スパイスの組み合わせで世界が広がる「ラムチョップスパイス炒め」を週末の一皿に【ツジメシの週末メシ】 (original) (raw)

こんにちは。プロダクトデザイナーときどき料理人、ツジメシこと辻村哲也です。「ツジメシの日常メシと週末メシ」シリーズ、今回は、年末年始の集まりにも週末のご馳走にもお勧めしたい一皿。

フライパンで焼いたラムチョップとスパイス類、フライドオニオン、パン粉などを炒め合わせて、香ばしいサクサクと一緒にラム肉を食べるという趣向です。

図のA~Dで使うスパイスや食材によって表情が変わります。まずはインドの肉料理に使われるスパイス類をいろいろ使った、リッチな香りのものをご紹介します。

スパイスなんてそんなに持ってないよ、という方も、最小限赤唐辛子とクミンシードだけでも美味しく作れます。そのほかスパイスの組み合わせによる様々な各国風のバリエーションの話は後半にありますので、どうぞ最後までお付き合いください。

ツジメシの「ラムチョップスパイス炒め」(インド風スパイスバージョン)

材料(作りやすい量:メインなら1人分)

ホールスパイス

パウダースパイス

ここで使うホールスパイスはこんなメンバー。種類はあるものだけでもいいですし、煮込んだりしてそのまま全て食べてしまうわけではないので量も厳密でなくて大丈夫です。写真のシナモンはインド料理で使われる厚みのあるカシア、ベイリーフもインドのものですが、手に入りやすいセイロンシナモン、ローレルでももちろんOK。

作り方

ラムチョップは水気を拭き、塩をまぶして30分ほど常温におきます。
ニンニクはつぶして粗みじん切りに、生姜は細切りにしておきます。

フライパンにサラダ油を中火で熱し、ラムチョップを焼きます。
骨の外側に脂がついていたら、最初に立てて焼いて脂を落とします。

その後両面を焼いて、表面にこんがり焼き色が付き、トングなどで押してほどよい弾力があるようになったら取り出します。焼き加減は、トングで触ってみて、生肉の粘土のような触感からよく焼いて火が入ってゴムのような触感に変わっていく間のグラデーションの中で好みのところを探ります。

個人的には、ラムはあまりレアよりミディアムレアからさらにウェルダン寄りの、ややピンク色が残っているくらい、噛みしめたときにざっくり歯が入っていく感じが好きです。

ラムは表面がこんがりカリッと焼けて触った感じ弾力が増していれば、だいたい美味しく食べられます。ただ、楊枝などで中まで火が通ったかは確認してくださいね。

ラムを取り出したフライパンに残った油が多ければ、大さじ1程度を残してぺーパーで拭き取ります。そこにホールスパイスをすべて入れ、中火で混ぜながら油に香りを移します。クミンシードやカルダモンがやや膨らんでくるくらいが目安です。焦がさないように気をつけましょう。

ニンニクと生姜を入れさらに香りを出したらパウダースパイスと塩を加え、

さらにフライドオニオンとパン粉を加えて炒めます(ここでカシューナッツを入れてもさらに食感が加わって美味しいです)。

全体がカリカリになってきたら、

ラムチョップをフライパンに戻し、赤唐辛子も加えてざっくり炒め合わせ、肉が温まったあたりで火を止めます。

ここでは辛みのカイエンペッパーを使っていることもあり、赤唐辛子は香りと彩りで最後に加えました。最初のホールスパイスのタイミングで入れると色は黒くなりますが、さらに香りと辛みが引き立ちます。そのへんはお好みで。

器に盛り、パクチーを散らしたら出来上がり。

ラム肉に、周りの香りのよいカリカリをまぶしながらお召し上がりください。

様々なスパイスの香りを纏ったカリカリザクザクしたフライドオニオンやパン粉の食感とラムの香りの組み合わせ、そして肉を噛みしめる満足感は、この手間をかける価値があります。

お酒を合わせるなら、あまり重すぎない赤ワインなんてよさそうです。
見栄えも味も華やかで美味しいこの一皿。人の集まるとき、週末のお疲れさまにいかがでしょうか。

<ご注意>
硬いホールスパイス(シナモン、八角、ベイリーフ)は食べられません。盛り付け時に端のほうによけておくとよいですね。クローブとカルダモンはちょっと個性が強烈なので、食べられなくもないですが、これもよけておくのが無難です。クミンやコリアンダーシード、黒胡椒は食べても大丈夫、というかプチプチザクザクカリカリの食感が楽しいので(ほどほどに)食べるのを推奨です。

スパイスは組み合わせで個性が生まれる

世界各地で使われているスパイス、実は多くのものは共通していて、組み合わせでその国らしさ、その料理らしさが生まれていることが多いようです。例えば八角とシナモンというといかにも中国や台湾あたりを思い出す香りで、クミンと唐辛子というと流行りのガチ中華、中国東北部方面のイメージがありますが、これらはどれもインド料理でごく普通に使われているスパイス。もちろんその土地固有ののスパイスもありますが、ベースになるのは一般的なスパイスのことが多く、その組み合わせが個性を生んでいるように思います。

ということで、「ラムチョップスパイス炒め」の、各国風のスパイスの組み合わせでのバリエーションをいくつかご紹介します。

この図のA~Dを変えることでがらっと雰囲気が変わります。

中国東北部・ウイグル風

A ホールスパイス:クミンシード(たっぷり)
B 香味食材:ニンニクみじん切り
C パウダースパイス:粗挽き赤唐辛子(あればあまり辛くないものをたっぷり)
D オプション:なし

スパイスはクミンと赤唐辛子だけのシンプル版。中国東北部料理のガチ中華店にある羊串焼きの感じです。それがカリカリです。そんなの間違いないです。

中国/台湾風(シンプルバージョン)

A ホールスパイス:赤唐辛子、シナモン、八角
B 香味食材:ニンニクみじん切り
C パウダースパイス:なし
D オプション:なし

中国風のシンプルタイプ。シナモンと八角、肉の煮込み料理に使うようなスパイスがふんわり香ります。赤唐辛子は最初に加えて、黒く辛く香り高くしましょう。

中国風(ホール五香)

A ホールスパイス:クローブ、シナモン、フェンネル、花椒、八角、赤唐辛子
B 香味食材:ニンニク、生姜(どちらもみじん切り)
C パウダースパイス:なし
D オプション:なし

中国のミックススパイス、五香粉に使われているスパイスをホールで。今回の例で使ったインド風とけっこう共通しているのに(さらにインドのガラムマサラにフェンネルを使うこともありますし)、このちょっとした違いで「ザ・中国」な香りになるのがスパイスの面白いところです。

上の2つも含め、フライドオニオンは手に入れば台湾などの揚げエシャロット「油葱酥」を使うとさらにそれっぽくなります。

南インド風

A ホールスパイス:マスタードシード、赤唐辛子、フェンネル、(あれば生カレーリーフ)
B 香味食材:ニンニク、生姜みじん切り
C パウダースパイス:カイエンペッパー、ターメリック
D オプション:カシューナッツ、ココナッツファイン

Aのホールスパイスは油に最初にマスタードシードだけを入れ、パチパチと弾けてきたら他のものも加え、すぐにBの工程へ進みます(マスタードシードはある程度温度が上がらないと弾けないが、フェンネルは焦げやすいため)。カシューナッツとココナッツファイン、肉にフェンネルというのも特徴的です。ココナッツファインでザクザク食感が出るので、パン粉はなくてもいいかもしれません。

北アフリカ・中東風

A ホールスパイス:クミン、コリアンダー
B 香味食材:ニンニクみじん切り
C パウダースパイス:カイエンペッパー
D オプション:ゴマ、ナッツ類(アーモンド、クルミ、ピーナッツなどを粗く刻む)

アラブ諸国で愛されているミックス調味料「デュカ」風な組み合わせ。ふんわり香るスパイスとザクザク食感のナッツ類、ラム肉の組み合わせはばっちりです。

さて、ここまで読んでいただいた方に、最後に一番簡単なバージョンも。
「ホールスパイスなし、パウダーのところに羊肉に合いそうなお好みの市販ミックススパイスを使う」です。ラムも焼肉用のカットとかで大丈夫です。

いやでもラムチョップとかホールスパイスごろごろ入ってるのってなんかかっこいいじゃないですか!
ぜひいろいろお試しください。