Houzzツアー:木製サッシとルームテラスで生き返った築48年の郊外団地 (original) (raw)
自然豊かな環境に馴染む木製のサッシと半屋外のルームテラスがもたらす心地よさ。 UR都市機構が若手建築家と生みだした未来の団地の風景。
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité internationale des arts)にて滞在研究。 http://www.naomishibata.com/
Houzzコントリビューター。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、建築雑誌「エーアンドユー」編集部、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonik勤務(文化庁新進芸術家海外研修制度)を経て、以降、編集デザイン・キュレーションを中心に国内外で活動。2015年パリ国際芸術会館(Cité... もっと見る
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高度成長期に日本中に建てられたたくさんの団地が、数十年たち、新しい局面を迎えている。建て替えが進む団地も少なくないが、一方で、全面的なリノベーションによって建物を活用するケースも出てきている。東京都足立区にある花畑団地は、約22ha(東京ドーム約4.7個分)の広大な敷地に最も多いときは80棟(2,725戸)の住棟がゆったりと立ち並んでいた、都内でも最大級の大規模団地。
改修された住棟は花畑団地27号棟で、3K(46平方メートル)の10戸における内部プランと色彩等外壁デザイン、それに周辺の屋外空間を提案するというデザインコンペにより実現した。
「既存の建物を団地の豊かな自然環境と連続した立体的なランドスケープの一部と捉えて、建具を使って、そのランドスケープの上に多様性に溢れた新たな生活の場を生み出すことを考えました。」とデザイン監修を担当した、建築家の藤田雄介さん(Camp Design inc.)が言うように、この提案の鍵は、木製のサッシ。
外部に面した窓も室内の居室にも木製引戸が使われ、内部から外部までがゆるやかにつながり、木が持つ柔らかい雰囲気が温かみのある室内空間を生みだす。
もう1つのポイントはルームテラス。これも外部と内部をつなぐ半屋外スペースで、その名前のとおり、部屋(内部)とテラス(外部)のちょうど中間のようなフレキシビリティをもつ。机と椅子を置いて、ワーキングスペースのように使ったり、植物を置いて庭のようにしたり。内部プランのリノベーションなので、もともと居室だったところがルームテラスになっていて、外部から丸見えになってしまうテラスとは違い、3面は壁で囲まれている心地よさも。
南に面した日当りの良さは団地ならでは。奥行きのあるルームテラスは、空中にある土間のよう。
こだわりの木製サッシは新潟県加茂市で作られている。気密性はアルミと同等程度で、断熱性・耐風性はアルミ以上で、JIS規格もクリアし、さらに工芸品のような繊細さを持つと、藤田さんも信頼を寄せる。実際のところ、使用できる建材の品質基準は厳しく、建具以外はURの標準設計仕様に基づいているが、まるで違うように見えるのは、木のサッシや木のつまみを使用するなど、使い手が気持ちよく過ごせるような細かい配慮があるから。
断熱性が高い木製サッシはエネルギー効率にも貢献。南に面して並行に並んで建てることが基本原則であった団地は、オープンスペースが確保され、日当りが良い。サッシが取り払われたルームテラスは風の通りや室内の明るさをより良くし、自然を感じながら暮らすことができる。
入居が始まった1964年(昭和39年)から47年が経過した2012年、周辺の緑が育ち、豊かな居住環境になった一方、建物の老朽化や、居住者に占める高齢者が約4割と推定されるなど当初の居住者像も大きく変化していることを受けて、花畑団地の管理団体のUR都市機構は、「団地再生事業(一部建替えや改修)」を始めた。①一部住棟を取り壊し、商業施設や、高齢者や子育て世帯などが利用する拠点施設の誘致を図る、②継続して活用するUR賃貸住宅は、屋内外の改修工事により市場ニーズに合わせた住まいを提供する、といった取り組みの一環として、住棟改修等による団地の新しい住まい方の提案を求めたデザインコンペ「UR団地再生デザインコンペ」を実施。最優秀案をもとに実際に改修されるとあって、若手建築家や学生から407点の応募があり、厳正な審査のもと、藤田さんの案が最優秀賞に選ばれた。
決まった施主がいたわけではないが、子育て中の若い世代やアクティブシニア向けを想定した提案。そして、これが77万戸を保有するUR都市機構の団地再生の新しいプロトタイプになることを目指している。2014年4月から入居が始まり、現在、30代後半の夫婦、30代の独身女性などが入居し満室であるというのが、この提案が現代の生活スタイルに受け入れられたという証だろう。
デザイン監修|藤田雄介 / Camp Design inc. 建築|独立行政法人都市再生機構東日本賃貸住宅本部 実施設計|山設計工房 施工|江州建設
外に出たような、まだ室内のような、不思議な空間。屋根があるので少しの雨なら濡れないので洗濯物干しにも良いし、屋外のように日差しが強くないので外の空気を感じながらの読書も良いかも。
右が居室をテラスに変えたルームテラス。閉め切っていると別の部屋があるように見える。
断熱基準を満たすための工事も行ったため、壁厚は250mm。住人によっては、この厚みを小さな窓辺のカウンターのように使ったり。
クローゼットの取手には、工芸作家の西本良太さんのつまみを使用。取手を気にするということは、手触りから空間の印象が変わる、とは藤田さんのコメント。
外装も塗り直された花畑団地27号棟。通常、居住者がいるので、一棟全体を一気にリノベーションするのは難しいとのこと。
各階に2戸の5階建てには、ルームテラスの位置が違う4タイプの部屋がある。3Kだった間取りは1LDK+ルームテラスへ。
教えてHouzz
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