立民・枝野氏「蓮舫氏を知事に」演説は公選法違反か 事務所「法の範囲」専門家「グレー」 (original) (raw)
立民・枝野氏「蓮舫氏を知事に」演説は公選法違反か 事務所「法の範囲」専門家「グレー」
立憲民主党の蓮舫参院議員(右)の応援演説を行う枝野幸男前代表(中央)=2日午後、東京都千代田区(奥原慎平撮影)
立憲民主党の枝野幸男前代表が東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)に出馬を表明した蓮舫参院議員への支援を呼びかけた演説が、告示前の選挙運動を禁じた公選法に抵触する可能性が指摘されている。枝野氏は2日の街頭演説で蓮舫氏について「皆さんの力で知事に当選させていただきたい」と発言。枝野氏側は選挙運動には当たらないとの認識を示しているが、専門家からは「黒に近いグレー」との見解も示されている。
「みんなで勝たせましょう」
「まっとうな都政を作るために立ち上がった蓮舫さんを、皆さんの力で押し上げていただきたい」
枝野氏は2日、土砂降りの中で蓮舫氏に先立ってマイクを握ると、約15分にわたり蓮舫氏の政治家としての手腕や人柄に言及し、こう呼びかけた。
3選出馬が有力視される小池百合子知事を念頭に「現職の壁と戦って勝ち抜くためには、蓮舫さんの知名度だけでは勝てない。あなたの力が必要です」とも訴え、「みんなで安心して住める東京を作っていきましょう。そのためにみんなで蓮舫さんを勝たせましょう」と強調した。
演説会後、蓮舫氏は「雨男」と称される枝野氏について、「おかげですごい雨が降ってしまったが、本当に多くの人に足を止めてもらった。励みになる」と満足そうに記者団に語った。
「政治活動」か「選挙運動」か
公選法は選挙運動の実施期間を、告示日に立候補を届け出てから投票日前日までに限定。立候補届け出前の選挙運動は事前運動として禁じている。
選挙運動と政治活動の違いは判例や学説などから、選挙運動は「特定の選挙に、特定の候補者の当選を図ることを目的に投票行為を勧めること」、政治活動は「政治上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの」などと解釈される。
枝野氏の事務所は5日、産経新聞の取材に「当該街頭演説は、政党の政治活動として実施され、その範囲で行われたものです」とコメント。選挙運動には当たらないとの認識を示した。
総務省の担当者は「一般論として、個別の事案が事前運動に該当するかどうかは具体の事実に即して判断される」と語る。最終的に事前運動に当たるかどうかは捜査機関、司法機関が判断することになる。
疑われかねない発言
公選法に詳しい日大法学部専任講師の安野修右氏は、枝野氏の「皆さんの力で知事に当選させていただきたい」との発言について、事前運動に該当しかねないとの見方を示す。「黒色に近いグレーゾーンだ。そのまま読解すれば選挙運動だと解釈される余地が多分にある」と語る。
枝野氏側の見解については「立憲民主党として『まっとうな都政』を立ち上げるのが枝野氏の発言の軸で、都政に関する政党の意見を普及・宣伝しているという体裁なのだろう」と述べた上で、「ただ、蓮舫氏への投票依頼と受け取る人の方が多いだろう。選挙運動と疑われない言い方はあったはずだ。紛らわしいことはすべきではない」と指摘した。
福岡県選挙管理委員会に在籍した経歴を持つ田村和希弁護士(福岡県弁護士会)も、事前運動に該当するかどうかについて「一般論として、演説した時期や、対象(集まった聴衆の性質など)、どのような場所・方法でなされたか、などの具体的な事情によって個別的に判断される」と解説する。
その上で枝野氏の事例は「非常に微妙なところだ。捉え方によっては、投票依頼していると受け止められかねない言い方でもあり、一方で投票依頼には当たらないと判断される可能性もある」と指摘。「重要な選挙であるからこそ、選挙が近づけばヒートアップするかもしれないが、選挙後に『事前運動だった』と指摘される状況もよくない。事前運動を疑われかねない発言には十分注意してほしい」と訴えた。(奥原慎平)