謎めく魅惑のジャンル「中華実写ギャルゲー」って何? あなたの知らなくていいゲームの世界【特集】 (original) (raw)

この世にゲームがあればこそ、この世には未知のゲームが溢れる
「知る」「知らない」の二つの世界を人の心はつないでいる
人に知られなくてもゲームの面白さ、特異さは決して消えることはない
知られざるゲームたちが蘇るとき、あなたは本当にゲームの面白さを知ることができる

それが、あなたの知らなくていいゲームの世界

鬱陶しい雨と暑すぎる気温の季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回Game*Sparkでは、ゲーマーの皆様を未知の世界にご案内するために、「あなたの知らなくていいゲームの世界」と銘打った特集記事をスタートします。

記念すべき第1回は、「中華実写ギャルゲー」 です。

さあ、あなたの知らなくていい世界に足を踏み入れる準備はできましたか?準備ができたなら、未知の世界に旅立つことにいたしましょう。

「中華実写ギャルゲー」とは?その歴史を軽くおさらい

「実写ギャルゲー」……その歴史は日本においては1990年代後半、CD-ROMの採用でゲームの容量が大幅に増えて写真や動画を扱えるようになった、「プレイステーション」などの「第5世代」のハードが登場した頃にいくつか登場し、一部は強烈な存在感を示しつつも歴史の闇に消えていったジャンルです。

しかしながら、2010年代に入りブロードバンドが普及。ネット配信でさまざまな動画コンテンツが増える中、「実写ムービーを繋げることでゲームを作ることができるのではないか?」という、ある意味で80年代LDゲームに似た発想のゲームが世界各地で登場しました。日本国内でも『ルートレター Last Answer』(2018年)、『デスカムトゥルー』(2020年)や、『春ゆきてレトロチカ』(2022年)といった実写アドベンチャーゲームが登場しています。

そんな中、中国で2018年に登場した実写ギャルゲーが、『サマースウィートハート(旧称:女神駕到~Happy Together~)』です。実写でグラマーなコスプレイヤーを採用して、彼女の好感度を高めていく……という内容は、Steamのユーザーレビューで「ほぼ不評」だったゲーム性はともかく多くのユーザーに強い印象を残しました。

本作はニンテンドースイッチにも移植されており、やはりこちらも多くの日本のユーザーに衝撃を与えていましたが、日本ファルコムのタイトルからBGMを無断で利用したことも問題となりました。

いずれにせよ『サマースウィートハート』や同時期に登場したいくつかの中華発の実写ギャルゲーは「成功した」とは言いがたく、「やはり実写ギャルゲーは地雷なのか……」と、しばらくは忘れられた存在となっていました。しかしながら、この傾向に変化が現れたのは2023年です。

ドラマを見るかのように楽しめる中華ギャルゲーの成功作『しまった!美人に囲まれた!』

「実写ギャルゲーは地雷」という評判を乗り越えることに成功したのが、2023年の中国発の実写ギャルゲー『しまった!美人に囲まれた!(原題:Love is All Around)』です。

ある朝、目覚めると見知らぬ家で、裸Yシャツの美女と共に目を覚ました画家見習いの主人公。

事情をよく掴めぬまま、新たに現れる美女……どうやら主人公たちは、泥酔していたところをとある美女に保護されていたようです。

本作とこれまでの中華ギャルゲーの違いと言えば「ドラマ性が一気に増した」ということでしょう。先述した『サマースウィートハート』は、主人公を鍛えてお気に入りの美女とデートを繰り返す『ときめきメモリアル』型のゲームでしたが、本作『しまった!美人に囲まれた!』は、ムービーでストーリーが進行しながら時折現れる選択肢でヒロインの好感度を高めていく……という、(テキストで語られる部分がすべてムービーになっているという点を除けば)一般的なノベルゲームの進行に近い形になっています。このおかげで、プレイヤーはまるでドラマを見るかのように、本作を「観ること」ができるのです。

膨大な借金を抱えながら画家を目指すという主人公のバックボーンと、彼を取り巻く美女たちの関係も細かく描かれており、ただのお色気ゲームに終わることなくしっかりした物語が構築されているのも特徴です。

ゲーム的なウィークポイントを少し上げると、チャプター終了時にヒロイン全員の好感度の合計が一定に達していないと先の章に進むことができない点でしょうか。

しかしながら本作ではいつでも進行フローチャートを確認でき、どのルートを通っていないのかが一目瞭然です。こうして選択肢とチャートを埋めていくのも楽しみのひとつです。

何はともあれ、「ドラマを観るかのように楽しめる気楽なアドベンチャーゲーム」なので、中華実写ギャルゲーの進化を感じるには最適な一品です。

現在も増加中の「中華実写ギャルゲー」フォロワーたち

『しまった!美人に囲まれた!』のヒット以降、2024年には多くの「中華実写ギャルゲー」のフォロワーが現れました。例えば2024年3月に登場し、Steamユーザーレビューで「圧倒的に好評」を獲得している『君、勉強を邪魔しないでください』はその一例といえます。

プレイヤーは女子学園の唯一の男子生徒となり(それなんてエロゲ?)、さまざまな女の子と知り合っていきます。

多くの謎を秘めた個性的な少女・リンヤーやクッキー作りが大好きな典型的な美少女・ミドリ、ロシア人留学生のニコなど、多くのヒロインがストーリー展開に従って登場します。

選択肢によるヒロインの好感度要素ももちろんあり。本作はかなり好感度が上がりやすくなっているので、ストレスは少ないです。

居眠りしている主人公の妄想……という設定で、セクシーなシーンが見られたりも。

「どこの『ToLoveる』の保健教師だよ!?」と思うような、セクシーな保健の先生も登場します。ゲーム内で「血圧が高い」と言われますが、こんなのを見せつけられたら当たり前かと……。

なお「中華実写ギャルゲー」全般的な傾向として、セクシーな服装や姿勢、ソフトなキスは登場しますが、ヌードや性的描写は一切ない……というポイントが挙げられます。これを「安心して遊べる」と思うか「残念だ」と思うかはプレイヤー次第でしょう。

何はともあれ、本作はヒロインたちの個性も非常に強く、またゲームシステムについてもシナリオチャートが充実しており、ストーリーを進めるのに好感度の制限もない……と、本作『君、勉強を邪魔しないでください』は先述の『しまった!美人に囲まれた!』の正統進化なゲームと言えるでしょう。おススメです。

それ以外にも、「中華実写ギャルゲー」のフォロワー作品は多数あります。この記事で全てを紹介するわけにはいきませんが、筆者が注目したタイトルは『我和美女有個約会(Try & Love)』です。

本作は主人公が取った1週間の休暇の間に、人気配信者、学生時代の先生、わがままな幼馴染、同級生で今はバツイチの女医とデートをし、彼女たちのうちの誰かと縁を結ぶことを目指すゲームです。

何とは言わないけれど、配信者のはち切れそうな圧がすごい。

ちょっと年いってるけど、元生徒と先生の禁断の恋っていいよね……(筆者は熟年好き)。

それはともかく、本作は7日間を何度も繰り返して目標の女性と結ばれることを目指すゲームで、今まで紹介してきた中華実写ギャルゲーと比べるとミニマルなゲームになります。また、日本語訳のクオリティはお世辞には高いと言いがたく、ゲームシステム的にもセーブデータがひとつしか作れない、ルート分岐の気軽なやり直しができない……など、不便な点も多いです。

それでも本作『我和美女有個約会(Try & Love)』を紹介したいのは、「主人公の親友とのBL(ボーイズラブ)ルートがある」という、他の中華実写ギャルゲーにない特徴があるからです。はたしてギャルゲー(健全)を求める層にBLの需要があるのかどうかは謎ですが、世の中の多様性の流れにいち早く対応した作品といえるでしょう。


さて、ここまでお送りしてきました「あなたの知らなくていいゲームの世界」第1回・中華実写ギャルゲー編、いかがでしたでしょうか?再び知らなくていいゲームの世界への扉が開いたとき、またお会いしましょう。