King & Princeのデジタル先行リリース、そしてジュニアのデジタル配信(の必要性)について (original) (raw)

King & Princeのニューアルバム、そのリリーススケジュールが興味深いのです。

12月11日はあくまでフィジカルのリリース日であり、ダウンロードおよびストリーミングは10月14日月曜に先行解禁されます。

STARTO ENTERTAINMENT所属歌手で、アルバムにてフィジカルに先駆けてデジタルをリリースすることは珍しいといえるのですが、King & Prince側にはコアファンはデジタル先行でもフィジカルを購入するという見立てがあるのかもしれません。尤もこのようなスタンスが採れるのはKing & Princeがエージェント契約ゆえなのかもしれませんが、結果次第では事務所の今後のリリース方式にも影響を及ぼすと考えます。

King & Princeのニューアルバム『Re:ERA』からは今週月曜、リード曲「WOW」が先行解禁。上記動画は"Re:ERA beginning" ver.と称していますが、フルバージョンにて登場しています。ソングライターに三浦大知さんを起用し(メンバーの髙橋海人さんも共作)、三浦さんの数々の作品に参加するUTAさんもクレジット。三浦さんらしいポジティブな、ゴスペルを思わせる世界観が反映されています。

今やSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手とそのライバルに成り得る歌手のテレビでの共演は珍しくなくなりましたが、三浦大知さんの起用(振り付けも担当とのこと)からは新たなフェーズの突入を感じています。元King & Princeのメンバーから成るNumber_iが初のフルアルバムをリリースしたばかりですが、その3名によるヒップホップ(を主体とした)アプローチとはまた違う音楽の突き詰め方であり、双方の作品を興味深く感じます。

さて、今回のKing & Princeのリリーススケジュールから、"フィジカルの位置付けが変わるかもしれない"と考える自分がいます。

海外ではフィジカルリリースが遅れることが多く、もっといえばフィジカルを出さないことも少なくありません。その中で、たとえば米ビルボードアルバムチャートではテイラー・スウィフトK-POP歌手のアルバムにて初週フィジカルセールスの多さが目立つのですが、これはコアファンの複数種購入がデフォルトになってきているため。ここから"コアファンがフィジカルを買う"こと(およびそれを踏まえた施策)が見て取れます。

(ちなみに海外ではCDショップが多くないこともあってか、米アルバムチャートでは歌手の公式ホームページにおけるフィジカルセールスも売上に組み込まれます。そう考えれば、Number_iをはじめとするTOBE所属歌手のフィジカルが販路を限定しているのは海外的だと捉えることもできるでしょう。)

"コアファンがフィジカルを買う"から想起したのが、"CDデビュー"という言葉でした。特にアイドルやダンスボーカルグループにおいて用いられる表現ですが(その対比としてデジタルオンリーの形での"プレデビュー"も存在)、そのCDデビューについて採り上げた以前のエントリーではこのように記しています。Aぇ! groupが「《A》BEGINNING」リリースの際に"CDデビュー"と謳ったことが記載のきっかけとなっています。

今回のエントリー冒頭にて紹介したAぇ! groupの場合は、所属している旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)が未だ配信に明るくない姿勢を見せていること、またこれまでジュニア(旧ジャニーズ事務所Jr.)という位置で活動していた方がデビューする際にはCDという形でのデビューが当たり前だったことから、CDデビューという表現が使われ続けてきたと捉えることが可能です。

ただ、旧ジャニーズ事務所初代社長による性加害問題の発覚を機に、特にNHKが事務所との強固な関係を解消し(現在でもその状況が続いています)、ジュニアがCDデビュー前の曲を発信する機会は少なくなっています。その最たる例が『ザ少年倶楽部』の終了です。所属事務所が今後もデジタルに明るくない姿勢を続けるならば、ジュニア期の楽曲を配信することを検討していいのではと思うのです。

ただしこれはあくまでCDというビジネスモデルやCDの価値がより高いという前提、CDデビューこそ重要という概念の下で成り立つことでもあるかもしれません。

STARTO ENTERTAINMENTのジュニアの中でも高い人気を誇っていたHiHi Jetsの髙橋優斗さんが、先月末で組織を離れています。その最終在籍日にグループの名を冠したオリジナル曲のライブパフォーマンス動画が公開され、ブログ執筆時点にて40万を超える再生回数を記録しています。

STARTO ENTERTAINMENTのジュニアとデビュー組を分けるのはCDリリースという差ですが、ジュニアで辞めた方の作品は映像盤としては残るものの音源として手に入れることは今も叶わない状態です。その点において、先程の引用部分で述べたようにデジタル配信を行うというのは、コアファンの救いに成り得るという意味でも、そして組織全体のデジタルへの意識を高めるという意味でも、検討していいのではと感じています。

King & Princeのアルバムリリースにおけるデジタル先行/フィジカル後発という施策から、上記の考えが思い浮かんだ次第です。絵空事などと言われればそれまでですが、検討する余地はあるのではと感じています。