【STORY】蓮川壮大「“ポジティブ”と“安定感”をもたらせる選手に」 (original) (raw)

日々の競争、陰での努力、悩み、葛藤……選手一人ひとりの物語を追ったコンテンツ【STORY】。今回は蓮川壮大選手のテキスト版です。

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10月14日配信/取材・文=平柳麻衣

「やれよ、やれよ!頼むぞ!」

試合当日のロッカールーム付近で、メンバー外の選手たちが試合メンバーを送り出す際、ひときわ大きく響く蓮川壮大の“声”を今季何度も耳にしてきた。同じポジションであるセンターバックの選手に対しては、とくに声のボリュームが上がり、鼓舞する意味も込めて力強く背中を叩くこともある。自分自身はユニフォーム姿ではない悔しさをぐっとこらえながら――。

「自分が試合に出る時はそっちに集中してしまうので難しいんですけど、メンバー外の時やサブの時、自分が出る側だったら同じポジションの選手に声を掛けられたら『頑張ろう』って気持ちになれるので、意識的にやっているところはあります」

「ネガティブな自分」を封印して

今シーズン、FC東京からの期限付き移籍で加入した蓮川は、甲府で過ごした昨シーズンをケガなく終えられた自信もあったことから、「1年間試合に絡み続けること」を目標に定めた。開幕から順調に出場を重ねたものの、4月20日の仙台戦で負傷。「左大腿二頭筋肉離れ」で全治8週間と発表された。

「センターバックは信頼が大事だから本当にケガをしたくなかったし、過去の経験から自分なりに工夫はしていたんですけど……試合中のケガはプロになって初めて。めちゃくちゃ萎えたし、とにかく悔しくて仕方なかったです」

一見、ポジティブな言動が目立つ蓮川だが、「素はネガティブな人間」だと自己分析する。

「結構気持ちに左右されがちで、ケガをしたこと自体もそうですけど、『しばらく試合に出られない』『練習を休まなきゃいけない』『1年間試合に絡むという目標も達成できなかった』っていう感情でいっぱいになって、その時はうわぁーって落ち込みましたね。ただそんなに時間が掛からずに、自分は今の自分にできることをやって、試合に出る選手たちに対しては純粋に『頑張って』と思うように切り替えることができました」

それにはエスパルスで出会った選手たちの影響もある。

「エスパルスには経験豊富な選手が多いから、ケガをした自分に対して、例えば(吉田)豊くんだったり、(乾)貴士くんだったりが気を遣っていろいろ声を掛けてくれたんですよ。あとは、(高橋)祐治くんやジェラくん(住吉ジェラニレショーン)がスタメンで出られない時にどんな振る舞いをしているのかも見てきて、2人ともベンチから声を出したり、チームのために行動しているイメージが強くて、もうケガが何だって言っていられないなって。そういう選手がピッチに立った時にプレーでもチームの助けになれるんだと感じたからこそ、どんなに悔しくても負のオーラは出さないように気をつけていました」

蓮川のポジティブな声掛けは、リハビリ中に限ったことではない。ケガから復帰後もチームのムードを高める一因となっている。

「自慢じゃないですけど(笑)、性格がちょっと心配性なんです。だからこそ気づけることがあるというか。例えばメンバー外になった選手の表情を見て『今この人どう思っているかな?』って考えたり、朝クラブハウスで最初に会った時のテンションで『今日はこの選手ちょっと元気ないかな?』とか、みんなの顔を結構見ちゃうところがある。それで気付いた人には何か声を掛けてみたり、その声掛けも『どういう言葉がいいかな?』ってすごく考えます。

それはプレー中も同じで、もちろん厳しく言い合わなければいけない時もあるけど、僕自身がネガティブなことを言われた時に反応してしまうところがあるから、なるべく受け取る側がネガティブな感情にならないようにしたい。『この人だったらこういう言葉でも大丈夫そう』とか、逆に『この人だったら少し弱気になってしまうかもしれないから、気持ちよくプレーできるような言葉にしよう』って、それぞれの特徴を掴んで、みんなが100パーセントの力を出せるようなコミュニケーションの取り方を意識するようにしています」

自分の持ち味は“パワフルさ”

「ハイライン・ハイプレス」を志向する秋葉サッカーに挑戦するためエスパルスへの加入を決めた今シーズン。スピードを生かした背後への対応といった守備面はもちろん、チャンスと見ればドリブルで持ち運ぶなど足元の技術も光り、攻守両面で観客を魅了することができるセンターバックとしてエスパルスサポーターの心をガッチリと掴んでいる。

リハビリ期間中には筋力強化にも熱心に取り組み、「肉離れをしたのが今回始めてだったので、今まで何となくの感覚でプレーしていた部分も今一度見直すきっかけになった」と、自分自身の成長を実感している。

その一方で、まだまだ課題を感じる部分もあるという。

「自分の持ち味は“パワフルさ”だと思っているので、スピードのところや対人プレー、持ち運びのところは意識してやっていますし、上手くプレーできた試合もあります。ただ、得点につながるチャンスはあまり作れていないですし、守備面でもヘディングの高さや強さの面ではまだまだ足りていないと思っています。リスク管理の部分も正直、J2だから何とかなっているだけ、というようなシーンを招いてしまうこともありますし、それは後ろの責任です。理想を言えば、相手に何もさせない、シュートも打たせないぐらいの内容で勝つこと。そう考えるとまだまだ足りないことがたくさんあります」

直近の第34節水戸戦の1失点目も、強烈に脳裏に焼き付いているという。相手のシュートがブロックしようとした蓮川の身体に当たってコースが変わり、先制を許したシーンだ。

「一般的に考えたら、あの場面は滑らずにシュートコースを切ることだけを考えて、あとはGKに任せたほうがいいと言う人もいます。だけど自分のスピードを一番分かっているのは自分自身で、間に合うと思う距離感だったら行かなければいけないと思う。そういうプレーが積み重なって『行けるのに行かない』という選択が染み付いてしまったら、一つのプレーに対する責任が薄れてしまうから。

実際、あのプレーも身体に当たっているし、『行ける』の感覚は合っていたと思っていて、『行かなければ良かった』と言われるのは失点したからこその結果論。もし止めていれば『ナイス』だったはずです。あそこで走れるのが自分の良さだからこそ、オレはあれを確実に止められる選手になりたい。自分の武器を生かしながらプレーの精度を高めて、もっと安定感のある選手になりたいです」

チームの目標達成のためにすべてを注ぐ

『超攻撃的・超アグレッシブ』な秋葉サッカーに触れたこと、それにリハビリ期間を前向きに乗り越えたことも含めて、「エスパルスに来て良かった」と心から思っているという。

「エスパルスに来て他のチームとの違いを一番感じたのは、みんなの意識の高さ。貴士くんやゴンちゃん(権田修一)といった意識の高い選手たちが日々意見をぶつけ合う様子を見て、自分自身の意識も高まりました。あとは、センターバックのみんなが良い人ばかりなんですよ。普通だったら同じポジションの選手同士だと、試合に出られる、出られないで多少なりともバチバチするところがある。でも今のエスパルスのセンターバックは、みんなそれぞれ違う特徴があって、練習では切磋琢磨しながら、試合になったら誰が出てもお互いを応援し合える雰囲気があります」

もちろん自分がピッチに立ってチームに貢献するためにすべてを尽くす覚悟はある。ただ、蓮川の想いは「チームが目標を達成すること」に注がれている。

「もうシーズンも終盤ですし、試合に出る、出ないに関係なく、チームが昇格するために自分にできることを全うするだけですね。それは日頃のトレーニングから全力でプレーして、いつチャンスが来てもいいように準備すること。それが自分自身の成長に繋がるし、チーム全体のレベルを上げることにもなると思うので、これからも意識してやっていきたいと思っています。そしてやっぱりシーズン当初からチームとして目標に掲げてきた昇格、優勝を達成するために、自分にできることをやっていきます」

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