内言語とは?「気持ちの発達」を考える前に「思考の発達」をおさえよう! (original) (raw)
内言語の発達を理解して支援に役立てよう
赤ちゃんがことばを話し始めるのは大体1歳くらいからです。
ことばを話すためには様々な力を獲得する必要があります。
「口を動かす筋力」だけではありません。
「理解する力」などの目には見えない力が重要になってくるのです。
・相手が何をしてくれる人なのか?
・やり取りとはどのようなものなのか?
・いまどのような状況なのか?
理解とは単語の理解だけではありません。
自分を取り巻く物事を肌で感じて経験して身につけていくということです。
子ども自身が理解を深めて、考える力をつけていくことが大切なのです
そもそも「考える力」をつけるためには「ことば」の獲得がポイントとなってきます。
ことばを使って物事を考えられるからです。
これを「内言語(ないげんご)」とよびます。
今回は「内言語」という声にはならないけれど、頭の中で使われる力の発達について紹介します。
内言語とは?
「内言語(ないげんご)」ということばを知っていますか?
聞きなれない言葉だと思います。
ことばの土台となる力のことです。
内言語
声に出さずに頭の中で物事を考えるときにつかう「ことば」のこと。
ことば(言語)を獲得していない段階では、考えるとき「ことば」を使っていないといえる。
「ことば」を使わずに物事を考えるのは結構大変です。
ex. たとえば、リンゴを思い浮かべるとき
◆「ことば」を使って考える場合
⇒「リンゴ」ということばを思い浮かべるだけでOK
◆「ことば」を使わない場合
⇒複数の情報を映像(経験)として思い出す必要がある
・赤くて丸いリンゴを思い浮かべる
・外が赤いのに中は白いことを思い出す
・食べておいしかった経験を思い出す
・口に入れて冷たかった経験を思い出す
こんなに!
「ことば」をつかえばひとつの単語だけ思い浮かべればよいのです!
これが「ことば」は便利だと言われる理由のひとつです。
ことばを使って考える?
「ことばを使って考える」って?
当たり前のことじゃないの?
そう思われるかもしれません。
しかし、これは高度な能力なのです。
ポイント!
・ことばを使って考えること=内言語(ないげんご)
・抽象的な事柄も「ことば」として一つにまとめることができる
・頭の中で自分に語りかけることができる
・結果的に物事を楽に考えられるようになる
頭の中で使われる「ことば」
私たちは、普段から無意識でことばを使ってものを考えています。
考えているときには口には出しませんが、頭の中ではことばが行きかっています。
ex.
今日はコンビニに寄って、新商品のパンを買って行こう。職場に着いたら機能の書類をまとめないと。あれ?先輩から頼まれた仕事がまだ終わってなかったな。どうしよう。どっちを先にやろう・・・あの人怖いしな・・・でもな・・・
この内容をことばを使わずに考えるのは難しいです。
映像で考えることもできます。
しかし、時間がかかるし、細かい箇所まで映像として表せないことも出てくるでしょう。
ですので、ことばを使うと考えることがスムーズにいくのです。
考えること(思考)には、必ず「ことば」がまとわりついてきます。
思考とは?
思考とは考えることです。
詳しく見てみると次の通り。
思考
①思いめぐらせること
広義:人の知的作用の総称。
狭義:感性や意欲の作用と区別して、概念・判断・推理・悟性的・理性的な作用
②考えているときの心の心的過程
ある課題の解決に関与する心的操作
広辞苑 第七版(岩波書店)より
内言語は生まれつき持っているのものではない
ことばを話せていたとしても、獲得したばかりのころはまだ上手く使えません。
よく小さい子が「この車を持って・・・お母さんに見せよう・・・」とひとりで喋りながら行動していることがあります。
これは、まだ、頭の中だけで「ことば」を使って考えることがうまくいかず、口から洩れてしまっている状態なのです(音声になってはいますが)。
これ自体、発達の流れの一つなので悪いことではありません。
では内言語を獲得する流れを見る前に、ことばの役割について確認しましょう。
ことばの役割とは?
ことばには様々な役割があります。どんな時に使うものなのでしょうか?
○ コミュニケーションの道具
⇒ ことばを使ってやり取りしながら交流していきます。また、自分の気持ちや状態を相手に伝えるときにも使うことができます。
○ 楽しむための道具
⇒私たちは、歌を歌ったり、本を読んだりして楽しむことができます。その際、ことばは必要となります。詩も同様です。
◎ 考えるための道具
⇒前途したように、ことばをつかって物事を考えるということです。ことばは様々な状況をひとまとめにできる性質を持ちます。リンゴは「赤くて」「甘くて」「硬くて」・・・というのをまとめて「リンゴ」というひとつの単語で表すことができます。それによって、考えるスピードが速くなります。
それでは内言語を獲得するまでの流れをみていきましょう。
内言語の発達の流れ
「ことば」を使って考えることが「内言語」ということが分かりました。
ではいつごろから内言語をご使えるようになるのでしょうか?
ざっくりいうと次のようになります。
生後~小学校低学年
(内言語が獲得されるまでの時期)
生活をしていく中で繰り返されることが記憶に残り知識となります。
自分の中で、その知識を整理するのです。
これを「生活の知識マップ」と呼びます。
このマップを自分の中に持つようになるのがこの時期です。
このマップを作り上げる過程で、本人なりに「ことば」で考えるようになります。
そのことばが「内言語」となっていくのです。
小学校中学年~大学卒業位まで
(内言語が高次化される時期)
成長の過程で様々な困難と出会います。
「どうすれば、私の理想とする結果になるのか?」
そう考えながら解決方法を模索していくことで思考は高まっていきます。
内言語は「高次化」(レベルアップ)していきます。
「知識マップ」も、今まで出会ったことのないようなものに対処できるような柔軟性のあるものへと作り替えられていきます。
内言語の発達段階
もう少し細かく見ていきましょう。
内言語は大人になってからも活用していきます。
一生をかけて発達する力なのです。
※ジアース教育新社/坂口しおり著 『コミュニケーション発達支援シリーズ 絵で見ることばと思考の発達』P.9~10より
上記のように、「内言語」は、生涯をかけて育って行くものなのです。
内言語を育てるという視点
ことばを話すためには「理解すること」が必要です。
しかし、1つのことを理解したら1つ音声となる、というものではありません。
ある程度、自分の中に理解しているものが溜めていく必要があります。
子どもが突然たくさん話し始めるようになる時期があるのはそのためです。
理解しているものを「相手に伝えたい!」という思いがあって、はじめて、音声という「ことば」として表出されます。
「伝えたい!」という思いが湧いてくるような支援が必要となってくるのです。
まとめとして
今回は「内言語」の発達について説明しました。
ことばを使ってものごとを考えるようになれば、さらに多くの知識や複雑な概念などを身につけられるようになってきます。
障害児支援において、「気持ち」の面ばかりみるのではなく「内言語」や「思考」にも着目していくと子どもの評価に深みが出ます。
よかったら参考にしてみてくださいね。
参考文献
次回は「考える力(思考)の発達とは②」です。
0歳からの発達の流れをみていきます。
参考文献