道化と笏杖 - 白水社 (original) (raw)
〈道化〉とは何者か、その元型と機能を探る
中世の愚者文学、シェイクスピア劇から20世紀の映画まで、秩序と混沌の間に立つ〈道化〉の正体を解き明かす。
山口昌男「道化と幻想絵画」他(単行本初収録)を併録。
〈異貌の人文学〉第2シリーズ開幕。
道化論の決定版、待望の復刊
〈道化〉とは何か。秩序と混沌、賢と愚、正気と狂気のはざまに立ち、愚行によって世界を転倒させ、祝祭化する存在。ある時はお調子者のトリックスターとして、ある時は賢なる愚者として、あるいはスケープゴート(犠牲)として、〈道化〉は大きな役割を果たしてきた。
本書は、中世民衆の祝祭や宮廷道化、ルネッサンスの愚者文学、シェイクスピア劇から、北米インディアンの儀礼道化、サーカスのクラウン、映画の喜劇王チャップリンやキートンまで、元型的存在としての〈道化〉の系譜を辿り、境界を侵犯・超越するその機能を脱領域的に解き明かす、1960年代〈知性の夏〉が生んだ道化論の決定版である。〈道化の文化史〉を絵解きする貴重な図版多数。100頁に及ぶ「訳注をかねたフール小事典」に、特別付録として、本書に逸早く注目した山口昌男の記念碑的エッセー「道化と幻想絵画」(単行本初収録)他を追加収録。
「1960年代後半、「魂の心理学」に人文科学全体が総力戦で当たった人文学栄光の刹那の、アプローチの自在、選ばれる対象の脱領域ぶり……両面における極致である」(高山宏)。「愉しい知的遊戯に満ち満ちている本」(山口昌男)
[目次]
『道化と笏杖』に寄せて イーニッド・ウェルズフォード
序論
第一部 フールとそのショー
第一章 幻影としてのフール
第二章 フールの基本的特性
第三章 フールとミメーシス
第二部 愚行のパターン
第四章 フールの恒久性
第五章 原始的・魔術的存在としてのフール
第六章 秩序と混沌とフール
第七章 フールと「善」と「悪」
第八章 フール、境界、中心
第三部 フールと王国
第九章 王、英雄そしてフール
第十章 フールと女
第十一章 愚行の悲劇的次元――『ハムレット』
第十二章 愚行の喜劇的次元――バスター・キートンの『キートン将軍』
第十三章 至上者たるフール――『リア王』
第十四章 愚行共和国と聖なるフール
原注
*
訳注をかねたフール小事典
道化と幻想絵画 山口昌男
ウィリアム・ウィルフォード『道化と笏杖』書評 山口昌男
あとがきにかえて 高山宏
あらためてマサオ・ヤマグチ! 高山宏
索引
[原題]The Fool and His Scepter: A Study in Clowns and Jesters and Their Audience
[著者略歴]
ウィリアム・ウィルフォード William Willeford
1929年、ミシガン州デトロイト生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で修士号取得後、チューリッヒに移り、C・G・ユング・インスティチュートで分析心理学を学び、セラピストの免状を取得。チューリッヒ大学で博士号取得。サナトリウムやクリニックで心理療法活動に従事した後、シアトルのワシントン大学英文学・比較文学科の教授となる。著書に道化論の画期作『道化と笏杖』(1969)、『感情、想像力、自己――母子関係の変容』(88)。心理学雑誌に多数の論文を発表。
[訳者略歴]
高山 宏(たかやま・ひろし)
1947年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、大妻女子大学比較文化学部教授。翻訳家。著書に 『アリス狩り』 『目の中の劇場』『メデューサの知』(青土社)、『殺す・集める・読む』(東京創元社)、『近代文化史入門』(講談社)、『風神の袋』『雷神の撥』(羽鳥書店)、訳書にコリー『パラドクシア・エピデミカ』、シューエル『ノンセンスの領域』『オルフェウスの声』(白水社)、バルトルシャイティス『アナモルフォーズ』(国書刊行会)、シャーマ『レンブラントの目』(河出書房新社)、キャロル『不思議の国のアリス』(亜紀書房)他多数。
*略歴は刊行時のものです