食通のラム肉好きたちから「聖地」と称される羊肉の専門店が楽園すぎた【丸焼き】 (original) (raw)
「羊肉の達人」たち御用達のお店
ラム肉、マトン肉……羊肉にもいろいろありますが、どれもそれぞれおいしい、と筆者は思うのです。
独特な香りと風味から、好き嫌いが分かれるという話も聞きますが、おいしい羊肉はおいしい。みんな、本当においしい羊肉を食べれば羊肉を好きになるのは間違いないと思うのです。
最近は日本でも、羊肉が食べられる店が増えてきました。
そのなかでも今回は、ネーミングからして羊肉愛あふれる団体・羊齧協会(ひつじかじりきょうかい)の方々が、足繁く通う店を紹介しましょう。
ちなみに、羊齧協会とは「羊食文化を通した消費者コミュニティを創造する」をモットーに、消費者のための消費者による羊肉をひたすら楽しむ団体。
まさに日夜、各地の羊肉を食べ歩いている羊肉のエキスパートともいえる方々なのです。
今回おうかがいした上野の「中国料理 喜羊門(きようもん)」は、その羊齧協会の方々が何度もパーティを開いているというお店。
それは間違いない! と行ってみたところ、間違いないどころか最高すぎて「ここは楽園か……」となってしまったことをご報告します。
「中国料理 喜羊門」が入っているビルは、上野駅から徒歩5分ほど。新しくきれいな建物です。
羊と兎の丸焼きが看板メニュー
4階でエレベーターを降りると、そこはもう中国。ゴージャス感に溢れています。
そう、ここは中国東北部の料理を中心とした中国料理店なのです。
さらには、普通の中国料理店とは一味違う、羊と兎の丸焼きを中心とした店なのです。
オーナーの寧(ネイ)さんは、中国東北部の遼寧省(りょうねいしょう)の出身。
「中国料理 喜羊門」はオープンして4年。おいしさとお手頃な価格、きれいでおしゃれな内装、とあれば人気が出るのは当然で、今では毎日満席の賑わいです。
ネイさん:お客様が入りきれなくなっちゃったので、去年9月に2号店もオープンしました。
そうなのです。この本店からわずか徒歩2分くらいの場所に「中国料理 喜羊門 上野店」もあるのです。お出かけの際はお間違えのないようにお気をつけください。
──こちらは中国東北料理のお店ですよね。中国東北部では羊肉をよく食べるのでしょうか?
ネイさん:そうですね。羊はよく食べます。他に豚と牛も食べますが、この3種類の肉のなかで日本では羊肉が一番珍しいので、中国東北部の羊料理を紹介しようと思いました。
広々として、明るくきれいな店内。換気もしっかりしているので、肉を焼いても服の匂いはあまり気になりません。
大迫力の羊の背中焼き
今回のメイン料理は羊の背中焼きと羊足の丸焼き。
▲羊の背中焼き(2〜3人前・4,104円)
まずは、羊の背中焼きがテーブルに運ばれてきました。
表面はある程度焼かれた状態です。
2〜3人前とは思えないほどのボリューム。
こちらの店の羊肉はすべて、生後およそ12ヵ月以下の子羊の肉、ラム肉です。
テーブルの焼き網の上で、クルクル回しながら炙っていきます。
まさに、背骨です。
丸焼きだけなら他の店にもありますが、この店のおいしさの秘訣は厳選された肉質としっかりとした下ごしらえにあります。
──羊肉へのこだわりを教えてください。
ネイさん:肉質がよく、一般的な部位だけでなく、いろいろな希少部位も仕入れられることから、オーストラリア産のものを使っています。
──秘伝のタレで漬け込んでいると聞きました。
ネイさん:はい。店のオリジナルのタレで24時間漬け込んでます。これで羊肉の臭みがなくなります。醤油の他、パクチー、八角、ローレル、しょうがなどいろいろ入っています。
さらに表面をこんがり焼いていきます。
店員さんが切り分けてくれます。
切り分けられた肉は、下の網の上でさらに焼きます。
テーブルには喜羊門特製のスパイスが置いてありました。
ネイさん:唐辛子、クミン、ごま、ピーナッツ、大豆などいろいろブレンドした香ばしいスパイスです。アレルギーのある方は注意してくださいね。
肉はジュージューとおいしそうな音を立てながら焼かれていきます。
肉の焼き上がりを待ちつつ、スパイスとタレをスタンバイします。
お肉が焼けるにつれ、脂が滴り落ちて、食欲をそそります。
見事なラムチョップが焼きあがりました。
この背中焼き、2〜3人前と書いてありますが、ラムチョップは6〜7本は取れます。
ガブリ。とかぶりつくのが、もちろん一番おいしい食べ方です。
柔らかく質の良いラム肉が、タレでの漬け込みによってさらに柔らかく、そして羊の香りは残しつつ、深みのある旨味が引き出されています。
肉のジューシーな焼き加減も最高です。
この特製スパイスをつけると、 香ばしさが増してさらにおいしいです。
羊肉の魅力を、無類の羊肉好きの方に訊いてみた
さて、今回は前述した羊齧協会のメンバーの方、2名がいらしています。
羊肉が大好きで、羊料理にも詳しいお二方にお話をうかがってみました。
まずは、北海道出身のKさんから。
──まず、羊肉との出会いから教えてください。
Kさん:私は北海道出身なので、私にとって羊肉は好きっていうよりも普通の肉ですね。普段のバーベキューがジンギスカンで、お花見もジンギスカンです。もちろん家には羊を焼くためのジンギスカン鍋があります。
──そんな環境で育ったら、東京に来てから物足りなかったりしませんでしたか?
Kさん:東京に来たら近くのスーパーで松尾ジンギスカン(北海道で有名なタレ漬けのラム肉)とニュージーランドのラムチョップを売っていたので、それを時々買って食べてました。
こちらは、神奈川県出身のNさん。
Nさん:私は世界一周に行ってるんですけど、そこで初めて羊を食べました。ヨルダンで、羊の頭を煮てヨーグルトを掛けた料理を。
──羊の頭にヨーグルト! それは最初からすごいものを!
Kさん:マンサフ?
Nさん:う〜ん? マンサフは頭じゃないけど、近いかな(注:マンサフは伝統的なヨルダン料理。発酵させた乾燥ヨーグルトのソースで羊肉を煮込んだもの)。あとは世界のいろいろなところへ行くと、みんな羊をよく食べるので。
──そうですね。ヨーロッパでもアジアでも、南米でも結構食べますよね。
Nさん:そうですね。アルゼンチンの南のウシュアイアってところで、アルゼンチン自体は牛肉が有名なんです。ウシュアイアって南極行きの船が発着するところなんですが、潮風が吹くおかげで草に塩分が含まれていて、それを羊が食べているので羊がおいしいんです。
モン・サン・ミシェル(フランス西海岸の島。潮の干満の差が大きいことで知られる)と同じことだと思います。そこで羊の丸焼き食べて、すごくおいしくて、「羊、いいな」と思いました。
──一番好きな羊料理って何でしょう。
Kさん:一番は決められません。子供の頃から食べてるのはジンギスカンなんですけど、世界各国色々な料理があるので、それを探して食べるのが楽しいです。ヨーロッパ系だと煮込みとかローストとか、あとカレーもおいしいですし、餃子もおいしいですし、中央アジアのプロフ(※肉、玉ねぎ、人参、米を大釜で炒めたあとに炊いた料理)もおいしいし、なんでもおいしいです(笑)。
Nさん:最近一番好きなのはラムビリヤニです。この前、南インドに行ったんですが、ラムビリヤニを食べてみたら、やはりすごくおいしくて。
羊もも肉の丸焼き
さて、背中焼きを食べ尽くすとすかさず羊もも肉の丸焼きが運ばれてきました。
▲羊もも肉の丸焼き(3〜4人前・5,184円)
こちらもしっかりと下ごしらえがしてあります。
調味料液に漬け込まれ、熱が通りやすいよう切れ目が入れられ、表面を軽く焼いた状態で運ばれてきます。
目の前で表面を炙った後、一度厨房へ下げられていきます。
このように食べやすい大きさに切り分けられて戻ってきました。
後は、焼肉の要領で思う存分焼くだけです。
火が通っているかどうかは店員さんが逐次チェックしてくれます。
タイミングの良いところで店員さんが切り分けてくれます。切り方を知っていれば、セルフでもOK。
骨のまわりが、またおいしいのです。
いろいろな部位を、残さずしっかり焼いて食べます。
良い頃合いに焼きあがったら、
今度は食べやすいサイズに切り分けていただきましょう。
──羊齧協会の方々は、この店によく来るんですよね?
Kさん&Nさん:はい! なにかとよく来ますね。貸切パーティもやりましたし、それ以外でもよく来ます。おいしいし、きれいで入りやすいので誰を連れてきても喜ばれます。
衝撃! 羊の「あの部分」とは
ここで、新しい羊肉が運ばれてきました。
▲羊の睾丸焼き(1,296円)
──睾丸ってどんな味なんでしょう?
ネイさん:さっぱりしていますよ。食べやすいと思います。
確かに、言われないとタン塩かな、と思いそうな見た目です。
これも焼いていただきます。
中までしっかり火を通していただきます。
ネイさん:本当は、睾丸のまわりに脂肪がついたままのものの方がジューシーでおいしいんです。でも、それだと鮮度が落ちやすいせいか、業者さんにないと言われて、どうしても仕入れることができなくて。
予約していただければ、睾丸と脂肪を交互に串焼きにしたものを作っておきますよ。そのまま焼いて一緒にいただくと、とてもおいしいんです。
質の良い羊肉は臭くない
そのまま、焼いた睾丸はコキュッという歯応えがあって、普通の羊肉の部位と比べるとまったく匂いがなく、とてもさっぱりしています。見た目と同じくタン塩に近い感じでしょうか。誰でも好き嫌いなく食べられると思います。
これに脂肪の旨味が加わるとさらにおいしいに違いありません。
──羊肉は独特の匂いがあって、苦手な人はそれを「臭い」っていうのですが、羊肉好きさんとしては、あれは「臭い」と思うものなんですか?
Nさん:あまり思わないですね。おいしい羊なら気になりません。
Kさん:もちろん個人的には臭みがない方が好きですが、マトンの臭みはカレーにするとむしろいいと思います。あと、冷凍のドリップの臭みは嫌ですね。
質の良い羊肉の匂いは、臭く感じないことがほとんどだし、臭みがあるものもそれ自体が“味”とも言えそうです。
羊肉に苦手意識のある方は、羊好きさんの推薦するおいしい店で食べてみれば目から鱗が落ちるのではないでしょうか?
さて、今回は焼肉中心でいただきましたが、喜羊門には羊の様々な部位を使った料理が種類豊富にありますよ。
お得なコース料理は3種類で、1名3,456円〜。それぞれ4名から注文できます。
ネイさん:コースは8名様以上なら2コースに分けて頼んでいただけます。そうすると料理の種類が倍になりますので、いろいろな料理を召し上がっていただけますよ。
2コース頼むと、料理14〜15種類とデザートがいただけます。
めくるめく羊料理の世界が楽しめる、羊も喜ぶ喜羊門。ぜひ通いつめてメニュー全種類制覇してみたいものです。
お店情報
中国料理 喜羊門(きようもん)
住所:東京都文京区湯島3-38-11 エスパス上野広小路 4F
電話番号03-3834-6667
営業時間:ランチ11:00~15:00、ディナー17:00~23:30(LO23:00)
定休日:年中無休
書いた人:工藤真衣子
カメラマン。美しい人が好きなのでグラビア、音楽が好きなのでライブ写真、映画やドラマが好きなのでスチール写真、美味しい食べ物が好きなのでグルメ写真。雑誌、WEBなど各メディアで活動中。趣味は美味しい料理を作って食べること。子供写真スタジオ「アトリーチェ」の経営もしております。