温泉マニアは、湯船の底から湧いてくる「足元湧出」温泉が一番好き<2020> |じゃらんニュース (original) (raw)

2020.10.10

ひとり旅はもちろん、ひとりカラオケ・ひとり焼肉など最近では「おひとりさま」も楽しめることが増えてきていますね。でも「ひとり〇〇を経験してみたいけど、どう楽しんだらいいかわからない」そんな方もいると思います。

そこで温泉オタクの永井千晴さんに“ひとり温泉旅行”の楽しみ方を教えていただきました!永井さんは、ひとり温泉旅行に関する書籍も進行中とのこと(詳細は発売が見えてきたら告知します!)。

毎月、連載で少しずつ“ひとり温泉”を楽しむヒントをお伝えしていけたらと思います。

※この記事は2020年10月7日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。

記事配信:じゃらんニュース

全国各地の温泉を巡ってきましたが、一番好きな湯といえば、まっさきに「足元湧出(あしもとゆうしゅつ)」を思い浮かべます。全国でも希少で、それをめがけてわざわざ足を伸ばす温泉ファンがたくさんいるのです。

足元湧出はその名前の通り、足元から湧いている温泉のこと。湯船の底からぷくぷくと湧いていて、「生まれたて」の状態で浸かれます。その新鮮さがもう、たまらない。私はもう、ぶっちぎりで足元湧出が一番だと思っています。

さらに足元湧出は比較的ぬるい温度のため、長時間の入浴に向いているので、ひとり旅にもぴったり。時間を気にせず、好きなだけじっくり温泉に浸かりたい旅行におすすめなのです。

本記事では、足元湧出の魅力や、おすすめの温泉について書いていきます。

私が足元湧出をたまらなく好きな理由

いい温泉かどうかを測る際、「鮮度」はとても重要です。なぜなら温泉は、湧いた瞬間から酸化していくものだから。においや肌触り、浴感、温度が、湧いてから少しずつ変化していきます。

その変化は、一概に「劣化」とは言いきれないのですが、新鮮で生まれたての状態が、やっぱり一番“ナマ”で“濃厚”。繊細な個性は、酸化によって失われてしまう可能性もあります。だから、温泉の個性をはっきりと感じたいのであれば、やはり鮮度がいいに限ります(個人の感想です)。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

例えば鉄分の濃い温泉は、空気に触れると茶色く濁っていきます。色湯になって見た目が美しくなるという点では、酸化も悪くないのかもしれません(例:伊香保温泉)

湧いた瞬間の温泉が、湯船に満ちているーー「足元湧出」は、鮮度が一番いい状態の温泉なのです。さらに言えば、

・湧出場所の真上に湯船を作れるという地形的な奇跡
・湧出する温泉がちょうど浸かりやすい温度になっている奇跡

この2つが重なってようやく足元湧出は成立するもの。だからこそ希少価値が高く、すばらしく感じるのだと考えています。

私が初めて出会った足元湧出、鹿児島県・湯川内温泉

私が初めて足元湧出に出会ったのが、鹿児島県出水市の山奥にある一軒宿・湯川内温泉でした。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

宿の離れにある湯小屋

暑い五月のことで、日帰り入浴でさらっと浸かる予定でした。……しかしもう、どのくらい居座ってしまったことやら。数時間は確実に浸かってしまっていました。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

私が初めて浸かった、足元湧出の温泉

驚いたのはその透明度。ガラスのようで、無重力のような心地。とろけた木造湯船。ごろごろした岩底から湯玉がぷくりと浮いてきます。どっぷり体を沈めて、37~8度のぬる湯に一時間。体にはアワがぴちぴちと付き、つるつる肌を滑るなめらかさがパーフェクトでした。

レビューサイトでも「国内ナンバーワンの単純泉」「完璧な湯」と評価される湯川内温泉。その感動と衝撃は、どんな色湯も、どんなにおいの強い温泉も霞みました。無色透明でもこんなに個性的な温泉があるのか、と……!

ぬるくて一生浸かれそうな温度は、暑い時期の温泉旅行にぴったり。湯川内温泉をきっかけに、足元湧出とぬるい温泉が大好きになったのでした。

私の推し足元湧出温泉

足元湧出は、湯川内温泉だけではありません。

有名どころでいうと、丸駒温泉旅館(北海道)、鉛温泉藤三旅館(岩手)、乳頭温泉郷鶴の湯(秋田)、赤倉温泉湯守の宿三之亟(山形)、法師温泉長寿館(群馬)、下部温泉源泉館(山梨)、壁湯温泉旅館福元屋(大分)などが挙げられます。川底から湧くワイルドな野天だと、川湯温泉仙人風呂(和歌山)や、湯原温泉郷砂湯(岡山)も人気です。

私の推しは、青森県の奥入瀬近くに位置する一軒宿、蔦温泉。平安時代から続く歴史深い宿で、公式サイトでは「源泉湧き流し」と称するすばらしい温泉が湧いています。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

私の推し宿、蔦温泉!

足元から湧く温泉は、芒硝のにおいがしてとっても個性的。「泉響の湯」という湯船は天井が高く、まさに温泉の湧く音が響くような至極の癒やし空間が作られています。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

この湯のためだけに、また青森へ行きたい

足元湧出はその湯船が希少なゆえに、混浴である宿も多いのですが、蔦温泉はきっちり別浴。時間を気にせず、女性も美しい湯場でじっくり楽しめるのが魅力です。

また、東京からの行きやすさでいえば、法師温泉長寿館(群馬)がおすすめ。国の登録有形文化財に指定されている趣深い宿です。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

夏もいいけど、雪景色の法師温泉は情緒たっぷりで最高ですよ…!

有名な映画のロケ地にもなった美しい湯場「法師乃湯」は、さまざまなテレビや雑誌で取り上げられています。基本混浴ですが、宿泊者限定で2時間だけ女性のみで浸かれる時間が設けられています。ぷくぷくと湧く温泉は足元湧出の中では熱めで、冬でもじっくり温まれそう。

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

温泉ファンのあこがれ湯、法師温泉の「法師乃湯」

温泉オタクは「足元湧出」温泉が一番好き

女性におすすめできる理由は、この「長寿乃湯」にあり

終日女性専用の「長寿乃湯」は、「法師乃湯」と同じ温泉が足元から湧いているので、こちらでゆっくり浸かるのがおすすめ。

足元湧出は、温泉の価値観をがらりと変える

「どの温泉がいいか悪いかわからない」「温泉の違いがわからない」という声をちらほら聞きます。そんな方はぜひ一度、足元湧出をめがけて温泉旅行をしてみてください。におい、肌触り、浴感、いままでと全く違うはず。生まれたての鮮度抜群の温泉は、温泉の価値観をがらりと変えてくれます。

永井千晴(ながち)

永井千晴(ながち)
温泉オタクな会社員。訪れた温泉は400超。普段はCHOCOLATE Inc.でプロデュース業をしています。元じゃらん編集部員。
Twitterアカウント @onsen_nagachi

永井千晴(ながち) 永井千晴(ながち)

温泉オタクな会社員。訪れた温泉は約500。元じゃらん編集部員。 Twitterアカウント @onsen_nagachi