映画「ガンパウダーミルクシェイク」感想ネタバレあり解説 見た目甘そうだけど中身は刺激たっぷりな女殺し屋たち。 (original) (raw)
ガンパウダー・ミルクシェイク
女性たちが壮絶なアクションを繰り広げる作品が最近増えてきましたね。
それこそジェシカ・チャスティンが制作・主演した「**355**」は、全員男性がアクションしている映画ばかりが目立つことに疑問視し、だったら女性だけでやろうという発想から生まれた映画。
355に関しては無難なアクション映画にとどまってしまった感じはしますが、人物が女性だとまた見方も面白さも変わってくるのだなと学んだ次第です。
さて本作も今流行り・・・いやこれがスタンダードになってほしいという願いから生まれたであろうシスターフッドなガンアクション映画。
カラフルな彩りによるPOPな映像とは裏腹に、激しい銃撃戦になっていることでしょう。
タイトルの通り、口の中が甘さでいっぱいのハイカロリーな映画であることを期待したいです。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
裏社会で生きる女性の殺し屋たちによる、ポップでキュートでカラフルなんだけど、超ド級のバイオレンス映画が誕生した。
標的の娘を匿った殺し屋の主人公が、美しき仲間と共に組織と全面戦争を繰り広げていく。
イスラエル映画界にスラッシャーホラーのジャンルを開拓し、あまりの先読みできない展開のスリラー映画では、クエンティン・タランティーノ監督から「本年度最高傑作」と称された監督の手によって製作。
「ジョン・ウィック」、「キック・アス」といった近年のバイオレンスアクション映画から、ジョン・ウーやマカロニウエスタンなど、今昔のアクション映画をすべて詰め込んだかのようなオタクっぷりが炸裂。
隅から隅まで遊び倒したかのような世界観に、アクション映画オタクは大興奮すること間違いなし!
また主人公には、「**ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」以降活躍が目覚ましいカレン・ギラン**を起用。
高身長と持ち前の運動神経を活かしたアクションで、観る者をノックアウトしていく。
ガンパウダー=刺激とミルクシェイク=甘さが同居した超劇薬映画。
是非一服ご賞味あれ!!
あらすじ
ネオンきらめくクライムシティ。
サム(カレン・ギラン)はこの街の暗殺組織に属する腕利きの殺し屋。
だがある夜、ターゲットの娘エミリー(クロエ・コールマン)を匿ったことで組織を追われ、命を狙われるハメに。
殺到する刺客たちをを蹴散らし、夜の街を駆け抜ける2人は、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込んだ。
図書館秘蔵のジェイン・オースティン、ヴァージニア・ウルフの名を冠した銃火器の数々を手に、女たちの熾烈な反撃が今始まる!(HPより抜粋)
監督
本作を手掛けるのは、ナヴォット・パプシャド。
「ザ・マッドネス/狂乱の森」で映画デビューした監督。
僕は、その後に製作された「オオカミは嘘をつく」という映画は鑑賞済み。
ひとつの少女誘拐事件を巡り、容疑者を拘束した刑事と被害者の父親が暴走する姿を、過激なバイオレンス描写と予測不能なストーリー展開で綴ったというもの。
やはりイスラエル出身ということで、いつ戦争が起きても不思議のない尾場所で育ったからこその人間不信ぶりが垣間見える、なかなかショッキングな映画でしたね。
今回の「ガンパウダー・ミルクシェイク」はこの映画とは違い、心理描写よりもアクションに特化した内容であることが窺えます。
また、「会社に裏切られた女たちが、自分たちの居場所を確立するために戦いに挑む」物語ですから、めちゃめちゃ現代的な話でもあるわけです。
きっと見た眼の楽しさに目を奪われがちになりそうですけど、内面的なメッセージもしっかり捉えたいですね。
キャラクター紹介
- サム(カレン・ギラン)・・・会社(ファーム)に所属する殺し屋。格闘技全般に優れ、手近なモノすべてを臨機応変に武器として活用。あらゆる銃火器に精通したトップ・アサシン。バニラ・シェイクが好き。
- スカーレット(レナ・ヘディ)・・・名うての殺し屋だったが、15年前に組織と衝突し、娘サムを置きざりにして姿を消す。行動は、行き当たりばったりでノープラン。
- エミリー(クロエ・コールマン)・・・サムに命を救われ、行動を共にする9歳8か月の少女。さまざまな知識はケーブル・チャンネルから。恩人サムの弟子を名乗る。
- マデリン(カーラ・グギーノ)・・・控えめで心優しい図書館員。だが、ひとたびトマホークを手にすれば冷酷非道な殺し屋に豹変。ガトリング銃を扱わせれば怖いものなし。
- フローレンス(ミシェル・ヨー)・・・殺しは常に平常心で、がモットーのアジア系図書館員。鋼のチェーンを軽々と操り、敵を首つりにして息の根を止めるカンフー・マスター。
- アナ・メイ(アンジェラ・バセット)・・・鋭い眼光と強烈な罵詈雑言入館者を震え上がらせるアフリカ系図書館長。2丁ハンマーを振り回し、相手の前歯をもれなく砕く。
- ネイサン(ポール・ジアマッティ)・・・殺し屋たちとの連絡係を務める会社(ファーム)の人事部長。スポンサーからは無理難題を強いられ、女たちからは裏切り者扱いされ、気苦労が絶えない。
(以上HPより)
とりあえずね、思わず笑ってしまうほどバンバン撃ちまくってくれるような景気のいい映画であることを期待してます!
ここから観賞後の感想です!!
感想
#ガンパウダーミルクシェイク 観賞。
テンポの悪いガイリッチーで、会話のつまらないタランティーノ。
そしてジョンウーでジョンウィックでなぜか必殺仕事人w
アイディアもガールズエンパワーメントも良いのだけど、話がしっちゃかめっちゃかだな。 pic.twitter.com/cSdLBnBQ6y— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) 2022年3月18日
90年代後半から00年代前半によく見かけたB級アクション要素が盛りだくさん。
だけど監督がちょ~っとカッコつけすぎたかなぁ。
以下、ネタバレします。
アイディアは最高なのよ。
殺し屋として育ちながらも行方知れずの母親の身を案ずる主人公が、人質の娘を保護したため任務を逸脱、やがて壮絶な銃撃戦へともつれこんでしまう女性たちの戦いを、タランティーノやガイ・リッチーといった往年のアクション映画にオマージュを捧げながら、そんな手もあったのか!というアイディアに拍手を送るも、全体的にテンポが悪く、会話も面白くなく、話がしっちゃかめっちゃかに成り下がってしまったチグハグな作品でございました。
冒頭でも語ったように、男性優位な組織の中でコマ扱いされてきた女殺し屋が、自分たちの存在意義と居場所のために命を賭けて戦いに挑む姿は、「355」のそれと同じくガールズエンパワーメントであり、フェミニストを勘違いしてる野郎どもに制裁を加える爽快感を持った映画であることは間違いない。
女だと思って甘く見たら実はめっちゃスパイシーなお姉さまたちだったという点においては「ガンパウダーミルクシェイク」のタイトルの通りで、男たちをフルボッコにしていくサムやスカーレットには拳を上げて称賛を送りたいほど。
そんな本作は、とにかくアイディアが豊富で、先人たちが築き上げたアクション映画にリスペクトを捧げるような作品でもあった。
例えば劇中に出てくるダイナーや図書館、病院は全て「裏社会専門」の施設及び店舗である。
ダイナーでは必ず入口のウェイトレスが「銃をお預かりします」と入念なチェックを施し、客に安心して飲食してもらう配慮が見受けられる。
図書館は、マデリン、アナ・メイ、フローレンスといったお姉さま(と呼ばせてw)たちが管理し、おすすめの本を提供してくれる。
海の本が並ぶ場所では青いライトとぶら下がったクラゲで演出された場所で、自然の本が並ぶ場所は本棚と一緒に生い茂った木々がそびえ立つ。
また、自己啓発の本が並ぶ場所には本の中に札束や金塊、ナイフや銃が入っており、殺し屋たちが欲しいものが揃っている。
そして病院では受付にある大きな歯の形をしたオブジェに銃を預けて診察を受ける。
見た目は歯医者だが、医師はどんなけが人も治療するという設定。
なぜか痛みを和らげるために笑気ガスを完備しているのが謎。
このように殺し屋専門の施設があるという点では「ジョン・ウィック」を彷彿とさせる。
ジョンウィックも専門のホテルや武器を提供するソムリエ、死体を片付ける総事業者などがおり、それらを専用の金貨で取引する設定が子供心をくすぐった。
本作はあくまで施設と戦いの場というという意味の強い場所だったが、世界観を作るのに重要な設定だったように思う。
アクションに関しても面白い試みが随所にみられた。
誤って発砲してしまったファームの会計士は、娘を誘拐されたことで会社の金に手を出していた。
娘を救出するべく任務を逸脱して勝手な行動に出たサムの前に現れたのは、3バカと呼ばれるファームの手先。
事前に武器をロッカーにしまってしまったために素手で戦う羽目になったサム。
ここでエンニオ・モリコーネ風の音楽が流れ、4者の視線がクローズアップされていく。
そう「続・夕陽のガンマン」だ。
そこからというもの、大金の小切手が詰まったバッグで3バカをなぎ倒すサム。
生きて連れ戻す命令を受けた彼らは銃ではなく棒や電流が流れる武器でサムに立ち向かうもフルボッコ。
ボウリングの玉で頭にとどめを刺すなど一方的な戦いでカタを付ける姿は見事だ。
この後も歯医者の裏切りによって腕に麻酔を打たれたサムは、追いかけてきた3バカに再び戦いを挑む。
エミリーに手伝ってもらい、左手にナイフ、右手に銃をテープで固定してもらい、椅子にはアルミ製の容器で盾を作り、背を向けながら防御し、力の入らない腕は遠心力で攻撃を仕掛ける。
標準が定まらないせいで、中々一発で仕留めることができないが、持ち前の反射神経と運動能力で相手の攻撃を回避。
狭い廊下という悪条件をうまく利用して敵同士が相打ちしてしまうという作戦も功を奏し、あっという間に片を付けてしまう。
この後、未だ腕に力が入らないサムの代わりに車のハンドルとギアを操作することになるエミリーとの阿吽の呼吸で見せるカーチェイスも最高だ。
冒頭の任務で襲い掛かってきたマフィアの息子を殺してしまったことで、追手が押し寄せてきた地下駐車場。
運転席に2人乗り、ブレーキとアクセルをサムが、ハンドルとギアをエミリーが操作。
サムの合図で巧みにハンドルを切りながら運転をするエミリーが、マフィア相手に見事なテクニックで攻撃を回避。
これまたあっという間に敵を一掃してしまう。
どんどんドツボにハマっていくサムが選んだ場所は図書館。
マデリンやアナ・メイ、フローレンスらと共にマフィアの集団たちをどうぶっ潰すかが見物なシーンである。
母親スカーレットの登場もあって、過去の因縁に決着をつけたいサムだったが、ここは協力して敵と戦うことを決意。
二丁拳銃で飛び出してくるスカーレットの姿をスローモーションで見せる演出はmどう見てもジョン・ウーのそれだ。
どこかで鳩が飛び出してくるんじゃないかというほど似過ぎるシーンは、ファンなら爆笑モノだったろう。
サムも敵相手に本棚からナイフや金塊などを取り出し、武器として活用。
大柄な相手でもひるまないファイティングスタイルは、殺し屋の域を超え本気で居場所を守りたい女性の真剣な表情に見える。
彼女以外にもアナ・メイの2丁ハンマー然り、フローレンスの鎖しかり、決して銃やナイフだけではないガジェットで戦う姿が、アクション映画をさらにたらしめる設定だったように思う。
しかもフローレンスに至っては敵の男を2階から鎖で首にひっかけ、自分の体重を使ってつるし上げる殺法を披露。
まるで「必殺仕事人」な彼女の姿を見て三味線の音が流れたものは少なくないだろう。
話はそれるが、本作は日本映画の要素も加えていたように思う。
それこそ冒頭でつばの長い帽子をかぶったサムは、どこかしら「女囚さそり」の梶芽衣子とダブったし、エミリーを連れて敵と戦う設定は「子連れ狼」だったのではないか。
もっと飛躍すれば「用心棒」の要素もあったかもしれない。
さらにはサムが冒頭で食べているモノの箱にはカタカナで「シリアル」と書いてあったし、彼女が来ていたTシャツには「マシュマロ」の文字でサンリオチックなキャラが写っていた。
しかもシリアルを食べながら見てるのはアニメだった気もする。
このように日本の要素もしっかり取り入れてる辺りがオタク監督ならではのように感じる。
ラストシーンではダイナーでウェイトレスに扮したスカーレット、アナ・メイ、フローレンスの3人がひたすら銃で撃ちまくる姿をスローモーションで余韻たっぷりに見せていく。
しかもバックではザ・アニマルズの「It's Over Now,Baby Blue」が流れ、オタク監督ならではの選曲が冴えわたる。
そういえば劇中で逃走中に流れるのがフランス・ギャルだったり、敵との第工房で流れるのがジャニス・ジョップリンの「Piece Of My Heart」だったりと、これまでの悪心映画であまり聞かない曲ばかりで新鮮且つカルトチックだなぁと感心した。
このように全編通して様々な映画を引用し、アイディアを山のようにぶち込んだ作品でした。
正直ややこしい
とはいえ、全体的には監督のアイディアや過去作リスペクトばかりが目立つうえに、監督のやりたいようにやり過ぎてるせいで、話が渋滞気味にも感じたし、どこかカッコつけてるような雰囲気も見て取れた。
そもそもこの映画、話がややこしい。
サムが任務の最中、副収入をしていたマフィアの息子が襲い掛かってきたせいで保身のために殺害。
ファーム的には敵に回したくない相手ということで、サムには落とし前をつけてもらいたいと暗躍していた。
その前に急きょ仕事が舞い込み、ファームの金を盗んだ会計士を探し出し殺してほしいと頼まれる。
ホテルに行くと男が電話を取る瞬間に発砲、実は娘が誘拐されていて仕方なく会社の金を横領しただけだった。
かわりに取引場所に向かうと、今度はファームの手下たちが乱入。サムをくいとめる。
取引相手から会計士の娘エミリーを救出したはいいものの、小切手の入ったバッグは木っ端みじんに。
サムが関わる任務が全てファームにとってマイナス事項ばかりのために、上層部はとうとう尻尾きりに踏み切る。
死んだ息子の代わりにサムを差し出す「手打ち」を決行したファームは、サムと15年ぶりに再会した母親スカーレットを追うために総動員で探し始める。
図書館に逃げ込んだサムとスカーレット、エミリーは、マデリンらと共にマフィアの手下たちを成敗。
とうとう向こうのボスまで出てきて再び誘拐されたエミリーと引き換えに、自分の身を捧げるサムをほおっておけないスカーレットたちは、作戦を練り最後の賭けに出るというモノ。
確かに母親に置いてけぼりにされたことでエミリーを助けたいサムの気持ちはわかるし、ずっと隠遁生活を送っていた母親と共に居場所を探すプロットは成立している。
しかしラストのダイナーでのシーンがカッコよくはあるもののカタルシスが弱いし、どうもスカっとしない。
それまでの会話にもユーモラスな部分が見当たらず終始硬い雰囲気だ。
またアクションと会話のスピード感が1速から6速へと一気にギアチェンジするためどうもふかしてるように感じる。
スピード感やテンポはやはり順序よく上げてほしいものだ。
大体図書館を最初に出すのは微妙だった。
それこそ母親を匿っていたのがネイサンが教えてくれた住所で、行ってみると武器を提供してくれる図書館で、そこに母親がいたって流れならスムーズに事が運んだのではないだろうか。
スカーレットが助けてくれる場面が如何にも唐突で感動の再会になってない気がしたし、サプライズ感も薄い。
こうすることで100分近くの時間に短縮できてテンポも上がるため、もっと疾走感あるストーリーに仕上がったような気もする。
最後に
個人的にはこういう映画が増えてほしいし、監督のハリウッド進出第1弾ということもあって大目に見たい。
だって実際これだけオタク感のある作品を作ってくれるのは稀有だし貴重だ。
応援はしたい。
だからもっとブラッシュアップしてほしいし、B級ラインを狙うならもっと粗くてもいいと思う。
変に真面目な話にしがちだった気もするんです、今回の映画は。
きっと自分がタランティーノやガイ・リッチーに対する強い意識から生まれた意見かもしれないので、僕自身が見方を変えるべきなのかもしれないけど、ぶっちゃけまんま模倣でもいいと思うんですよ、面白ければ。
とにかくカレン・ギランがかっこいいのでそれだけで楽しいんですが、どうも欲張りなのであれこれ不満を漏らしてしまいましたw
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10