潜在意識を変え、眠れる能力を起こすための「スーパーブレイントレーニング」 (original) (raw)

脳から変えるNo.1社員教育』(西田一見著、現代書林)の著者は、ビジネスメンタルトレーナーとして数多くの企業で社員教育を行ってきた人物。企業のみならず、スポーツ選手、芸能人、受験生などをメンタル面からサポートしているそうです。

著者がサポートの際に活用しているのが「SBT(スーパーブレイントレーニング)」。人の脳をコントロールすることによって目標達成に導く手法で、まず「脳を変える」というところからスタートするのだとか。

脳を変えると、誰でも面白いほど能力を発揮してしまいます。しかも、脳を変えるのは、それほど難しいことではありません。物事に対する脳の受け止め方を、ほんのちょっと変えるだけで、劇的に効果をもたらします。そして、自ら目標を立てて動いていく、意欲的な人物になるのです。(「はじめに」より)

第2章「脳から変えるNo.1社員教育 基礎編」から、要点を抜き出してみたいと思います。

潜在能力を発揮している人は全体の5%

「成功を信じて行動すれば、人間は必ず成功する」と著者は言い切りますが、ただし実際に成功する人はほんのひと握り。現実に能力を発揮している人は、本当に成功すると思っている人で、全体の5%程度。残りの95%は、成功を信じて行動できていない人だといいます。

そもそも「成功する人、天才と呼ばれる人は頭がよく、凡人は頭が悪いから成功できない」と考えがちですが、著者はそういう考え方を「まったく違う」と切り捨てています。そして、成功できない人は「頭がよすぎる」のだとも。なぜなら頭がよい人は、余計なことまで考えすぎてしまい、潜在意識のなかで枠をつくるから。それがマイナス感情となった結果、思考も体調も行動もマイナスになるわけです。

しかも脳は、潜在意識の記憶データを活用しているのだとか。潜在意識の中には、過去に見たもの、聞いたもの、思ったこと(感情)、口に出したこと、イメージしたものなど、さまざまな記憶が蓄積されているといいます。そこで、マイナスの感情から思ったこと、口に出したこと、イメージしたものなどは潜在意識にはっきり刻み込まれ、行動に影響を与えてしまうわけです。成功を信じて行動できなくなるのはそのせい。

SBTは「成功のためのプログラム」

そうだとすれば気になるのは、「マイナス思考となった脳をプラス思考に変えるためにはどうしたらいいのか」ということ。著者によればその答えが、「大脳生理学と心理学に基づいた成功のためのプログラム」であるSBTにあるのだそうです。

脳細胞の数や性質、仕組みは誰でもみな同じで、個人の能力差の原因は潜在意識などの心理面。つまり、それらを意図的にコントロールするのがSBTだということ。

ところで、こういう場合によく用いられるメンタルトレーニングは、「気合いを入れる」といったテクニックが中心です。もともと素質や能力がある人の能力を引き出すための心理的な手法によるものが大きいので、「いまある力を本番で発揮するための手段」であるということです。

しかし、メンタルトレーニングで目標を設定し、成功している姿をイメージするだけでは、モチベーションが充分に上がらなくても当然。また成功のためには人間的な成長が不可欠ですが、心理的手法では内面を変えることは困難です。

そこで重要な意味を持つのが、脳の領域に踏み込み、普段から脳を最高の状態にし、潜在能力を発揮させること。だからこそ、ブレイントレーニングでいまある能力を引き上げ、メンタルトレーニングで能力を最大限に発揮するという両面のトレーニング方であるSBTが大きな役割を果たすというわけです。(63ページより)

成功するために必要な「優越の錯覚」

SBTのポイントは、人間の脳に「優越の感覚」を起こさせること。これは、「自分は平均よりも優れている」と思う心理的錯覚のことだそうです。逆に、「自分は平均よりも劣っている」と思う心理的錯覚は「劣等の錯覚」。

優越の錯覚をした脳には不快の感情が発生せず、いやなことや苦しいことを楽しむ余裕が出てくるといいます。しかし劣等の錯覚をした脳からは、どんどん不快の感情が生み出されていくことに。つまり、肯定的な感情を持つことが重要なのです。とはいえ、それは簡単なことではありません。マイナスの脳をプラスの脳にするためには、どうしたらいいのでしょうか?

劣等の錯覚に陥っている人に共通するのは、「自己肯定感」が低いこと。しかし自己肯定感が低くなる原因を取り除くことは、それほど難しくないと著者はいいます。いちばんの方法は、どんなことでも前向きな表現に変えてしまうこと。自己肯定感を意図的に高くすることで、扁桃核から快の感情が発生し、脳が優越の錯覚に変換されていくのだそうです。(67ページより)

潜在意識を変え、眠っている能力を起こす

人間は、自分が思っている以上のことができる能力を持っているもの。劣等の錯覚に陥っている人は、自分が思っている能力だけで判断し、「できない」「無理」と思っているだけにすぎないというわけです。そして、その眠っている能力を起こすカギとなるのがSBT。重要なポイントは、潜在意識との向き合い方だといいます。

人間の脳は潜在意識のなかにある記憶データを活用していますが、その量は膨大で、人間はその記憶に支配されているといっても過言ではないとか。そこで眠っている能力を起こすためには、この潜在意識を変えるのが最も早いという考え方。

潜在意識のなかにある記憶データは、右脳のイメージで記憶されているそうです。だとすれば、右脳をコントロールすればいいということ。右脳は感情を伴った記憶ほど忘れず、マイナスの感情を伴ったときの方が覚えているものなのだといいます。

そこで、すぐに「できる」「大丈夫」と捉え、いわれたことはすぐやる、逃げない、返事が早いといった「肯定的条件反射」を身につけることが大切。そういう人は、どんどん成功に導かれることになると著者は説明しています。

なにがあっても「プラスことば」を発する、「プラス動作・表情」をする、「プラスイメージ」をするといったことを心がけていれば、潜在意識にプラスの記憶データが蓄積され、肯定的条件反射となるということ。

ちなみに「マイナスことば」とは「嫌だ」「できない」「難しい」「困った」「疲れた」「ムカつく」「つらい」など否定的な要素を含んだもの。対する「プラスことば」は、「うれしい」「ツイてる」「楽しい」「簡単だ」「幸せだ」「ありがとうございます」「がんばります」など、肯定的なそれを指すそうです。(79ページより)

これらはあくまで一部ですが、つまりSBTとは、脳の状態をよりよくキープするための手段であるといえそうです。冒頭で著者も書いていますが、部下の扱いに悩んでいるリーダーにとっては、特に有効な一冊かもしれません。

(印南敦史)