1ヶ月連続ランクイン曲の指標構成を踏まえた、ビルボードジャパンへのチャートポリシー変更再提案 (original) (raw)

最新8月14日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、AKB48「恋 詰んじゃった」が48→19位に上昇しています。

4週連続で50位以内にランクインしていることから「恋 詰んじゃった」をロングヒットと捉えることも可能かもしれませんが、CHART insightからみえてくるものがあります。

AKB48「恋 詰んじゃった」

ビルボードジャパンソングチャートにおける直近4週分の動向>

※CHART insightの説明

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

[チャート構成比について]

最新週における指標毎のポイント構成

(CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)

・7月24日公開分 3位 (フィジカルセールス 411,100枚)

・7月31日公開分 23位 (フィジカルセールス 37,400枚)

・8月7日公開分 48位 (フィジカルセールス 23,542枚)

・8月14日公開分 19位 (フィジカルセールス 45,560枚)

CHART insightは3月のリニューアルに伴い円グラフが最新週ではなく累計でのポイント構成比を示しているとのことですが、現時点でも最新週のそれを示しているものと捉えています。

AKB48「恋 詰んじゃった」はデジタル初加算週となる7月3日公開分でダウンロードおよび動画再生が、フィジカルセールス初加算週となる7月24日公開分でダウンロードが100位未満ながら300位圏内となり加点されていますが、フィジカルセールス指標加算以降は動画再生やストリーミングといった接触指標群が加点されていません。フィジカルセールスの比重が大きく、また最新週では当該指標のみで総合19位に上昇しています。

AKB48が2024年にリリースしたフィジカルシングルの表題曲がビルボードジャパンソングチャートで好調に推移していることについては、7月31日公開分の動向を踏まえて一度紹介しています。

一方でAKB48の前作「カラコンウインク」はフィジカルセールス指標加算3週目にフィジカルセールス13,424枚となり、総合ソングチャートでは前週の23位から100位圏外に後退しています。その後二度に渡りトップ20内に返り咲くものの不連続であり、今回の「恋 詰んじゃった」における4週連続トップ50入りはAKB48のみならずアイドルやダンスボーカルグループ全体においても特筆すべき点といえるでしょう。

しかしながらこの4週の指標構成において、ライト層の支持がより大きく反映されるストリーミングや動画再生といった接触指標群が300位以内に達せず加点されていない「恋 詰んじゃった」の動向を踏まえるに、AKB48はコアファンの熱量の持続がロングヒットにつながっていると捉えることが可能です。

フィジカルセールスの高位置安定から想起したのはKing & Prince「ツキヨミ」でした。メンバーの脱退が発表された直後のリリース曲ということもありフィジカルセールスは4週目に10万枚を再度突破するのですが、当時デジタル未解禁ながら動画再生指標が好調に推移した点からはライト層の接触行動も生まれていたと捉えていいかもしれません。ゆえにAKB48「恋 詰んじゃった」のロングヒットとは似て非なるものといえます。

このブログでは社会的ヒットに成るためにロングヒットが重要と紹介し、フィジカルセールス指標加算2週目の動向をチェックする必要があるとして【前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む】というエントリーを毎週用意していますが、4週目まで順調に推移しているように映るAKB48「恋 詰んじゃった」はその順位面から社会的ヒットに近づきつつあると捉えられかねません。

これはビルボードジャパンがフィジカルセールスの指標化時に行う係数処理が影響しているものと考えており、ビルボードジャパンが議論することを願う意味で今年度上半期ソングチャートの分析エントリーを再掲します。ビルボードジャパンの記事にてNumber_i「GOAT」がフィジカルセールス自体は11位ながら指標化の際に19位となっていたことが判明し、その違和感を踏まえて提示した解決案です。

ビルボードジャパンは2017年度以降フィジカルセールス指標にて、週間セールスが一定の枚数を超えた場合にその超過分に係数処理を施す形を採るようになりました(そのハードルは当初30万枚、現在では5万枚前後と推測されますがビルボードジャパンは数値を明らかにしていません)。一方で、昨日のエントリーでも記したように最近は一部歌手でフィジカルリリースから数週後にフィジカル販売施策を採ることが目立っています。

(中略)

しかし現在のチャートポリシーでは週間単位で一定枚数を上回ったフィジカルセールスに対し係数処理を行う一方、フィジカルリリースから数週後のフィジカル販売施策でセールスが急増した曲に対しては係数処理が施されません。この施策で上昇した曲は他指標が伴わず、ライト層やグレーゾーンとの乖離を生んでいる(コアファンの追加購入を施策の主体としている)以上、真の社会的ヒットとは呼び難いと考えます。

ただ、このようなフィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっているのでは (中略)。この仮説が正しいならば、一定の売上枚数を超えた曲についてはその週以降、一定枚数を超えなくとも毎週の売上に係数処理を施すことが必要ではないかと考え、ビルボードジャパンにチャートポリシー(集計方法)の議論を希望します。

仮にこの提案が叶った場合、「ツキヨミ」のような現象も生まれにくくなるかもしれません。ただしフィジカルセールス指標以外も盛り上がることで(デジタル解禁していれば尚の事)、社会的ヒットに近づくだろうと考えます。