<独自>日中戦争で幻となった万博入場券使用可能に 昭和15年の紀元2600年博 (original) (raw)

日中戦争の影響で中止となった「紀元2600年記念日本万国博覧会」の入場券(東京都中央区立郷土資料館提供)

日中戦争の影響で中止となった「紀元2600年記念日本万国博覧会」の入場券(東京都中央区立郷土資料館提供)

2025年大阪・関西万博の入場について、昭和15年に予定されながら日中戦争の影響で開催されなかった「紀元2600年記念万博」の入場券の使用も認められることが11日、分かった。紀元2600年記念万博の前売り回数券は100万冊が販売され、大半が払い戻されたがその後も所有している人がいるため、日本での万博開催のたびに使用の可否が検討されてきた。

紀元2600年記念万博は、日本書紀に基づく日本建国から2600年の節目と、大正12年の関東大震災からの復興を世界にアピールしようと企画された。

東京・月島(現在の晴海)の埋め立て地を中心にした約150万平方メートルと、横浜・山下公園の約10万平方メートルを会場とする計画。想定来場者数は約4500万人で、大阪・関西万博が開かれる人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の会場面積155万平方メートル、想定来場者約2820万人を上回る規模だった。

大阪・関西万博のパビリオン「テーマ館」にあたる「肇国(ちょうこく)記念館」の設計コンペや、都心と月島会場を結ぶため隅田川にかかる可動橋の勝鬨(かちどき)橋の整備などの準備が進んだが、昭和12年の日中戦争開戦のあおりを受け、翌13年に無期限の延期が決定した。

「幻の万博」とも呼ばれる紀元2600年記念万博では、前売り券100万冊が大人用12枚つづり1冊10円で販売された。延期決定後に払い戻しが行われたが、そのまま手元に置いた人も少なくなかったようだ。

当時の入場券を所蔵する東京都中央区立郷土資料館によると、入場券は全国の郵便局や金融機関、日本旅行協会などで発売。くじが付いていて、当選金は1等2千円、2等100円、3等10円が用意されていた。開催延期決定後も15年まで計6回の抽選が行われたという。

戦後も入場券を所有している人がいたため、45年の大阪万博では、この券を持っている入場希望者について、戦争のため払い戻しが困難だったとして招待券を交付する措置を取った。

さらに平成17年の愛知万博でも使用の可否が取り沙汰され、当時は「欠票のない回数入場券1冊に付き、招待券(日付指定なし)2枚を交付」した。回数入場券は番号を控えた後に所有者に返却した。

紀元2600年記念万博の入場券は、大阪万博で約3千件、愛知万博で約100件使用されたという。

大阪・関西万博での使用について、万博を運営する日本国際博覧会協会は当初「未定」としていたが、過去の万博の例などに沿って使用できることにした。協会関係者は「今も大事に持っている人がいるので使用できるようにした。券の真贋(しんがん)の確認が課題となりそうだ」と話している。(井上浩平)