【柔術】大久保康史「あれ、優勝できるんだ」初出場でライトフェザー級世界王者に (original) (raw)

アジア、世界の金メダルを首にかける大久保

アジア、世界の金メダルを首にかける大久保

スポーツ柔術世界連盟(SJJIF)主催の柔術世界大会(9月26日~30日、愛知県武道館)で県人初となる世界王者が誕生した。

男子黒帯マスター3(41歳以上)のライトフェザー級で、大久保康史(46=ピロクテテス新潟)が初出場で初優勝。右膝前十字靱帯(じんたい)損傷の大けがを克服してタイトルを手にした苦労人は、今後、新潟で柔術を広める役目を担うことを自覚している。

頂点に立ち、大久保はあらためて感じた。「自分らしい試合をすることが大切」。さらに技を磨くため、今月に入ってすぐ、所属するピロクテテス新潟で練習を始めた。世界タイトルを取っても極める姿勢に隙はない。

3月のアジア選手権で初優勝した。その勢いに乗って世界も制した。決勝で米国人選手に判定勝ち、準決勝では清水慎也(CARPE DIEM)との12分間の延長を制するなど、トーナメント4試合を勝ち抜いた。その中で得意のパスガードでポイントを挙げた。「決勝でパスガードを決めた時に『あれ、優勝できるんだ』と思いました」と笑う。

今年が5年ぶりの公式戦出場だった。19年のプロ柔術新潟大会を最後に試合から遠ざかり、アジア選手権が復帰戦。その間の21年、練習中に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂した。

全治1年を要した。

1年後、手術で埋め込んだボルトを抜いたが、体力の低下は否めない。痛みも残った。そのため「試合に出ず、納得するまで練習に専念」と自らに我慢を強いた。解禁したのは今年に入ってからだった。

22歳でピロクテテス新潟に入門。製紙会社で昼夜3交代勤務をしながら、合間に道場に通う。練習はほぼ毎日。他道場へ出稽古に行く時もある。動画を見て技の研究をするのは生活の一部。ピロクテテス新潟の風田陣代表(53)から「1人の時も毎日練習していた。とにかく柔術が好き」と取り組みを絶賛されている。

世界制覇で1つ頂点を極めた。「技の進化に終わりがない。その面白さを多くの新潟の人にも知ってもらいたい」。今後は競技人口拡大に尽力する意向も明らかにした。【斎藤慎一郎】

◆大久保康史(おおくぼ・やすし)1978年(昭53)8月8日生まれ、新潟市出身。中学、高校ではサッカー部に所属。22歳の時にピロクテテス新潟に入門し、アマチュア修斗に取り組む。27歳から柔術に専念し、柔術コーチも兼任。19年のアジア選手権で初優勝した。162センチ。階級は64キロ以下だが、普段は67キロ。