銀色の月 - 岩波書店 (original) (raw)

作家の影として暮らした日々の苦しみと,夫の光を浴びて生きた悦びを鮮やかにつづった,追想のエッセイ.

銀色の月

「残されたこの〈私なるもの〉は何だったのか…….亡き夫を鏡にして私を照らし出せば,ぼんやりとでも自分の姿が映るのではないか」.小川国夫という「太陽」が没した後,ぽつんと宙に残った「月」としての私.作家の影として暮らした日々の苦しみと,夫の光を浴びて生きた悦びを鮮やかにつづった,追想のエッセイ.第七回小島信夫文学賞・特別賞受賞.

■著者からのメッセージ
誰にでも,自分が何者なのかを知りたくなる時が来ます.
作家であり夫であった小川国夫という人を亡くし,独り暮らしとなった今,私は永い年月を共に暮らした夫の姿と向かい合い,彼を鏡として自分を映し出してみようと思い立ちました.
本書に綴った折々の出来事は,懐かしさと共に,多くの苦しみや悲しみを私に想い出させました.しかし不思議なことに,ペンを手に振り返った瞬間,すべての現実は一瞬にして虚構(フィクション)となり,悲しみの代償として,書く喜びを与えてくれたのです.
私はいつの間にか虚構の世界に漂い,楽しみながら,夜空に浮かぶ月のような「私なるもの」を書き終えていました.

小川 恵

裸足の少女
美しい人びと
空港
かげろう
銀色の月
私のパリ
二丁目のこおろぎ
シモオさん
蚊帳のなか
重い靴音
旅する原稿
ペディキュア
ふたり
編集者群像
呼吸する産衣
来訪者
続・二丁目のこおろぎ
最後の一葉
あとがき

小川 恵(おがわ けい)
本名・小川綏子(おがわやすこ).1933年11月18日,長崎県佐世保市生まれ.1957年11月,同年に『アポロンの島』を出版した小川国夫と結婚.2008年4月に他界した夫との別離後に執筆された本書が初めての著作となる.

書評情報

東京新聞(夕刊) 2012年9月6日
しんぶん赤旗 2012年9月3日
読売新聞(朝刊) 2012年8月17日
東京新聞(朝刊) 2012年8月5日
週刊文春 2012年7月26日号
朝日新聞(朝刊) 2012年7月15日
静岡新聞(夕刊) 2012年6月29日