人間よ、欲望のままに生きよ〜ヨルゴス・ランティモス監督「憐れみの3章」 (original) (raw)

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※俳優は仮面を付けて演じたギリシャ時代の演劇。このポスターは、ギリシャ人であるランティモス監督の、故郷へのオマージュなのか……。

相鉄線ゆめが丘駅直結のモール「横浜ゆめが丘ソラトス」にあるシネコン「109シネマズ ゆめが丘」で、ヨルゴス・ランティモス監督の新作「憐れみの3章」鑑賞。

ヲタクが密かに「映画界の3大意地悪じいさん」と呼んでいるのが、故アルフレッド・ヒッチコックフランソワ・オゾン、そして今作品の監督ヨルゴス・ランティモス。「憐れみの3章」もまた、私たちが日頃社会生活を送る上で基準としている倫理道徳や社会的常識、多数決の原理……etc.を、「そんなもん、生きていく上で何の役にも立ちやしないのさ」とばかりにせせら笑う、彼の底意地の悪さが極限まで達したような怪作となっております。(若干51歳、映画人としては若手の部類に入るランティモス監督を爺さん呼ばわりは申し訳ない気もしますが……^^;)

題名通りの、3つの短篇から成るオムニバス映画で、3つのストーリーに何ら脈絡はありませんが、ヲタクが観終わった後、ランティモス監督から勝手に❓️受け取ったメッセージは、「人間よ、欲望のままに生きよ❗️生の歓びを最大限に享受せよ❗️それを縛る諸々の軛は引きちぎれ❗️」って感じかしら。

第1話……10年間人生の全てを年上の愛人(ウィレム・デフォー)に支配されてきた男(ジェシー・プレモンス)は、彼からの殺人依頼を断りますが、それは彼の人生の暗黒時代の始まりで…。

第2話……最愛の妻(エマ・ストーン)が海難事故に遭い、行方不明に。奇跡的に救助されて戻って来た妻は、全てにおいて以前とは違っていた。様々な方法で彼女の本性を暴こうとする夫(ジェシー・プレモンス)。しかし周囲の人々は彼の精神錯乱を疑い……。

第3話……優しい夫(ジョー・アルウィン)と可愛い娘を捨て、カルト教団に入団して、死者を蘇らせる異能を持つ女探しに奔走する妻(エマ・ストーン)。彼女の願いは果たされたかのように思われたが……。

個人的に「ロブスター」、「聖なる鹿殺し」、「女王陛下のお気に入り」、「哀れなるものたち」、そして今回の「憐れみの3章」と観てきて、ストーリー構成は、マザーグースみのある、英国っぽい「警句と皮肉に満ちた寓話」って感じなんだけど、根底に流れるものに目を凝らす時、ランティモス監督ってつくづくギリシャ人なんだな……って思う。今でこそ経済的に破綻してしまったとは言え、ギリシャ西欧文化の根源たる偉大な国。ランティモス監督のどの作品も、キリスト教が根付く前の、親殺しや近親相姦、裏切り、独裁、搾取、人間の本能剥き出し、何でもありのギリシャ悲劇・喜劇のニオイがぷんぷん。今回の作品を観ていても、いかにヲタク自身、普段、いわゆる「世の中の常識」「世間の大多数の意見」「コンプラ」に縛られて生きているかがわかる。第1話、殺人依頼を断った男の常識的判断に(よくやった)って思ったし、第2話、優しい妻を疑う夫はやはり被害妄想の病だと思ったし、第3話、家庭を捨ててカルト宗教に入れ上げるエマ・ストーンは(なんて愚かな……)と断罪したくなった(笑)しかしランティモスが紡ぎ出す世界では、世間の同調圧力に汲々として小賢しく生きている私たちをまるで嘲笑うかのように、「常識的な小市民」はどんどん不幸になっていくのです(^_^;)彼にとって、第3話のラスト、自らの目的を達したエマ・ストーンの「欲望と歓喜のダンス」こそが全て❗️……なんだろうと思う。

オープニングに流れるのは、懐かしやユーリズミックスの「Sweet Dreams」。

あなたを利用したい人がいる
あなたに利用されたい人がいる
あなたを苦しめたい人がいる
あなたに苦しめられたい人がいる

甘い夢はこれでできている
私にはとても反論できない
私は世界と7つの海を旅した
みんな何かを探している

この歌詞と、アニー・レノックスの物憂げで退廃的な歌声が、まるでランティモス監督がこの歌を聴いてからストーリーをインスパイアされたかのように作品の世界観にピッタリハマってます。

……そしてこのブログ記事を書いている間も、ヲタクの頭の中には、ランティモス監督の(…とヲタクが自分勝手に作り上げた)メッセージ…「人間よ、欲望のままに生きよ❗️生の歓びを最大限に享受せよ❗️それを縛る諸々の軛は引きちぎれ❗️」がぐるぐると回り続けるのでした。気の小さい小市民のヲタクは、明日からまた一般常識に縛られ、同調圧力に迎合してちまちま生きていくわけですが、あと1時間くらいはせめて、生の欲望に満ち溢れたランティモスワールドに浸っていたいと思います。

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※何と言っても映画のクライマックスは、エマ・ストーンの「歓喜のダンス」。一見の価値アリ❗️

★ジョー・アルウィン

第3話で、一見優しそうに見えてそのじつ、トンデモクズ夫を演じたジョー・アルウィン。「女王陛下のお気に入り」でも感じたんだけど、ランティモス監督、いわゆる英国紳士風イケメンはお嫌い❓️(笑)ランティモス監督作品のアルウィンの扱いが余りにもヒドイので、つい疑ってしまう(^_^;)

ジョー・アルウィン、長年付き合って婚約寸前までいったテイラー・スウィフトについ最近フラレたばかり。歴代カレシと同様歌の中でさんざんネタにされ、最近のヲタクの中のジョー・アルウィンのイメージは、「残念なイケメン」(笑)「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」の頃は、我が推しジャック・ロウデンと同じくらい輝いていたのに…😢

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※「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」で超絶カッコよかったジョー・アルウィン(左はエリザベス女王役のマーゴット・ロビー