秘湯探検家おすすめ! 東京から車で行く1泊2日の秘湯旅5プラン (original) (raw)

こんにちは、秘湯探検家の渡辺裕美です。

私は会社員時代にハードワークで体調を崩しましたが、「温泉」と「自然」が心身を癒やしてくれたことをきっかけに、国内外の温泉2,500ヵ所以上を巡りました。

特に「秘湯」など自然豊かな場所にある温泉が好きで、現在でも月の半分は、関東近郊の秘湯巡りを車で楽しんでいます。

"幻想的な雰囲気が漂う「瀬音の湯」(たんげ温泉 美郷館)

幻想的な雰囲気が漂う「瀬音の湯」(たんげ温泉 美郷館)

前回は秘湯初心者・子ども連れの方向けに「東京から日帰りで行ける関東近郊の秘湯10選」をご紹介しましたが、今回はもっと秘湯を楽しむための「1泊2日の秘湯旅5プラン」をご紹介します。

宿泊するからこそ味わえる格別な秘湯体験、ぜひみなさんに堪能していただきたいです!

温泉で心身ともに安らぐには宿泊がおすすめ!

日帰りで行く温泉も手軽で良いのですが、温泉が持つ効果をもっと得たいのなら、断然宿泊がおすすめ。

温泉に泊まって「露天風呂から美しい景色を眺める」「小鳥のさえずりに耳を傾ける」「おいしい郷土料理を食べる」「その土地の観光スポットで新しい文化に触れる」など温泉地の環境全てを楽しむと、より心身ともに安らぐと思うんです。

また、宿泊することで往復の運転を2日に分けることができるので、運転初心者の方や長時間の運転が苦手な方でも疲れが残りにくいのも良いですよね。

初心者や家族連れも満喫できる秘湯宿とは?

では「初心者や家族連れも満喫できる秘湯宿」ってどんな宿なんでしょうか?

今回は「初心者向けの秘湯宿」を選ぶに当たり、以下の3つの条件に配慮しました。

3つの条件に加えて、東京からアクセスしやすく、食事や観光スポットが充実した宿をセレクトしました。

関東近郊「1泊2日の秘湯旅5プラン」

【1】総面積400畳!? 家族みんなで楽しむ巨大露天風呂「宝川温泉 汪泉閣」(群馬県みなかみ町)

まず最初は、群馬県みなかみ町にある「宝川温泉 汪泉閣」さん。総面積400畳という巨大な露天風呂には1分間に1,800ℓ(ドラム缶10本分)の湯が注がれており、その規模の大きさは日本随一と言っても過言ではありません。

宝川温泉 汪泉閣

宿から吊り橋を渡って小道を歩くと、川沿いにもうもうと湯気をあげる露天風呂が見えてきます。

湯船からは季節によって多彩に色づく木々を眺められ、圧倒的な開放感に包まれます。これぞ温泉文化の原風景!

湯に浸かるとあまりの気持ち良さに、「ああ、もう出たくない」なんて心の声がこぼれます。

宝川温泉 汪泉閣

4つの湯船のうち3つが混浴露天風呂で、1つは女性専用(男性専用はありません)。混浴露天風呂に入るには事前に貸し出される湯浴み着を着るのがルール。家族みんなで入浴を楽しむことができるのも魅力です。

宝川温泉 汪泉閣

私のお気に入りの瞬間は、日帰り入浴時間が終わった夕暮れ頃。昼間のにぎわいがうそのように、辺り一帯が静まり返ります。

宝川温泉 汪泉閣

そして、昭和11年築の木造2階建て宿舎にオレンジ色の光が灯り、まるで昔の湯治場のような趣深い雰囲気に変わります。泊まった人だけが味わえる至福の瞬間、ぜひ味わっていただきたいです。

昭和11年築の木造2階建て宿舎

昭和11年築の木造2階建て宿舎

夕食は半個室の食事処で上州牛の朴葉(ほおば)焼きイワナの唐揚げなど、山と川の幸がふんだんに使われた山里料理をいただきます。

上州牛の朴葉焼き

上州牛の朴葉焼き

翌日は、宿から車で20分走って「照葉峡(てりはきょう)」という渓谷へ。この辺りは美しい滝や木々に囲まれており、秋になると鮮やかな紅葉のトンネルを愛でることができます。

照葉峡

照葉峡

汪泉閣さんは泊まってこそ魅力が味わえる宿の一つだと思います。ご家族みんなでいかがでしょうか?

【♨メモ♨】宝川温泉 汪泉閣

【2】まるで美術館! 4つの絶景を愛でる湯宿「たんげ温泉 美郷館」(群馬県中之条町)

お次は、泊まらないと体験できない極上湯です。「たんげ温泉 美郷館」は四万川(しまがわ)の支流「反下川(たんげがわ)」沿いにある一軒宿。

たんげ温泉 美郷館

創業者であるご主人が林業を営んでおり、太い木の柱や梁が外観や館内の至るところにあしらわれ、滞在中はどこに居ても落ち着きやぬくもりを感じられます

たんげ温泉 美郷館

こちらの宿の魅力は、湯船から4種類の美しい景色を楽しめること。

個人的に一番気に入っているのが貸し切り露天風呂の「宝泉の湯」です。秋は紅葉の淡い赤色と、すぐ横を流れる反下川のコバルトブルーのコントラストが本当に美しいんです。

宝泉の湯

宝泉の湯

次に紹介するのは男女入れ替わり制の浴室「瀬音の湯」。朝8時ごろになると、ステンドグラスの窓から1本の線のような日の光が差し込み水面をキラキラと輝かせ、後光が差しているかのように幻想的な雰囲気が漂います。

瀬音の湯

瀬音の湯

原生林に一番近い景色が「滝見の湯」です。人が足を踏み入れないような川の上流にある、コバルトブルーの滝壺や甌穴(おうけつ ※硬い岩の表面にできる円形の穴)を眺めながら入浴できます。

湯に浸かりながら「こんな景勝地が山奥にあるなんて~!」って、感動しちゃいます。

滝見の湯

滝見の湯

まだ温泉がありますよ。男女入れ替え制の露天風呂「月見の湯」。開放感のある露天風呂からは、夜空に浮かぶ星や月をゆっくりと望めます

湯船から望む景色がどれも自然と調和した絵画のようで、まるで美術館巡りをしているかのよう! ついつい見惚れて長湯になります。

「1日では全ての湯船を巡り切れないので、今回は連泊で来ました」というお客さんがいらっしゃるのも納得です。

月見の湯

月見の湯

夕食は郷土料理の刺身こんにゃくや山菜を使った和風懐石をいただきます。

中でもおいしさにうなったのは「ビーフシチューのパイ包み焼き」。パイ生地をスプーンでパリッと割ると、中に大きな牛肉がゴロゴロ。味も食べ応えもバッチリです。

ビーフシチューのパイ包み焼き

ビーフシチューのパイ包み焼き

翌日はフィールドアスレチック風の遊具やボールプールなども併設している「道の駅霊山たけやま」へ。なが~い滑り台は子どもに大人気! 家族みんなで大はしゃぎです。

道の駅霊山たけやま「ぼうけん砦」

道の駅霊山たけやま「ぼうけん砦」

【♨メモ♨】 たんげ温泉 美郷館

【3】山奥で美食を堪能できる秘湯「七味温泉 紅葉館」(長野県高山村)

続いては「温泉は好き、でも美食も楽しみたい」という欲張りな私の家族のお気に入り宿です。

お宿があるのは長野県。志賀高原の横手山を源とする松川の渓谷沿いにある七味温泉の一角。全5室、家族経営のお宿です。

七味温泉 紅葉館

人気なのは美しい乳白色グリーンの温泉! 周りが高い山で囲まれているので、秋は紅葉、冬は雪見露天と、四季折々の多彩な表情を見せてくれます。

七味温泉 紅葉館

実はもう一つ、変わった色の温泉があります。それは露天風呂の脇にある「炭色の湯」と書かれた真っ黒い浴槽

2本の源泉をブレンドすることで化学反応が起こって硫化鉄が発生し、このような真っ黒な湯になります。浸かると手足が真っ黒になり面白いですよ。

七味温泉 紅葉館

この珍しいお湯の色だけでも、十分温泉ファンの心をくすぐるのですが、いい意味で期待を裏切られるのが食事なんです。

名旅館で修行をされた息子さんが作る、地元の食材を生かした懐石料理はアイデアに富んでいて、驚きと感動の連続でした。

例えば、菜の花や山椒をすりこんだ甘いお豆腐などの前菜3品から始まり……

前菜3品

前菜3品

くり抜かれた信州りんごにトロトロのチーズたっぷりのグラタンまで。りんごの甘みとチーズがマッチして本当においしいんです。一品一品運ばれて来るたび、家族からは「お~っ!」と歓声が上がっていました。

りんごのグラタン

りんごのグラタン

高山村で採れた「うるい」「行者にんにく」「にら」「せり」など野菜たっぷりの信州牛しゃぶしゃぶも絶品。出汁までおいしく完食です。紅葉館さんは、食事目当てで来ても十分価値のあるお宿なんですよ。

信州牛しゃぶしゃぶと高山村野菜

信州牛しゃぶしゃぶと高山村野菜

宿から車で10分のところには初心者も楽しめるスキー場、「ヤマボクワイルドスノーパーク」があります。ゆったりと楽しめる穴場のスキー場なので、冬は紅葉館さんで1泊し、次の日はお子さんとスキーを楽しむのもおすすめです。

ヤマボクワイルドスノーパーク

ヤマボクワイルドスノーパーク

【♨メモ♨】七味温泉 紅葉館

【4】美肌成分の極上泉質が魅力! 「芦之湯温泉 松坂屋本店」(神奈川県箱根町)

続いては美容好き必見の美肌の湯をご紹介します。お宿があるのは、東京からも行きやすい箱根「芦之湯温泉」。

その歴史は古く、江戸時代半ばに江戸町民たちが信仰と湯治目的で多く訪れたと言われています。

「もともとこの辺りは湿地帯だったので、浅い所でも温泉が湧くんです」と女将さん。とても温泉資源に恵まれた土地なんです。

芦之湯温泉 松坂屋本店

ロビーに入ると日本酒やジュース、ワインなどがズラリと用意されています。

実はこれらのドリンク、全て宿泊料金に含まれていて(オールインクルーシブ)、自由に飲んでOKなんです。

芦之湯温泉 松坂屋本店

好きなドリンク片手に、中庭を眺めながらホッとひといき。たまにはリッチな気分を味わえる秘湯も良いですよね。

芦之湯温泉 松坂屋本店

松坂屋本店さんの湯は、男女別の大浴場「権現之湯」2つと貸し切り露天風呂「万右衛門の湯」5つの合計7つ。豊富な自家源泉が加水・加温・循環されず、源泉かけ流しで提供されています。

そして最大の魅力は、三大美肌成分(硫黄泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉)を全て含んだ極上泉質ということ。汚れを洗い流し、血流を促し、保湿もしてくれる、まるで「万能化粧水」のようです。

権現之湯

権現之湯

貸し切り露天風呂はフロントで鍵を借り、先客がいなければいつでも浸かることができます。標高が高いので、湯船からは山の稜線が望めますよ。

箱根でも高地にあるからでしょうか、有名観光地とは思えない静けさに感動します。

万右衛門の湯

万右衛門の湯

夕食はお食事処「えん」で懐石料理をいただきます。一品一品、お料理が温かいうちに運ばれて来るのがうれしいです。写真はお気に入りの釜炊きご飯と秋鮭、筋子添え

釜炊きご飯と秋鮭、筋子添え

釜炊きご飯と秋鮭、筋子添え

美肌の湯できれいになった翌日は「彫刻の森美術館」のアートの世界に浸ってみるのはいかがでしょう。体験型アート作品もありますし、芸術に触れることで考え方や感情が刺激され、内面も美しくなれますよ。

彫刻の森美術館

彫刻の森美術館「ネットの森」

美肌の湯に1日浸かった後、私は翌日にお肌の変化を感じました! 皆さんもぜひ宿泊して、その効果を感じてみてください。

【♨メモ♨】芦之湯温泉 松坂屋本店

【5】露天風呂が16ヵ所! お風呂のデパート「平湯温泉 ひらゆの森」(岐阜県高山市)

最後はちょっと遠方の秘湯を。場所は、北アルプスの麓に位置する岐阜県の平湯温泉。15,000坪の広大な森の中に、なんと16ヵ所も露天風呂がある「ひらゆの森」さんです。

露天風呂の数が多いだけではありません。最大の魅力は、泉質重視の温泉施設であるということ。そのため温泉ファンにも人気で、日中は日帰り入浴のお客さんでいつもあふれています。

平湯温泉 ひらゆの森

そんな人気の施設を120%楽しむなら、断然宿泊がおすすめ!

宿泊客はチェックインから翌朝の10時まで、森の中に点在する露天風呂と宿泊者専用の内湯に24時間入り放題なんです!

夜は星空を、朝は緑の木々や青空を、ゆったりと眺めながら入浴ができて最高です。

平湯温泉 ひらゆの森

乳白色、乳白色ブルーなど、微妙に色が異なるにごり湯が点在し、各湯船の湯の華や硫黄の香りを楽しむことができます。

小さな子どもがママの手を引っ張り、バリエーション豊かな温泉を楽しそうにはしご湯している様子もちらほら。

平湯温泉 ひらゆの森

宿泊者の特権はまだあります。館内にある2つの宿泊者限定貸し切り風呂はぜいたく極まりないのです。

家族5人が一度に入ってもまだ余裕がありそうな広い円形湯船で、乳白色の湯がとうとうと掛け流されています。

内湯から木のスライドドアを開けると反対側は半露天になっていて、内湯も露天もどちらも楽しめます。

平湯温泉 ひらゆの森

食事は館内にある食事処で、地元飛騨の食材をたっぷりと使った定食をいただきます。飛騨牛の鉄板焼きは「じゅわ~っ」と口の中に甘みが広がり絶品。

この湯と食事のクオリティで、1泊2食付が9,680円~というコスパの良さは、ひらゆの森さんならではだと思います。

平湯温泉 ひらゆの森

翌朝は宿の草履を借りて、温泉の目の前に建つ農家直販市場「かかし庵」さんまで散策してみてください。

かかし庵

かかし庵

北アルプスの麓で採れる旬の野菜や特産品を売る朝市は、奥飛騨の人気スポット。

「かかし庵」さんでも地元で採れたばかりの新鮮野菜やフルーツ、地元の名菓など、奥飛騨のおいしいものがいっぱいでお土産を選ぶのが楽しいです。

かかし庵

新鮮な食材が並ぶ

ひらゆの森さんは、全棟に露天風呂の付いたコテージもあるので、大家族やおじいちゃん、おばあちゃんと一緒の家族旅行でも、安心して楽しめますね。

【♨メモ♨】平湯温泉 ひらゆの森

秘湯宿を楽しむためのポイント

最後に秘湯宿を存分に楽しむためのポイントをご紹介します。

秘湯宿は高地にあることが多いため、夏でも夜間はぐっと冷え込みます。念のため、厚手の衣類を持っておくと安心です。

秘湯の宿は静かにお湯・郷土料理を堪能したいというお客さんが多いんです。周りに配慮して過ごすことも忘れずに。

日帰りと違って宿泊は荷物が多くなるため、うっかり忘れ物がないように気をつけましょう。荷物をバラバラに置かず、1ヵ所にまとめておくだけでも忘れ物を減らすことができますよ。

♨ ♨ ♨

帰りの運転のことを考えず、ゆったり秘湯を楽しめることも宿泊の良いところ。秘湯宿で一夜を過ごす特別な体験と、温泉地の魅力をフルに味わって、週末に心と身体をリフレッシュしてみてはいかがでしょう?

※東京から日帰りで秘湯を楽しみたい方はコチラの記事もおすすめです
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渡辺裕美

奈良県出身。会社員時代に体調を崩したことをきっかけに、温泉にハマる。これまで巡った温泉は国内外含め2,500ヵ所以上。秘湯や野湯にひとりで行くのが大好きで、オフはほぼ湯巡りに費やす。著書に『わたしのしあわせ温泉時間』(メディアソフト)、『絶景温泉ひとり旅 そろそろソロ秘湯』(小学館)、監修本に『行きたい!残したい!すごい温泉100』(イカロス出版)などがある。温泉番組の出演・監修多数。

編集:はてな編集部