映画の街、情熱で支え 松永さん死去 松永文庫に5万点 (original) (raw)

14日に83歳で死去した北九州市門司区の映画資料室「松永文庫」室長の松永武さんは、60年以上にわたって収集したポスターなどの映画資料を公開し、話題作のロケも多い「映画の街・北九州」の文化を支えてきた。文庫は故高倉健さんなど名優が訪れ、資料の寄贈も絶えない。関係者は「まだ教えてほしいことがあった」と惜しんだ。

「映画に対する圧倒的な情熱があった」。ロケ誘致を担う北九州フィルム・コミッション事務局の上田秀栄次長は話す。最後に会った約1カ月前には「まだやることがたくさんある」と意気込んでいたという。

文庫は「戦争」や「洋画」など、さまざまなテーマの企画展を年に複数回開催。中間市出身の健さん特集も好評で、年間来場者数は約10万人という。

資料はポスターやパンフレット、映画会社の広報文など多岐にわたる。寄贈資料も多く、収蔵数は約5万点に上った。文庫は2016年に日本映画批評家大賞の特別賞を受賞。資料点数の面から全国で例がない施設と評価された。高倉健さんや大杉漣さんが立ち寄り、松永さんと映画談議に花を咲かせたこともあった。

創業約80年の映画館「小倉昭和館」の樋口智巳館主は「映画館は古い資料をずっと残せない。映画館にできないことを、松永文庫は続けてきた。北九州の映画文化を支えてくれた」と惜しんだ。

松永さんは05年、門司港発祥とされる芸能「バナナのたたき売り」を解説する「望郷子守唄 バナちゃん節のルーツを探る」を出版し、郷土の歴史の掘り起こしにも力を入れた。

松永文庫の凪(なぎ)恵美学芸員は13日に病院を訪れ「あとはよろしくね」と今後を託された。北橋健治市長は「室長の遺志を継ぎ、松永文庫を北九州が誇る情報発信拠点として充実させたい」とコメントを出した。

=2018/10/15付 西日本新聞朝刊=