金田一京助と日本語の近代 - 平凡社 (original) (raw)

金田一京助と日本語の近代

金田一京助と日本語の近代

安田 敏朗
シリーズ・巻次 平凡社新書 432
出版年月 2008/08
ISBN 9784582854329
Cコード・NDCコード 0281 NDC 810.25
判型・ページ数 新書 288ページ
在庫 現在品切中
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この本の内容

目次

金田一京助は、戦後の新しい日本語の編成をどのような論理で主導していったのか? 帝国大学言語学の呪縛、天皇への傾倒、アイヌへの視線など、偉人の知られざる側面を明らかにする。 わが国の代表的な国語学者・言語学者であり、
文化勲章受章者という像が支配的な金田一京助。
だが実は、敗戦による自己反省なきままに温存された
国語学の宿痾を一身に体現する人物でもある。
同郷の石川啄木にたいする無償の援助をはじめ、
美談に彩られたそのイノセントな人物像の陰には、
日本語を考える際に看過できない問題が存在する。
金田一京助の内在的論理を実証的に追いながら、
近代日本語成立に潜む力学を浮き彫りにする。

はじめに

第一章 問題のありか――「イノセント」であること
略歴と業績/アイヌとの関係/金田一京助像の形成/文化勲章受章/貧乏物語/邪心のなさ/思いこみのつよさ/収奪としてのアイヌ研究/再生産される金田一像/排除される「身体」/金田一批判のゆくえ/「イノセント」であること

第二章 アイヌ語との出会い――日本帝国大学言語学の射程
1「日本帝国大学言語学」の射程――上田万年から金田一京助へ
比較言語学の政治性/比較言語学の科学性/歴史言語学への傾斜/科学としてのアイヌ語学
2「日本帝国大学言語学」の展開――語族から類型へ
『新言語学』翻訳まで/石川啄木と『新言語学』/言語類型博物館としての帝国日本/拓殖博覧会による救済/金田一京助にとっての拓殖博覧会/日本帝国大学言語学から帝都言語学へ/博物館としての帝国日本/歴史言語学の限界と記述言語学

第三章 「言語」論とその展開――戦前・戦中の議論を軸に
1「言語」の定義をめぐって――ソシュール・パウル・『国語音韻論』
『国語音韻論』の刊行/小林英夫の書評/「言語」へのドグマ/ソシュールとの類似/パウルと科学/文化科学としての言語学
2 音声と音韻と
用と体・音声と音韻/日本での音韻論
3 音韻論の展開
日本諸学振興委員会/「大東亜新秩序の建設と国語学」――独自概念としての「音韻」/「言霊をめぐりて」――言霊とソシュールと/「文字と言語」――漢字かなまじり文の肯定/「国語・国字問題」――海外普及と簡易化と/「大東亜建設と国語問題」――表記論の集成

第四章 歴史認識・社会論――敗戦直後の議論を軸に
1「父よ あなたは強かった」――「おほきみ」をめぐる記憶の捏造
『朝日新聞』への投稿/「おほきみ」の問題/『沃野』、そして『錦木抄』へ/「おほきみ」を一九四六年に詠んだことにしたいわけ/折口信夫の書簡/天皇崇拝
2「文明と野蛮」
登別・一九四五秋/天皇親政への郷愁
3 金田一と天皇制
石川啄木との関連――「伝統」から/「円心」としての天皇/山川均と天皇制/山川均と漢字廃止論/ローマ字と革命

第五章 あらたな国語を求めて(一)――現代かなづかいをめぐって
1 現代かなづかいの制定
敗戦後の表記論/国語審議会/かなづかいに関する主査委員会/「国語改正案」と「日本語当面の問題」と/「日本は何故漢字が廃されぬか」/利用される天皇の権威/勅語はやさしくなったのか/かなづかいへの立場/「現代かなづかい」とその擁護
2「現代かなづかい」論争
小泉信三との応答/福田恒存との論争――不毛なやりとり/国語審議会の混乱

第六章 あらたな国語を求めて(二)――標準語論と敬語論をめぐって
1 標準語論
戦前の議論――「共同語」をめぐって/敗戦後の議論/「方言は保存すべきか」/
「標準語の制定」/「標準語私議」/「標準語のために」/ふたつの「標準語のために」/第二期国語審議会標準語部会/「良識」の権力/報告「標準語のために」
2 敬語論
敬語の存在意義/女性語観/敬語という作法/作法としての「これからの敬語」/「これからの敬語」と皇室敬語/民主主義の名を借りた敬語存続論/『日本の敬語』

おわりに

あとがき
参考・引用文献
関連年表