北朝鮮帰還事業は「継続的不法行為」 日本の管轄権認め審理差し戻し 東京高裁 (original) (raw)

北朝鮮帰還事業は「継続的不法行為」 日本の管轄権認め審理差し戻し 東京高裁

東京高裁

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昭和34~59年、在日韓国・朝鮮人やその日本人妻ら9万3千人以上を北朝鮮に移住させた「帰還事業」で過酷な生活を強いられたとして、脱北者ら4人が同国に各1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、東京高裁であった。谷口園恵裁判長は脱北者側が主張した北朝鮮による「継続的不法行為」を認め、訴えを退けた1審東京地裁判決を取り消し、審理を同地裁に差し戻した。

昨年3月の1審東京地裁判決は不法行為について、日本国内での虚偽宣伝による「勧誘行為」と北朝鮮へ渡航後に出国を禁じた「留置行為」とに分けて評価。勧誘行為については日本の裁判所の管轄権内と認めた一方、民法の除斥期間を理由に請求を棄却。留置行為については管轄権がないとして、訴えを却下した。

谷口裁判長は勧誘から渡航、留置までを「一つの継続的不法行為ととらえるのが相当」として、その全体に「日本の裁判所に管轄権がある」と認定。脱北者らの訴えは「人生を奪われたことにより被った精神的苦痛について、包括的に損害賠償を求めるものだ」として、1審が除斥期間を理由に棄却した部分も「審理判断の対象とすべきだ」とした。

判決後、脱北者の川崎栄子さん(81)は「命をかけて脱北した成果が表れた。日本の司法制度が正義を貫くためのものだと確認できた」。日本人妻として北朝鮮へ渡った斎藤博子さん(82)は「皆さんのおかげ。涙しか出ない」と声をつまらせた。代理人の福田健治弁護士は「北朝鮮による人権侵害を、日本の裁判所で追求する可能性を開いた意義のある判決だ」と評価した。

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