邦画と特撮、アニメに寄せて 映画『ふれる。』の感想 (original) (raw)

10/4(金)より公開中の映画『ふれる。』の感想です(公式サイト)。詳細なネタバレはなしです。宣伝のポスターでは正直どんな内容か見当がつかず、映画館で予告を観て鑑賞することに。この制作陣やキャストだから観に行く、という作品は、最近ないです。むしろそういう贔屓や先入観をなくすのに腐心しているつもりなのですが⋯。

※画像をタッチ・クリックするとファイナル予告(YouTube)が再生できます。

映画『ふれる。』の感想

入場特典としてリーフレットを貰うことができた。直接比較はしないが、リーフレットを読んでしまった以上、製作陣の過去作も多少踏まえて感想を書いておきたい。

青年期から大人になっていく姿を描くことにチャレンジした作品、と書けば聞こえはよいが、ここにきて思春期を描きなおかつ映画をヒットをさせるのが難しくなってきたのかなと勘ぐりたくなるのが正直なところだ。近年、所謂ボーイ・ミーツ・ガールにSFや異世界要素を絡めた作品を何度となく観てきた。だが、どうしても最初のヒットした作品以降はインパクトも下がるし、こぞって同じような映画が作られると評価も厳しくなっていく。

メインの3名の描き方は悪くない。上京の経緯は並の設定だが、各々の生活や境遇は浮足立ってない。現実そのものではないが、リアルさがあり地に足がついている。後に関わる女性2名も同様だ。むしろ女性の方が打算的かと思えば人間臭かったりと、生々しく描かれているのではないか。ただそれらを活かすにあたり、やはり劇中でのイベントや人間関係の仕掛けが今一胸に来るものがなかった。わかり易く平凡で、よくあるドラマ的な展開に終始している。奇跡や神がかり的なイベントは浮足立ってしまうからにしても、この作品だからという引きはずいぶん弱い。

これは何より、アニメならではのファンタジー要素、「ふれる」という生き物とその深層(真相)が作品のスパイスとしてお話的にも映像的にも響いてこなかったのも原因かと思う。まず劇中の「ふれる」に愛着が湧かない。設定ですら、映画序盤から苦心して「こんな生き物です」という説明場面が挿入されている。もちろん実写でCGだと画面上で浮いたり、合成感アリアリの画になる所をアニメでは上手く回避できるのだろう。それにしても、種明かしや見せ方で惹かれる箇所がなかったのが残念でならない。メイン3名の感情の吐露を引き出したにしても、感動する程ではなかった。実写・ドラマを意識したが故に抑制された表現を採ったのかもしれないが、共倒れという印象だ。

キャストの演技や主題歌についても特に感銘を受けるものではなかった。作品のクオリティを損なうようなものでは決してない。だが、昨今のアニメ映画を観ていればこの程度はもはや当然、というところではないか。もっとも、淡白な感想になってしまうのは、映画本編自体に響く箇所が少なかったことに起因している。

特に強く鑑賞をお薦めしたい映画ではなかった。配信や地上波を待って、興味が湧いたときに観ればよいのではないだろうか。