娘を「お嬢さん」奴隷許す契約書…いびつな「瑠奈ファースト」の家族関係 札幌の頭部切断 (original) (raw)

娘を「お嬢さん」奴隷許す契約書…いびつな「瑠奈ファースト」の家族関係 札幌の頭部切断

男性が殺害された札幌市の繁華街ススキノのホテル

男性が殺害された札幌市の繁華街ススキノのホテル

札幌市の繁華街ススキノのホテルで昨年7月、当時62歳の会社員男性が殺害され、頭部が切断された事件では、起訴された田村瑠奈被告(30)ら親子3人のいびつな〝主従関係〟が明らかになってきた。両親は瑠奈被告を小さなころから溺愛し、奴隷扱いされることも受け入れるという、まさに「瑠奈ファースト」の間柄だった。

圧倒的上位者

「(瑠奈被告は)家族の中で圧倒的上位者で、両親は奴隷扱いをされても叱らず、(瑠奈被告が決めた)ルールを忠実に守った」

札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で今月4日に開かれた、死体損壊の幇助(ほうじょ)罪などに問われた母、浩子被告(61)の初公判。検察側は冒頭陳述で、一家の関係性についてそう指摘した。

それによると、浩子被告は瑠奈被告=殺人や死体損壊などの罪で起訴=を「お嬢さん」と呼び、日常的に敬語を使った。一方、夫で精神科医の修被告(60)=殺人幇助罪などで起訴=は、瑠奈被告から「ドライバーさん」と呼ばれ、時間帯を問わず、ゲームセンターなど瑠奈被告が望む場所に自家用車で送迎していた。

自宅は瑠奈被告に買い与えたもので足の踏み場もないほどになり、修被告は事件当時、近所のインターネットカフェで寝泊まりせざるを得なくなっていたという。

母を「風俗に売り飛ばせ」

陳述ではまた、瑠奈被告が自分の所有する置物の向きが自分の決めたものと違うなど、ささいなことでも非難し、修被告へ「(浩子被告を)熟女系風俗にでも売り飛ばせばいい」などと迫ったこともあったと指摘した。浩子被告は瑠奈被告からの指示で、「私は奴隷です」「奴隷の立場をわきまえて無駄なお金を使うな」などとする誓約書も書かされたという。

起訴状によると、瑠奈被告は昨年7月1日深夜、北海道恵庭市の会社員の男性を殺害し、首を切断。2日未明にキャリーケースに入れて自宅に持ち帰った。浩子被告は、瑠奈被告が頭部を自宅に隠したり、遺体を損壊する様子を撮影したりするのを容認していたとしている。

弁護側はこの日の初公判で、浩子被告について、「警察に届けるなどしなかったことが、手助けしたことにはならない」などとして無罪を主張。冒頭陳述では、瑠奈被告の成育過程や、男性殺害を含む一連の事件の詳細な経緯にも触れた。

瑠奈被告は中学2年生のころから精神科を受診。18歳ごろには自宅で引きこもりの状態になり、自殺未遂を繰り返した。このころから、「田村瑠奈は死んだ」「田村瑠奈の体には5~6人の魂が入っていて、体を借りているだけ」などと発言し、自身を「ルルー」や「シンシア」と名乗るようになったという。

「この世の地獄」、ビデオ撮影も

浩子被告が自宅に被害男性の遺体があることを認識するまでの流れでは、男性が殺害された翌日の昨年7月2日朝、自宅の浴室に見慣れないプラスチックケースがあり、その中に黒いゴミ袋のようなものが入っているのを確認。数時間後、起床してきた瑠奈被告から「おじさんの頭を持って帰ってきた」などと聞かされたとした。

当初は半信半疑だった浩子被告だったが、3日に頭部のない遺体が見つかったというニュースを知り、「本当かもしれない」と不安に駆られた。その後、瑠奈被告から「見て」と言われ、浴室に向かうと、洗い場に男性の頭部が置かれていたという。弁護側は、「浩子さんは、この世の地獄がここにあると思い、絶望感に襲われた」と、このときの心境を代弁した。

事件では、浴室にあった男性の頭部について、瑠奈被告が7日、顔周辺にさらに危害を加えようとし、その様子のビデオ撮影を浩子被告へ要求したとされる。

検察側は、その後に浩子被告が、「撮影カメラマンするでしょ?」などと修被告へ代理撮影を求めるメッセージを送って依頼し、損壊行為を容易にさせたなどとも主張した。

浩子被告の次回公判は7月1日の予定。瑠奈被告と修被告の裁判は裁判員裁判の対象で、初公判までは時間がかかる見通しだ。

札幌の男性頭部切断、母が初公判で否認