

それがだいたいZ世代的な感覚じゃないかな。やらされているという以前に、生まれた時から危機感を肌で感じているので。

一見、楽しみながらの研究のように見えるが、村木氏の研究は12年の研究のうち10年くらい理解されなかったという。

学会でも総たたきにあい、「そんな研究意味ない」とまで言われたそうだ。しかし、村木氏の心はそんなことでは折れなかった。なぜなら村木氏の研究は趣味だからだ。好きでやっていることなので何と言われようと続けることが出来たのだ。

「趣味で地球を救ってます」とさらりと言ってのける村木氏がたまらなくかっこよかった。

そんな村木氏の研究に向かう姿勢こそ、私たち人類が温暖化解決に向かっていくヒントが隠されているように思う。

「地球を住みやすい環境に戻すことが趣味だから」

そんな気持ちで一人一人が行動を起こしたら、「1.5℃の約束」も難しいことではないと感じた。

(取材・執筆:フジテレビアナウンサー西山喜久恵)

西山喜久恵 フジテレビアナウンサー 広島県尾道市出身 1992年フジテレビ入社。94年から「きょうのわんこ」のナレーションを担当。30年目を迎える。 無類の柴犬好き‼️